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可児所長の連載コラム 「同一労働同一賃金」における企業のあり方

第19回:正規と非正規における待遇差対応の優先度について(前回続き)

(前回記事はこちら)見直しの着手に順位を付けるもう一つの理由は、正規と非正規の待遇の見直しを「同一労働同一賃金」の観点ではなく、待遇自体の必要性や別の待遇への切替えを含めた、大きな人事制度・給与体系の観点で行うことが望ましいからである。もし、人事制度の見直しで待遇自体が不要となれば、均等・均衡待遇の

第18回:正規と非正規における待遇差対応の優先度について

正規と非正規のすべての待遇差が見直しの対象となり得るが、見直しに当たっては順位を付けたい。その理由は、同時に行うと作業量やマンパワー面で不足するというだけでなく、待遇改善原資にも限界があるためである。 順位を高くすべきは、厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」に具体的に明記されている待遇である

第17回:ガイドラインに明記されていない福利厚生的手当について

多くの非正規従業員はその勤務する事業所での採用であり転勤や異動がない。基本給や時給にはその地域の物価が反映されていると考えられるため、福利厚生的手当である地域手当の支給は、ガイドラインでは不要とされている。 一方、ガイドラインに明記されていない福利厚生的手当に、配偶者手当や子ども手当(総称して家族手

第16回:「同一労働同一賃金」に向けた企業の対応について(第15回のつづき)

前回大企業において「同一労働同一賃金」への対応が進んでいない理由として、多様化した雇用区分、法解釈の幅の広さ、待遇改善の優先順位、改善原資の確保の問題を指摘した。以下では、これらの課題の対応を進めている事例や対応方法案を提示し、解決策を探っていく。 まず待遇改善の優先順位付けである。ガイドラインに例

第15回:「同一労働同一賃金」へ向けた企業の対応について

 「同一労働同一賃金」に向けた企業の対応が難航している。大企業の社長100人を対象に民間企業が実施したアンケート調査によると、待遇改善によって人件費負担が増えるとの回答は46・9%で約半数に上る。法改正への対応が完了したとする回答は39・3%で約4割に止まっている。  また筆者が9月に開催した「同一

第14回 退職一時金制度について

多種多様な退職一時金制度のうち、もっとも一般的な給付算定式は、給与比例方式である。「退職時点での基本給月額×勤続年数(に応じた係数)×退職事由係数」が多く使われている。この算定式では、給与の多寡も退職金に影響することになる。 ポイント制は、従業員の毎年の働きぶりを退職金額に反映する「成果主義型」の算

第13回:「メトロコマース」高裁判決について(第12回の続き)

長い間、非正規従業員は、労働力需要の繁閑に対応する補完的・短期的な労働力として位置付けられてきた。その後、非正規雇用が多様化する中で、非正規従業員の長期勤続が増えてきた。さらに雇用需給がひっ迫する中、事業主側も定着を促すようになってきた。こうした背景で、「非正規は退職金がないのは当然」というかつての

第12回:選択制企業年金の事例について

コストを抑えて待遇改善する手段として、選択制企業年金の事例を紹介する。「メトロコマース事件」高裁判決のように、非正規従業員にも長期勤続に対応する退職金を支給すべきとの判決も現れている。 選択制企業年金は、企業年金掛金を拠出するかどうかを、事業主ではなく従業員が選択できる仕組みである。企業年金(確定給

第11回:福利厚生パッケージについて

低コストで待遇を改善できる手段の一つとして、福利厚生パッケージがある(図)。一般に福利厚生のオペレーションには、①福利厚生制度の制定と提携開発・拡充、②福利厚生制度の周知、③利用申込の取次ぎ――があるが、これらをすべて外部委託できる。 提供される福利厚生は、宿泊施設やフィットネスクラブ、ベビーシッタ

第10回:福利厚生制度の費用対効果について

 非正規従業員の待遇改善には、「同一労働同一賃金」への対応だけでなく、人材採用力の強化や定着も期待される。  非正規従業員の待遇改善に当たっての最大の障害は、改善原資の確保である。もともと、非正規従業員は正規従業員に比べて人件費が抑えられてきた。よって、改善原資をねん出するのは容易ではない。  ここ

第9回:福利厚生制度の費用対効果について

 これまで非正規従業員の待遇改善に関する判断基準を列挙してきた。まず、「同一労働同一賃金」の法理がある。それに関連して厚生労働省「同一労働同一賃金」のガイドラインも参考にしなければならない。前回は「対象となる従業員の範囲のバランス・整合性」も非正規従業員の納得性を高めるうえで重要であるとした。 さら

第8回:非正規従業員の待遇改善を図る際の課題について

 非正規従業員の待遇改善を図る際の課題として「待遇の改善対象・改善度合」が挙げられる。待遇改善のための原資は上限なく拠出できるわけではなく、また投資対効果も考慮する必要があるため、様ざまな判断基準をもとに決定していくことになる。  判断基準の一つとなるのが「対象となる従業員の範囲のバランス・整合性」

第7回:正規従業員との待遇差と働き方の違いについて

第7回  非正規従業員の待遇改善が促される動機付けは、「同一労働同一賃金」の法改正だけではない。足元の非正規従業員の採用難も動機付けとなっている。  待遇改善の検討を行ううえでの実務上の課題は、①待遇の改善対象・度合、②待遇改善の原資ねん出方法の2点である。まずは①から考えたい。 非正規従業員には、

第6回:前回連載での判決からみえてくる、適正な待遇差について

前回みたように昨年6月の「長澤運輸事件」「ハマキョウレックス事件」最高裁判決以降も、地裁・高裁で「同一労働同一賃金」に関連する判決が相次いでいる。しかも、改正される短時間・有期雇用労働法第8条でいう「それぞれの待遇の性質・目的に照らして」不合理な差を禁止するという改正趣旨に沿った判断を示すようになっ

第5回:前回連載での事件において不合理とされた待遇差について

本年2月に高裁判決が出た「メトロコマース事件」では、住宅手当、退職金、褒賞、早出残業手当の4つが、正規従業員と非正規従業員の間の不合理な待遇差とされた。また、非正規従業員への退職金の不支給も不合理とされ、一般企業の人事部門にとっても他人事とはいえない判決となっている。不合理とされた理由を精査すること

第4回:正規従業員と非正規従業員の待遇差を不合理とみる判決・判例について

前回みたように正規従業員と非正規従業員の待遇差を不合理とみる判決・判例は増える傾向にある。ここでは、さらに踏み込んだ判決を取り上げる。 本年2月に高裁判決が出た「メトロコマース事件」では、非正規従業員には退職金が支給されないことが不合理とされた。さらに昨年の「ハマキョウレックス事件」最高裁判決では不

第3回:同一労働同一賃金における「不合理ではない待遇差」について

第3回 「不合理ではない待遇差」とは、「不合理な待遇差ではない」ことである。 不合理な待遇差を、「ハマキョウレックス事件」の最高裁判例から抜粋して図表1に掲げる。待遇の一つ一つについて、その目的・性質から見て不合理な待遇差がないかを判断するという手続きである。待遇全体において不合理な差があるかではな

第2回「同一労働同一賃金ガイドライン案」公表後の動きについて

第2回  2020年4月(中小企業においては2021年4月)からの短時間・有期雇用労働法の施行を前提に、2018年12月に厚生労働省から「同一労働同一賃金ガイドライン」が公表された。また2018年6月の最高裁「長澤運輸事件」「ハマキョウレックス事件」を始め、下級審で相次いで同一労働同一賃金に関する判

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