働き方改革

第4回:正規従業員と非正規従業員の待遇差を不合理とみる判決・判例について

前回みたように正規従業員と非正規従業員の待遇差を不合理とみる判決・判例は増える傾向にある。
ここでは、さらに踏み込んだ判決を取り上げる。

本年2月に高裁判決が出た「メトロコマース事件」では、非正規従業員には退職金が支給されないことが不合理とされた。さらに昨年の「ハマキョウレックス事件」最高裁判決では不合理ではないとされた非正規従業員への住宅手当の不支給が、この判決では不合理とされた。

 同社の業務は、駅構内での売店業務などである。正社員との不合理な待遇差を訴えたのは、「契約社員B」という雇用区分の非正規従業員であった。この雇用区分は時給制の有期労働契約であり、勤務時間はフルタイムである。有期契約であるが、契約更新を繰り返し結果的に10年以上の勤続年数となっていた。

同雇用区分の職務は売店業務に限定され、勤務店舗が変更されることはあるが売店以外の職務には就かない。一方、正社員にも売店業務に従事する者がいるが、代務(休暇取得の店員の穴を埋める)を行ったり、エリアマネージャーを担当したりするなど、非正規従業員とは「働き方」が異なっている。よって、「同一労働」とはいえない。

なお、同社には契約社員から正社員への登用制度がある。訴えた非正規従業員も登用試験を受けたが登用には至っていない。

 本事件における個々の待遇ごとに示された判断を一覧にしたものが図である。

図表 高裁判決での待遇の判断

待遇

待遇差に対する不合理性

本給・資格手当

不合理ではない

賞与

不合理ではない

退職金

不合理

住宅手当

不合理

褒賞

不合理

早出残業手当

不合理

 

本給・資格給、賞与に関する正社員との待遇差は不合理ではないとされた。本給は月額給と時間給という違いがあり、実額においても当然、差があった。資格手当は正社員だけが持つ資格等級に応じて支給されていた。賞与は正社員より少ない額ながら支給されていた。

不合理ではないとされた理由は、まず「働き方」が異なっていることである。また資格手当はないものの皆勤手当や早番手当は非正規従業員にも支給されていたことも指摘されている。さらに登用制度があり正社員にもなり得ることで固定的な待遇差でないことも理由とされた。

資格給の差については売店業務という業務に照らして資格等級を設定するのは困難であり、不合理ではないとされた。

賞与については、その目的・性質として、一般に①支給対象期間中の労務の対価の後払い、②功労報償、③生活補償、④勤務意欲の向上――が挙げられるとしている。いずれの目的で支給するかは経営側の裁量判断としている。

そのうえで、当該非正規従業員は契約期間が1年と短期であることと時間給であることから、後払いという目的は考え難いとした。さらに年間の賃金総額を月額と賞与にどう配分するかは経営の裁量判断であるとしている。よって支給される賞与が正社員より少ないのは不合理といえないと判断した。

 次回は本事件において不合理とされた待遇差を取り上げる。

 

\中小企業向け/まだ間に合う!
働き方改革関連法への対策資料プレゼント

2020年4月1日から、働き方改革関連法という新しい法律が全企業を対象に順次施行されています。
対策はすでにお済でしょうか?

本資料では、そもそも「働き方改革」ってどんなもの?といった基本知識から

  • 適用項目9つ
  • 施行スケジュール
  • 対策必須項目3つ
    など

いま最低限知っておくべき内容を中心にまとめました。
対応に関して不安がある、、、という方はまずはこの資料をご確認ください


資料をダウンロードする