
連日ニュースで取り上げられている「人手不足」を背景に、企業はあらゆる手段で人材確保に力を入れています。
厚生労働省の調査によると、2017年8月の有効求人倍率は1.52倍とバブル期を超え、正社員の有効求人倍率も1.01倍となり、求人が求職を上回る結果がでています。
このような状況から、よりやりがいのある仕事や待遇の充実を求めて転職を希望する人も増えており、企業として、いかに“働きやすい環境”を整えていくかが問われています。
しかし、「まず何から整えていくべきなのか…」「大企業並みに制度を整えるお金も余裕もない」このような悩みを抱えている中小企業は多く、社内制度の改善に手がつけられていない状態になっていませんか?
はじめから全てを整えようとして途方に暮れるのではなく、社員のニーズに合わせてできるところからはじめてみましょう。
今回は人材確保でお悩みの中小企業に向けて、中小企業が福利厚生を整えるべき理由から、おすすめの福利厚生3選など紹介していきます。
もしもこの記事をご覧いただいている方の中で、自社の福利厚生制度についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずはじめに「企業担当者必見!「福利厚生サービス」のおすすめ5選を解説」の記事をお読みください。
目次
転職時に福利厚生を重視する人は全体の83%
“2013年に人材採用・入社後活躍のエン・ジャパン株式会社が運営する、正社員で働くことを希望する女性向け求人情報サイト「[en]ウィメンズワーク」(※参考:https://corp.en-japan.com/)上で、サイト利用者女性819名を対象にした福利厚生についてのアンケートが行われました。
企業規模問わず正社員への転職を希望する女性819名に、仕事さがしで福利厚生をどの程度重視するか」をたずねたところ、「非常に重視する」が28%、「まあまあ重視する」が55%、計83%の方が重視すると回答。
理由として
“仕事だけでなく生活全体に関わる”
“働きやすさの目安になる” などの声がありました。
求職者が転職先を決めるうえで事業内容や業績・給与等と同じく、福利厚生を充実させることが、転職先を決める重要な検討項目となるのです。
中小企業で働くデメリット:福利厚生が充実していないこと
福利厚生の充実が転職先を決める上で重要な検討項目となる一方で、中小企業には厳しい評価がされています。
2016年にエン・ジャパンが運営する人材紹介会社集合サイト『ミドルの転職』を利用する転職コンサルタント128名を対象に「中小企業で働くこと」についてのアンケート調査(※参考:https://corp.en-japan.com/)を実施したところ、中小企業で働くデメリットの1位は「福利厚生が充実していないこと」という結果がでました。
「経営者層との距離の近さ」や「意思決定のスピード感」を中小企業で働くメリットと評価する一方、福利厚生をはじめとした社内制度の不十分さがデメリットとして多く挙げられ、改善する必要があることがわかりました。
また別の観点から、中小企業の福利厚生充実度を調べてみると、費用に大きな差がでていることがわかりました。
厚生労働省が実施した「平成28年就労条件総合調査」によると、「法定外福利費」といわれる住宅手当・家賃補助などの手当から、社員食堂や福利厚生サービスにかける1人1ヶ月の平均費用は、社員数1,000人以上の企業と比べると、100人以下の企業は半分以下となっています。
費用を多くかけた分だけ福利厚生が充実していると断言はできませんが、福利厚生は社員が働くことによって得られる給与以外の報酬ともいわれます。
福利厚生をコストとみるのではなく、会社が社員の働きに対してどれだけ還元できているのか、働くことを支える制度として整えられるか、が重要です。
いま中小企業に求められていることは、いかに自社の福利厚生に目を向け、力を入れることができるのか。
中小企業にとって福利厚生は、人材確保において大企業と同じラインに立つ上で欠かせない制度となっています。
中小企業がまず取り組むべきは、0から1を作るのではなく、1を2にする福利厚生制度を作ること
大企業では時間もお金もかけて当たり前のように整えられている福利厚生も、中小企業にはハードルが高いものです。
しかし、大企業と中小企業の福利厚生は同じである必要はありません。
それぞれの特長を活かした制度を作り上げることが、何よりの差別化となるのです。
例えば大企業では、全国に拡がる拠点の社員が平等に利用できることや、社員食堂や社員寮等、“ハコもの”とよばれる福利厚生制度を求められることが多いため、一つ一つの制度にかける負担も大きくなります。
一方で中小企業は社員が少ない分、社員のニーズを聞いて回る、議論を行うなど社員の声を取り入れ、社風や年齢層に合わせた自社独自の制度を試行錯誤しながら整えていくことが可能です。
ただし、ユニークな制度をゼロから作りだそうとして、時間やリソースをかけすぎないように注意しましょう。
すでに実績のあるアイデアを少しひねって考えてみるなど、社内にある資源を活用してみることで意外とユニークな福利厚生が生まれる可能性があります。
中小企業でもすぐに始められる福利厚生3選
では具体的にどんな福利厚生を始めてみれば良いのでしょうか。
総合人材サービスを提供するマンパワーグループが過去・現在において仕事をしたことがある18~60歳の男女972人を対象に、「会社の福利厚生として良いと思うもの」「実際にあった福利厚生で良かったと思うもの」についてのアンケート調査(※参考:http://www.manpowergroup.jp/)を実施しました。
企業規模問わず、「これまで勤務した会社において、実際にあった福利厚生でよかったと思うものはなんですか?」という設問に対し、
1位「食堂・昼食補助」
2位「住宅手当・家賃補助」
3位「余暇施設、宿泊・レジャー施設などの割引制度」
という結果がでました。
つまり、社員から喜ばれる「食費」「住宅」「割引」に関する制度が整っていない場合、これらを優先して拡充する必要があるといえるでしょう。
これら上記3点に関して、事例を交えながら紹介します。
食事に関する福利厚生:毎日無料で食べられる“まかないランチ”~
「食事・昼食補助」としてまず浮かぶのが「社員食堂」ではないでしょうか。
広い飲食スペースに調理場があり、出来立ての食事が低価格・無料で利用できる社員食堂は、職場環境を充実させる魅力の一つです。
しかし、社員数が少ない中小企業にとって、社員食堂のスペースを設け社内で運営をしていくことはハードルが高く手が出せません。
そこで、企業規模を上手く活用しながら社員に喜ばれる食事補助を行っている中小企業を紹介します。
※参考:http://officelunch.hatenastaff.com/
株式会社はてなは、従業員数は約100名で、東京・京都にオフィスがあり、両オフィスにて“まかないランチ”を社員に無料で提供しています。
オフィスの向かいに調理場となるマンションの1室を借り、シフト制で契約したシェフの方が午前中調理をし、お昼になるとオフィスに料理が運ばれてきます。
フリースペースに料理が並べられ、自分で好きな量をとっていくことができます。
1日3品出る献立は日替わりで、同じものがでることはほぼないそうです。
また、栄養バランスを考えた献立のため、社員の健康管理にもつながり、食事の補助だけでなく、健康面もサポートできる福利厚生として、注目を浴びています。
中小企業の社員数であれば大きい調理場も必要なく、拠点も限られているため、始めてみやすいのではないでしょうか。
住宅に関する福利厚生:税制メリットが大きい”借り上げ社宅制度”
住宅制度というと、住宅費の補助として家賃の何割か支給される住宅手当があります。
給与の一部と見なされるため、入る金額は多く見えますが、その分所得税がかかります。
そこでおすすめするのが、税制メリットが大きい”借り上げ社宅制度”です。
借り上げ社宅制度とは、一般賃貸を不動産業者から会社が借り入れ、社員に貸し出すことです。
借り上げ社宅は、企業・社員両者にとってメリットがあります。
企業としては賃貸契約などの手間が発生するデメリットがあります。
借り上げ社宅の戸数が100戸以上になる場合は、社宅管理のアウトソーシングを検討してもよいといわれています。
割引制度に関する福利厚生:多様なニーズに対応するならパッケージサービス
年齢層や家族構成、趣味趣向によって、お金の使い道は多岐にわたります。
社員一人一人に喜ばれる割引制度を充実させることは、労力もお金もかかります。
施設と直接契約を結び、予約受付からメンテナンスを行うなどの労力をかけることは、特に中小企業にとって避けたいところですが、社員から喜ばれる福利厚生として整えていきたい制度です。
そこでおすすめなのが、”福利厚生パッケージサービス”です。
多くの企業から割引などの特典をあつめ、それらをパッケージングし販売しています。
パッケージの利用契約を行うことで従業員は割引などの特典を受けられます。
自社でフィットネスクラブやホテルなどと提携するよりもコストが安く、バリエーションも豊富です。
特長は以下の3点です。
①従業員のニーズを幅広く満たせる
②手間なく簡単に福利厚生を充実できる
②安価なコスト 1人あたり月400円~
福利厚生アウトソーシングサービスの選び方については、福利厚生管理士が選んだ福利厚生アウトソーシング5選【導入事例付】でくわしく紹介しています。
企業の特色にあったサービスを導入検討してみましょう。
また、アウトソーシングを活用することで福利厚生の拡充にとどまらず、経営・人事課題を解決している事例もございます。
福利厚生サービス導入成功事例集を合わせてご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
中小企業にとって、後回しにしがちであった福利厚生ですが、社員が“働きやすい”と感じる環境をつくることが企業規模問わず、必要不可欠になっています。
中小企業による特長を活かしながら、福利厚生制度の拡充をできるところから図るようにしましょう。