働き方改革

中小企業の働き方改革|真っ先に取り組むべき施策や好事例を紹介

2019年4月、遂に働き方改革関連法が施行されました。「働き方改革」は、生産年齢人口(15〜64歳)を活性化させた「一億総活躍社会の実現」を掲げ、働く個人がより自分らしく快適なワークライフを送れることを目指した施策です。

中小企業は、この働き方改革関連法が施行されるまでに、大企業よりも時間的な猶予があります。

とはいえ、ご存知の通りすでに施行されている項目や、施行が目前に迫る項目もあり(※2020年1月時点)、いち早く「あらたなスタンダード」にキャッチアップする必要があることに変わりありません。

この流れのなかで、中小企業は一体何に取り組む必要があるのでしょうか? 

本稿ではまず、法的な定義での中小企業についてあらためて確認し、そのうえで中小企業が取るべき具体的対策について、説明していきます。

中小企業とは?業界によって異なる定義を再確認

まずは「働き方改革」に取り組むに当たって、事前に知っておくべきことから入っていきましょう。

冒頭でも述べたように、あなたの会社が「中小企業」かそうでないかによって、働き方改革への取り組みのタイミングが異なります。

ふだん何気なく使う言葉ですが、実は法律によってその定義が決まっています。自分の会社は中小企業に分類されているのかどうか、下の表をもとにその確認をしてみましょう。

業態

A:資本金の額 または 出資の総額

B:常時雇用する従業員の数

①製造業、建設業、運輸業、

その他の業種(②〜④以外)

3億円以下

300人以下

②卸売業

1億円以下

100人以下

③サービス業

5,000万円以下

100人

④小売業

5,000万円以下

50人

※「常時雇用する従業員の数」は法律によって異なります。

中小企業とは、上の表「A:資本要件」もしくは「B:人的要件」のどちらかに該当した場合のことを言います。基準は業種によってそれぞれ違うので、注意して上の表を確認してみてください。

ちなみに、上記の定義は「中小企業基本法」によって定められています。また、これらは事業場単位ではなく、企業単位(すべての事業場の合計)で判断します。

働き方改革関連法の施行スケジュール

では、「中小企業」が働き方改革に取り組むべき施策について見ていきましょう。

2019年以降で、中小企業に該当する働き方改革関連法の適用時期は、以下の通りとなっています。

施行されない場合は罰が課されることもありますので、必ず時期と内容を確認しておく必要があります。

2019年4月1日〜

年次有給休暇の時季指定義務、

高度プロフェッショナル制度、フレックスタイム制度の拡大、

健康管理面からの労働時間の把握、産業医の権限強化など

2020年4月1日〜

残業時間の上限規制

2021年4月1日〜

同一労働・同一賃金

2023年4月1日〜

残業時間月60時間超の割増率引き上げ

それぞれの具体的な内容について、簡単に説明していきます。

年次有給休暇の時季指定義務

全ての企業が対象で、年10日以上の有給休暇が与えられる従業員に対し、そのうち最低5日を取得させなければいけない義務です。

違反者には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

残業時間の上限制限

大企業では2019年4月1日より施行されている法律ですが、中小企業でも、2020年4月1日からは原則として月間45時間・年間360時間を超える時間外労働は認められません。

違反者は6ヶ月以下の懲役、または30万以下の罰金となります。

同一労働・同一賃金

大企業では2020年4月1日から施行され、中小企業では、その一年後の2021年4月1日から施行されます。

これは、労働内容が同じである場合、「正社員と非正規社員という立場のみで、賃金や待遇の差をつけてはならない」という法律です。

こちらは施行しないことでの罰則はありませんが、損害賠償請求がされるなどの恐れがあります。

残業時間月60時間超えの割増率引き上げ

これは既に大企業では実施されているもので、中小企業でも2023年4月1日から適用されます。

働き方改革取り組みの鍵となる3つのポイント

働き方改革で実施される項目をご紹介しましたが、実際に働き方改革に取り組むにあたって、企業は一体何に着手すればよいのでしょうか。

ここでは、残業時間削減から賃金制度変更までを見据えた、労務管理の改革を実施に関連して、3つのポイントをご紹介します。

① 業務効率化

② 人材配置の最適化

③ 成果や効率に応じた賃金制度の設定

業務効率化

残業時間の減少や有給休暇取得によって勤務時間が短くなる中で、生産性を落とさないためにも、業務効率を高める工夫をする必要があります。

必要な仕事を後回しにしてしまうのではなく、まずは業務内容を徹底的に洗い出し、必要な業務と不要な業務を選り分けることが必要です。

業務内容を根本的に見直し、「やらなくても良い仕事」を排除したうえで、「やるべき仕事」の業務の効率を高めるためには、次のような方法が有効です。

・業務マニュアルの作成

・業務ごとのスキルマップの作成

・IT設備などの導入、RPA

・単純作業の外注

・人材投資(研修などの従業員教育)

例えば専門技術や専門知識の取得といった従業員への投資は、労働生産力の向上へと繋がります。決して小さな投資ではありませんが、将来に実を結ぶことを想定し、積極的に行いましょう。

人材配置の最適化

業務の効率化を図るために重要なのが、人材配置の最適化です。どの従業員がどのような業務をすると大きな成果が現れるのかを見極め、適材適所に人材を割り当てることが大切です。

この舵取りについては企業によってケースバイケースです。たとえば、上の「業務効率化」で紹介したマニュアルやスキルマップをもとにして、一度フラットな目で「社内でこの業務に適したスキル、特性をもった人材はいないか」を探すことも一つです。

また、チームワークも重要な要素です。スキルと同様に、一緒に働かせる人材の相性を見極めることも業務効率化に影響を及ぼします。

もし社内での人材の配置転換を考えている場合、人事担当者や経営幹部だけで決めるのも良いですが、現場のマネージャーや当事者らと意見交換することも効果的でしょう。現場の視点から「あの人はこの仕事に向いている」といった声や、「こういった体制ならより効率的に作業できる」などの意見を吸い上げることが欠かせません。

成果や効率に応じた賃金制度の設定

結果を出している従業員と、それほど成果を上げていない従業員の賃金が同じでは、結果を出している従業員の不満増加やモチベーション低下を招き、その結果、離職率の上昇にもつながってしまいます。

そのため、労働時間管理改革による残業時間削減で浮いた人件費を、大きな成果や効率を上げた従業員に還元するようなインセンティブ制度を設けるなど、成果や効率に応じ、賃金を支払うための仕組みを作ると良いでしょう。

実際に、今まで不要な残業をし、残業代を当てにしていた従業員がいることも事実です。しかし、上のような対策により、そういった従業員のモチベーションや生産性を向上させられる可能性があります。

なお、成果や効率を上げた従業員に賃金を還元するには、「固定給とは別に、賞与で還元する」という方法がおすすめです。

賞与は定期、または臨時で支給することができ、支給項目(業務成績、勤務年数など)は企業が決めることができます。また、年俸制を除き、「割増賃金の算定対象となる賃金」には原則含まれません。

▼関連記事

社員のモチベーションをあげるポイントや具体的な方法については、別記事「社員のモチベーションを業績に繋げる!やる気を引き出す方法と導入事例6選」で詳しくご紹介しています。ぜひ、合わせてご覧ください。

働き方改革に取り組む中小企業の好事例4選

ここからは、実際に働き方改革に取り組むことで成功をもたらした中小企業の好事例を、4つご紹介します。

1. 業務フロー改善で受注増・残業時間減を同時に達成(信幸プロテック株式会社)

参照:信幸プロテック株式会社

空調設備の設計・施工・修理・保守などを行う、信幸プロテック株式会社。

自社独自のカエル会議(早く「帰る」、仕事のやり方を「変える」、人生を「変える」の3つの意味が込められた会議のこと)で、目標を情報共有と業務効率化に定めました。

業務の洗い出し、スキルマップの作成

スキルマップによる現状確認と、業務分担の改善、業務分担の見直し、分担表の更新をし、業務の「見える化」を図っている

手順書による「当たり前水準」の向上

全従業員が迷わずに業務を完了することができるよう、手順書の作成をしている

現場同行

自分たちのスキルアップ、サービスマンの抱える問題の拾い出しをすべく、各部門の現場同行、報告書の作成、改善提案などを行なっている

各スタッフの専門領域の明確化

部門長、社長との面談を通じた「プロ宣言書」を作成している

知識・スキル共有の場を設置

知識/スキル向上が必要な内容アンケート、就業時間内のスキルアップ勉強会などを実施している

何のためにライフ時間確保を目指すのかを明確化

ライフビジョンシートで、終業後や休暇でやりたいことなどを発表している

集中できる時間の確保

「がんばるタイム」のルールを設立している

これらの取り組みにより、半年間で次のような実績を残しました。

・業務の見直し数:54件

・現場同行から生まれた改善提案数:21件

・ライフビジョンシートで共有された、実現したい夢:74個

・スキルアップ勉強会の時間数: 42時間

・「がんばるタイム」活用時間:255分

さらに、結果的に修理の依頼受付件数が前年より180件増加しながら、残業時間は13.2%減少するなどの成果を上げています。

2. 有給休暇取得率の改善が、採用広報にも好影響(株式会社エムワン)

参照:株式会社エムワン

三重県を拠点に、数々の薬局を運営しているエムワン。

働き方改革を実施し始めた当初、従業員数58名(うち薬剤師28名)の小さな会社だったエムワンは、会議室もホワイトボードもない状態で、立ったままカエル会議を実施したと言います。

そこで目指したいゴールイメージを話し合った結果、「全員の有給休暇消化100%」という目標を掲げることになりました。

しかし、仕事が回らなくなってしまうことを考えた管理職の女性は、全員が休める体制を作るべく、

マニュアル作成

管理職が、一人で行っていた店舗マネジメントや販売ノウハウなどの、全てのマニュアルを、新人社員が中心となり、丁寧に作成

スキルマップの作成

誰がどのような業務を担当できるのかを一覧にし、見える化

休暇中にしたいことを共有

有給休暇を取得して、やりたいことを共有し合うことで、有給休暇の取得へのハードルを下げる

などの対策を実施しました。

有給休暇取得が促進されるようになると、勉強時間が確保されたことから、一般用医薬品の資格「登録販売者」を取得するメンバーも増加したと言います。

結果、下記のような劇的な変化が見られました。

・トライアル店舗では、有給休暇の取得が前年比352%に増加

・一般薬品売り上げが、前年比230%を達成

・結婚数が2倍、出産数が2.5倍に増加

・出産のための退職者がゼロに

また、これらの取り組みは、同社の新卒採用にも良い影響を与えました。

これまでは大手就職サイトに広告を掲載しても、エントリーが全くない状態が続いていましたが、働き方改革の取り組み内容や成果を会社説明会でPRしたことにより、2017年度のエントリー数が、前年度の33名から、約5倍の168名に増加という飛躍的な成果に繋がりました。大都市圏と比較して圧倒的に不利な状況だったにも関わらず、大都市圏にも劣らない採用力にまで向上しています。

3. 全従業員がリモートワークを実現(株式会社ソニックガーデン)

参照:株式会社ソニックガーデン

「納品のない受託開発」を提供するソニックガーデンは、2016年にオフィスを撤廃。現在では、全従業員がリモートワークで在宅勤務をしています。

しかし、在宅勤務といえども、コミュニケーションは活発に行われており、テレビ会議の他、自社開発したバーチャルオフィスツール「Remotty」を使用しています。

また、管理職をあえて置かない組織体制も、特徴的な取り組みの一つです。

ソニックガーデンでは、上下関係があることによるストレスから起こる、不満や衝突を回避すべく、社員全員が同じ権限を持ち、フラットな立場であることを尊重しています。

4. シフト管理で残業時間・有給休暇取得率を改善(有限会社COCO-LO)

参照:有限会社COCO-LO

群馬の介護事業所COCO-LO。従業員一人一人のスケジュール管理を重視し、残業を極力行わないように工夫しており、平成27年度には一人当たりの平均残業時間で1ヶ月0.9時間を記録しました。

また、年次有給休暇の取得を全ての部署で促進。平成28年度には、会社全体での有給休暇取得率が79.8%になりました。

他にも、下記のようにさまざまな施策に取り組んでいます。

・4.5時間からの短時間勤務が可能な短時間正社員(準正社員)制度

・キャリアアップ支援

・パパ産休

こういった取り組みの結果、新規スタッフ募集の際には、なんと採用枠の5倍もの応募者が集まるなどの成果を上げました。

さらに、介護業界では珍しく、厚生労働省からは6回、内閣府から2回、群馬県から2回をはじめ、たくさんの表彰を受けています。

まとめ|余裕を持って制度改革に取り組んでいくことが重要

2019年4月から順次施行されている働き方改革関連法。中小企業は施行時期において、大企業よりも猶予があるとはいえ、今のうちからある程度余裕を持って制度改革に取り組んでいかないといけません。

また、本稿で紹介した事例はほんの一部です。従業員とのコミュニケーションを積極的に行い、働き方改革への理解を全員に促した上で、自社の課題やゴールイメージを共有することが大切です。

そして、そのゴールイメージに向けた対策を一同で考え、一丸となって取り組んでみてください。それこそが理想の「働き方」にたどり着くために欠かせないプロセスです。

「働き方改革」何から取り組めば良い?
とお悩みの企業担当者の方へ

やるべきことが分からず、まずは今話題の残業の抑制から取り組んでみたという企業が約86%を超える中、その半数にも及ぶ、約44%の従業員が残業抑制に関する満足度を実感出来なかったと回答をしています。(※参考:LINE株式会社 livedoor NEWS 残業削減で「収入が減った」が3割 「生産性で評価して」という声

このようにそもそもの目的を見失い、残業を減らしたり、休みを増やしたところで、従業員の満足度が下がればその施策は無意味なものとなります。

何から始めて良いのか分からない・従業員満足度を向上させたい、とお困りの企業担当者は、まずは福利厚生アウトソーシングサービスの導入を検討してみはいかがでしょうか。

福利厚生の充実は、従業員満足度の充実による労働生産性の向上、離職率の低下・採用力の強化(人材不足の補填)など、様々なメリットがあります。


資料を無料ダウンロードする