勤務間インターバル制度とは?努力義務化の目的やメリット、助成金制度について解説

2019年4月に厚生労働省より事業主に対して、導入が努力義務化された「勤務間インターバル制度」をご存じでしょうか。もともとEUで導入された勤務間インターバル制度は、労働者の生活時間や睡眠時間を確保して健康的な生活を守ることを目的としています。この記事では、この勤務間インターバル制度の基本的な知識から助成金制度までくわしく解説します。
目次
勤務間インターバル制度とは?
まずは、勤務間インターバル制度の概要や背景、目的など基本情報について紹介します。
勤務間インターバル制度とは?
インターバル(interval)とは、間隔や休憩時間を意味します。したがって、勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで労働者の生活や睡眠のために必要な時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るための制度を意味します。つまり、残業や不規則なシフトによって翌日の始業時刻までの時間が短く疲れが取れない労働者に対して、一定時間以上の休息時間を確保できるようにする取り組みです。
勤務間インターバル制度の基準
例えば、定時が8:00から17:00の8時間勤務である企業が、終業時刻から翌日の始業時刻までに「10時間以上の休息時間」を義務化した勤務間インターバル制度を導入したとします。勤務時間内には1時間の休憩時間が含まれていますので、就労時間としては9時間になります。
従業員が24:00まで残業した場合、通常であれば翌日も8:00出勤となりますが、この制度を導入したことにより翌日の始業時刻は前日の終業時刻の24:00から「10時間後」の10:00となります。
勤務間インターバル制度の目的
勤務間インターバル制度の目的は、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康的な生活を守ることです。前述の例のように24:00まで残業したために翌日の出勤まで8時間しかない場合、そこには勤務終了後の通勤や帰宅後の食事、入浴、家事や自分自身のクールダウンなどの生活時間も含まれているため、労働者は睡眠時間を削るなどして翌日の勤務に備えているのが現状です。
このような状態が連続すると、労働者は心身ともに追詰められ、過労やうつ病といった健康問題が発生して働くことができなくなる可能性もあります。勤務間インターバル制度は、このようなリスクを回避すべく政府主導で推進されています。
勤務間インターバル制度は強制ではなく努力義務
勤務間インターバル制度は1993年にEUで制定されたもので、現在、EUでは一日につき11時間以上の休息時間を法律で義務付けています。その流れを受けて、日本でも2018年に成立した「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、2019年4月にすべての事業主に対して勤務間インターバル制度導入に向けての努力義務として規定されました。
ただし、現段階の日本ではあくまで努力義務に留まっており、インターバルの時間についても一律のルールや規定はありません。このため、制度を導入していない企業や制度の社内規定に違反した労働者に対しての罰則もありません。
勤務間インターバル制度のメリット
次に、勤務間インターバル制度を導入するメリットについて解説します。
長時間労働が引き起こす健康被害を抑制できる
勤務間インターバル制度最大のメリットは、長時間労働によって引き起こされる健康被害を抑制できることです。労働者は、終業時刻に関わらず翌日の始業時刻まで一定の生活時間が確保できることで、食事・睡眠・休息に十分な時間を割くことができます。特に、睡眠時間の確保は業務における集中力向上だけでなくうつ病などの精神疾患の予防にも有効とされています。
企業のイメージアップにつながる
勤務間インターバル制度を導入していることにより、採用やその他の広報活動における企業のイメージアップにつながることもメリットとして挙げられます。厚生労働省が発表した「令和3年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度の導入率は2021年時点で4.6%に留まっており、2025年までに15%の導入率を目標として掲げています。つまり、働き方改革が注目される昨今、国が推進する制度のひとつに対して積極的に取り組むことは企業のイメージアップに役立ちます。また、制度の導入によって勤務体系にある程度の制約を設けることで、勤怠管理業務の負担が減ることも企業側のメリットのひとつといえるでしょう。
限られた時間内で業務を行うことで生産性が向上する
限られた時間の中で業務を行う意識付けにもなるため、無駄な残業が減り、労働者1人ひとりの生産性が向上します。
ワークライフバランスの実現
退社時間から次の出社時間まで一定時間を空けることで、従業員はプライベートや睡眠の時間を確保でき、ワークライフバランスを保ちながら安定した環境で働くことができるようになります。また、充実したプライベートの時間を過ごせることにより、仕事にもまた意欲的に取り組めるという相互作用が期待できます。
勤務間インターバル制度の推奨時間と導入促進
厚生労働省では、9~11時間を勤務間インターバル制度の推奨時間としていますが、前述のとおりこの制度は比較的新しいが故に努力義務とされ、法的な罰則規定はありません。
ただ、義務化されている業界の例として、トラックやバス、タクシーなど4輪自動車を運転する業務の従業員には8時間の勤務間インターバルを定めていますが、2024年から労働時間の基準が見直され、この法改正とともに9時間のインターバル確保が義務化されます。また、11時間以上については努力義務となります。もし、制度に違反した場合は労働基準監督署による行政指導が実施されます。
義務化されていない業界については、自社でどのように運用すべきかを検討しなければなりません。企業によって異なる勤務時間や勤務日数、業務内容等に合わせて労働者が健康的に働く環境を整える必要があるため、慎重に検討して導入するようにしましょう。
勤務間インターバル制度の導入事例
それでは実際に、勤務間インターバル制度を導入した事例を3つ紹介します。
裁量労働制の社員に導入
企業Aでは勤務間インターバル制度の対象者を管理職以外の全社員とし、インターバル時間を最低8時間と規定しました。ただし、緊急性の高い業務や継続性のある業務については上長判断により勤務可能とし、柔軟な対応を可能にしました。また、この就業規則とは別に安全衛生管理規定を設けて11時間のインターバル時間を目標に設定し、月の半分(約11日間)以上でそのインターバル時間を確保できていない日があると、社内で健康チェックの対象となるという仕組みをつくっています。
全社員に最低8時間を義務化
企業Bでは対象者を全社員とし、インターバル時間を最低8時間、努力義務を10時間と規定しました。また、勤務表にアラーム機能を導入することで時間を意識した働き方ができるよう工夫しました。インターバル時間の確保ができないことでペナルティが発生することはありませんが上長の管理責任が発生する可能性を残すため、個人の努力に留まらず組織的に就業規則を守ろうとする仕組みになっています。
フレックスタイム制の補完として導入
企業Cでは対象者を全社員とし、インターバル時間を11時間としています。この企業では、働き方改革の一環でフレックスタイム制の導入を大きな指針とし、その補完として勤務間インターバル制度を併せて導入したという経緯があります。フレックスタイム制度では、6:00から21:00までの間で業務に合わせて好きな時間に出勤することができ、かつ勤務間インターバル制度によって休息時間も確保されることで、1人ひとりが自発的にワークライフバランスを考えた働き方に変わります。
勤務間インターバル制度の導入事例一覧
その他、厚生労働省が企業に勤務する社員の働き方や休み方の見直しと改善に役立つ情報を提供する「働き方・休み方改善ポータルサイト」にて、勤務間インターバル制度の導入事例一覧が掲載されていますので、参考にご確認ください。
勤務間インターバル制度の助成金制度
最後に、勤務間インターバル制度を導入することで国から受け取ることができる助成金について説明します。
時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)とは
この助成金は、勤務間インターバル制度の普及のために「時間外労働等改善助成金」として中小企業を対象に支給されるものです。以下は2022年度の制度をまとめていますが、申請期間が過ぎてしまいましたので次年度の参考にしてみてください。
支給対象
中小企業
支給条件
労働者災害補償保険の適用事業主であること
以下のうちいずれか1つ当てはまること
・現在までに勤務間インターバル制度を導入していないこと
・すでに休息時間が9時間以上の勤務間インターバル制度を導入しているが、対象者が労働者の半分以下である事業場
・すでに休息時間が9時間未満の勤務間インターバルを導入していること
すべての対象事業場において、交付申請時点および支給申請時点で36協定が締結・届出されていること
すべての対象事業場において、原則として過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること
すべての対象事業場において、交付申請時点で年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること
対象となる取り組み
労務管理担当者に対する研修
労働者に対する研修、周知・啓発
社会保険労務士、中小企業診断士など外部専門家によるコンサルティング
就業規則・労使協定などの作成・変更
人材確保に向けた取り組み
労務管理用ソフトウェアの導入・更新
労務管理用機器の導入・更新
デジタル式運航記録計「デジタコ」の導入・更新
労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(※)
※パソコン、タブレット、スマーフォンなど各種デバイスについては対象外
成果目標
一口に勤務間インターバル制度を導入するにしても何時間の間隔を空けることを目標にしているのでしょうか。
実は成果目標にも指針があり、事業主が事業実施計画で指定したすべての事業場にて、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入すること、となっています。
支給額
支給額は、休息の設定時間と導入時の各企業のフェーズによって3種類に分けられます。
初めて勤務間インターバル制度を導入し、休息時間を9時間以上とする「新規導入」、すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバル制度を導入しているが、対象者が労働者の半数以下であった「適応範囲拡大」、すでに9時間未満の勤務間インターバル制度を導入しているが、時間を2時間以上延長して休息時間を9時間以上にする「時間延長」の3つです。
新規導入の場合
9時間以上11時間未満:800,000円
11時間以上:1,000,000円
適応範囲拡大・時間延長の場合
9時間以上11時間未満:400,000円
11時間以上:500,000円
なお、どのフェーズであっても、当該事業場に所属する労働者の半数超を対象とするとされています。
勤務間インターバル制度で社員の健康促進を目指す企業へおすすめの取り組み
近年、注目度が高まっている働き方改革ですが、健康的な生活を守ることを目的とした勤務間インターバル制度はその一環として導入が努力義務化されています。労働者が元気に働き充実した生活を送ることができるよう、この制度を導入してみてはいかがでしょうか。
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