人材育成

タクシー業界の人材不足|業界の現状と原因について解説【事例付き】

現在のタクシー業界では、深刻な人材不足(運転者不足)に悩まされています。

タクシー業務は、お客さんを乗せた分だけ収益が発生する仕事であるため、タクシー運転者の確保は事業者にとってまさに今すぐにでも解決したい問題です。

しかし、実状は運転者の数がピークであった平成17年の約38万人から平成27年の約30万人へと減少を続けており、少子高齢化の日本においてこの傾向はより進んでいくとみられています。

そのような状況のなか、タクシー事業会社は人材確保のために各社さまざまな取り組みを行っています。

今回の記事では、タクシー業界における人材不足の背景や原因、対策、人材不足対策の実例などを幅広くご紹介いたします。

タクシー業界の方のみならず、人材不足でお困りの方などは、ぜひ本記事をご参考にしていただけましたら幸いです。

【注目】自社にとって本当に必要な福利厚生制度は?

もしもこの記事をご覧いただいている方の中で、自社の福利厚生制度についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずはじめに「企業担当者必見!「福利厚生サービス」のおすすめ5選を解説」の記事をお読みください。

福利厚生のアウトソーシングについて

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タクシー業界の動向〜運転者不足の状況〜

なぜ、今タクシー業界は人手不足なのでしょうか。まずは、タクシー業界の現状についてお話をしていきたいと思います。

法人タクシー事業者は10年間で10%減少

一般社団法人ハイヤー・タクシー連合会が発表している「平成29年版全国の事業者数及び車両数の推移」によると、法人タクシー事業者はピークであった平成17年度の7,076件だったのに対し、平成28年度の数字では6,231件と約10%減少しています。

タクシー事業者数の推移(全国タクシー・ハイヤー連合会「全国の事業者数及び車両数の推移」より)

また個人タクシーは平成17年度は約4万5,000件に対し、平成28年は3万5,000件件と、こちらも約10%の減少です。

運転者は10年間で38万人から30万人に

次に法人のタクシー事業者に勤務する運転者数の推移を見てみましょう。

運転者数の推移(法人)(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会より

運転者数のピークであった平成17年度は約38万人のドライバーがいましたが、その10年後、平成27年度には約30万人にまで減少しています。(28年度は28万人)

一方、女性の運転者は一時は下がりましたが増加傾向にあります。

女性乗務員数の推移(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会より

平成27年は6,878人だったのに対し、平成29年の女性運転者は、約7,292人でした。

運転者の平均年齢は59.4歳、勤続年数は9.6年

タクシー業界の平均年齢は、男性の場合59.4歳で、勤続年数は9.6年となっています。

運転者の賃金水準は業界平均で低いが年額では若干上昇

運転者の月間平均給与は26万2,700円となっており、全産業の月間平均給与37万1,300円と比較して約10万円のひらきがあります。

運転者(男性)の平均月間賃金(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会より

また年間の給与水準は、全産業男性労働者の年収551万7,400円なのに対し、333万2,900円と大きな差があります。

運転者の年間賃金水準(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会より

しかし、平成20年からの推移を見てみると、若干上昇傾向にあることが分かります。

つまり、ここまでの話をまとめると、タクシー業界の人材(運転手)は、年々減少し続けている一方で、他の業界と比較しても賃金は低い水準にあると言えます。

新しくタクシー業界に入ってくる求職者に対して、仕事のメリットや魅力などを継続して、理解してもらうことが必要になるでしょう。

タクシー業界が人材不足である4つの理由

この章では、タクシー業界が人材不足に陥ってしまう4つの理由について説明します。

理由①:運転者の高齢化

タクシー運転者が不足している最も大きな理由としては、「運転者の高齢化」がまず挙げられます。

高齢となった運転者が次々と退職する中で、新しい人材を採用し続けることが出来なければ人材不足は解消されないままです。

国土交通省の発表によれば、全産業の業界平均年齢は42.4歳です。タクシー業界はと言うと、運転者の平均年齢は59.4歳です。実に17歳の差があります。

現在のタクシー運転者は、高度成長期やバブルの時代を支えた人が多く、彼らが退職する数以上の人材を獲得していかなくてはいけません。

理由②:訪日観光客の増加

「訪日観光客の増加」も人手不足の原因となっています。

日本政府観光局が発表している「訪日外客数(総数)」によると、訪日外国人旅行者数は2011年以降の約622万人から毎年増加しており、2016年時点では約2,400万人となっています。実に3.8倍の数字です。

訪日外国人の全員がタクシーを利用する訳ではありませんが、運転者不足の原因を作っている理由の一つでしょう。

また、2020年には東京オリンピックを控えているため、今後タクシー運転者の需要は伸び続けていくと考えられます。

理由③:低賃金、不透明な労働環境

先ほどの章でもご紹介したとおり、タクシー運転者は他の産業と比較して平均給与が低い傾向にあります。

運転者(男性)の平均月間賃金(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会より

 

運転者の年間賃金水準(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会より

多く稼ぎたいと考える若者にとっては、お客さんを多く乗せた分だけ給料が多く支払われる歩合制で給与が決まるとしても、平均給与自体が低ければ大きなモチベーションとはならないでしょう。

また、タクシー業務というのは基本的に車という密室で行われる業務です。

そのため、お客さん側の視点からはタクシー運転者の仕事が何となく分かったとしても、どのように一日を過ごしているのか、何日くらい休みを取っているのかなど、働き方に不透明な部分があるのも事実です。

働きたいと思ったとしても将来の自分をイメージしにくい、という問題があるでしょう。

理由④:タクシー運転職へのネガティブイメージ

タクシー運転者に対する求職者からのネガティブイメージも新しい応募者の壁になっている理由の一つです。

具体的には、

・長く働ける仕事かどうか分からない
・安定した賃金が得られるのか分からない
・そもそも若い人が行う仕事のイメージが無い
・昼夜逆転をした不規則な勤務形態があるのではないか

などが挙げられるでしょう。

先ほども述べたように、業界や働き方の透明化、賃金アップ、キャリアプランの提示など、若者でも気軽に応募出来るようなポジティブなイメージを作っていくことが必要です。

最近では、タクシー業界が積極的に新卒者や転職者にアピールする活動も増えてきています。

タクシードライバーに対するイメージが激変。「自分はまだまだタクシーを理解しきれていない」((国際自動車株式会社)

このインタビューで答えている岡本さんのように、様々な職業からタクシー運転者へ転職した人も少なくありません。転職するということは、ある程度メリットがなければ行わないでしょう。

業界に入るメリットを継続的に求職者に対してアピールしていく必要があります。

タクシー業界が行う人材不足対策とその事例

ここからは、人材不足に悩むタクシー業界が行うべきor既に行っている対策とそれに紐付く実際の事例についてご紹介します。

政府・タクシー業界の人材不足対策

タクシー運転者の減少を重くとらえている政府・タクシー業界は、近年以下のような人材不足対策を行っています。

第二種免許の受験資格の見直し

本来、タクシー業務は基本的に人(お客さん)を乗せて車を走らせるため、運転者は自動車第二種免許を取得する必要があります。

これまで第二種免許を取得するための道路交通法上の受験資格は、「21歳以上」で「普通免許保有3年以上」と規定されていました。

各都道府県が指定した旅客自動車教習所で教習を受けると「2年以上」に短縮されます。

政府は、この2年という縛りを「1年」にさらに短縮するための緩和策を検討しており、大卒者への入り口を広げる狙いがあります。

タクシー運転手が人手不足、免許の緩和を検討 警察庁(産経新聞)

また、平成27年12月には視聴覚障害者であっても補聴器を付けて聴力検査を認めるように法律を変更しており、採用の門戸が広がりました。

今回も人材不足回復が期待されています。

タクシー事業における働き方改革プランの提示

一般社団法人ハイヤー・タクシー連合会は、平成30年3月、働き方改革をタクシー業界にも導入しようと独自のアクションプランを打ち立てました。

それが、「タクシー事業における働き方改革の実現に向けたアクションプランー生き残るために、やるなら、今!ー」です。

この資料には、以下の6つの目標が打ち立てられていました。

①労働時間に関する労働基準法等関係法令及び改善基準の尊守

② タクシー利用者の利便性向上、利用者の増加、事業経営の効率化

③ 若年者や女性を始めとする運転者の確保・育成等

④ 時間外労働の上限規制について

・年960時間を超える事業者割合(月平均 80時間超えに相当)

・ 月60時間超え時間外労働の割増賃金率が50%以上となることを踏まえできる限り早期に年720時間(月60時間)以内となるよう努める

⑤ 年5日以上の年次有給休暇の取得(全員が取得できる態勢づくり)

⑥ 乗務員負担制度の見直し等賃金制度等の改善に努める

また同資料には、アクションプランの上記目標を達成するために取り組むべき事項なども盛り込み、タクシー業界全体のあり方を変えようとしています。

民間タクシー業者の先進的な人材不足対策

政府や大きな団体では、上記のような法改正や働き方改革などのプロジェクトを推進しようとしていますが、民間企業でも政府に先駆けて先進的な取り組みを行っているプロジェクトもあります。

相乗りタクシーの実証実験

平成30年8月、タクシー大手「日の丸交通」と、自動運転システムを開発するベンチャー企業「ZMP」が、一般乗客を乗せて大手町ー六本木間の約5キロを往復する実証実験が行われました。

車の自動運転は技術的にはほぼ実用可能なレベルまで近づいており、安全性まで担保する全4段階のテストのうち、現在2段階目まできているとのこと。

しかしながら、人を乗せながら自動運転でタクシーが走るには、法律の改正が必要となりその整備にまだ時間がかかる見通しです。

もしこの技術が本当に実用化に至り普及した場合、必要なタクシー運転者の数は大幅に減り人材不足対策の決め手となるでしょう。

あり方が変わってきたタクシー業界の採用手法

タクシーの会社が新卒運転者146名を採用

これまでタクシー運転者と言えば、オジさんの仕事というイメージでした。

しかし、最近ではタクシードライバーは有名私大を卒業した若者も新卒で入社する業界へと徐々に変わりつつあります。

その中でも特に結果を出しているのは、「kmタクシー」でお馴染みのタクシー大手、国際自動車です。

国際自動車HP

タクシー以外にも貸切バスや自動車機器リース事業なども展開している同社は、2018の入社人数は163名でした。

そのうち何と146名は大学を卒業した新卒ドライバーです。出身大学は早稲田、慶応、法政大学など有名校も多くいます。

国際自動車が運転者の新卒採用を始めたのは2010年のこと。

当時の内定者は1人だけ。内定をいくら出してもタクシー業界に対するネガティブイメージから、親や大学から反対され辞退してしまう学生も多かったそう。

同社新卒採用サイト

しかし、社長や副社長が毎月「オープンカンパニー」として学生や親を営業所に呼び丁寧に説明を行っていくうちに徐々に理解が得られてきたといいます。

面倒なエントリーシートを廃止し、アルバイト先から面接に直接来れるように私服での就活も解禁。

その結果、2015年111人、2016年84人、2017年131人と新卒ドライバーは増えていき、離職率も通常30%前後のところ同社の場合は15%と好調です。

タクシー会社がダイバーシティ経営を推進

近年、企業経営にも多様性を認める方針を取り入れる会社が増えてきています。

日の丸交通では、ダイバーシティ経営・採用を推進しているとして、様々な採用方法を展開しています。

ダイバーシティ採用特設サイト

同社では以下の4つの採用形態をとっています。

・女性採用
・外国人採用
・LGBT採用
・夢追人採用

それぞれの採用の特徴を見てみましょう。

女性採用
同社女性採用サイト

女性採用をアピールするポイントとして、同社女性採用サイトでは以下の6つのポイントが示されています。

①配属後1年間は月額23万円保障!

②週休2日の勤務スタイルOK!昼間だけも

③子育てをサポート!地域の保育所との連携

④未経験でも安心な充実の研修制度

⑤女性教官が在籍

⑥研修期間中のお弁当の手配

外国人採用

外国人採用にも積極的に取り組んでいます。

同ホームページでは、ブラジル、中国、韓国と多様な国から働きに来た外国人運転者の方のインタビューが紹介されています。

同社外国人採用サイト
夢追人(ゆめおいびと)採用
同社夢追人採用サイト

夢追人採用とは、夢を追いかけるためにシフトや就業時間のことを考慮した、夢も仕事も諦めない働き方です。

夢追人採用サイトでは、以下の5つのメリットが示されています。

・急なシフト変更も可能!

・週休3日制!

・長期休暇可能!

・事業時間を自由決定

・有給休暇使用制限無し

これらの事例のように、単なる人材募集だけではない、時代の潮流や独自の工夫を積極的に取り入れた近年のタクシー業界の採用手法は、タクシー業界以外の採用担当者にとっても参考となる事例ばかりでしょう。

求職者にとって本当に求められる価値を提供することが出来れば、たとえ人手不足が当たり前とされている業界であったとしても、十分な成果を出すことが出来るでしょう。

まとめ

本記事では、日本におけるタクシー業界の人材不足の現状から、各企業における具体的な対応策まで幅広くご紹介しました。

ここでタクシー業界における人材不足の原因についてもう一度記しておきましょう。

①運転者の高齢化
②訪日観光客の増加
③低賃金、不透明な労働環境
④タクシー運転職へのネガティブイメージ

先に挙げた事例のように、時代に合った方法で若者を積極的に採用し、事業の見える化を進めていくことが必要です。

そうすれば、タクシー業界における正しい理解が周囲から得られ採用がよりし易くなるでしょう。

人材不足は既にどの業界にも訪れている深刻な問題です。

これをピンチと慌てるのではなく、むしろ新しい価値観や手法を試せるチャンスと捉え、様々な採用方法や企業アピールをこれからも実践していくことが大切です。

参考サイト
・一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan2018
・ドライバータイムズ「タクシー業界の課題の現状・今後の課題・解決方法|人材不足
・ドライバーマガジン「タクシードライバーが人手不足だといわれる原因と各社の取り組みについて

競合他社との差別化をはかる!企業のイメージアップは「ベネフィット・ステーション」で

人生100年時代と言われるようになり、定年年齢の引上げや定年廃止が進んでいます。
少子高齢化による人手不足の原因の一つとなっている中で、「企業のイメージアップ」は離職率低下や若手の人材確保において重要な役割を担います。

例えば「仕事とプライベートの充実ができる働きやすい会社か」「風通しが良い社風で一緒に働く人と一体感を持つことができる働きがいがある会社か」といった不安を払拭する必要があります。 これらの課題は、福利厚生サービスベネフィット・ステーションの導入で解決すること出来ます。

1. 140万件以上のサービスが利用できるため、年齢や性別関係なく、従業員の多様なニーズに答えることができる

2. 企業の福利厚生制度として「スポーツジム割引」「育児・介護補助」などの記載が出来るため、競合他社との差別化ができる

従業員が企業担当者を介さずサービスの利用申し込みを行うため、導入後の事務作業はほとんどありません。

ぜひ、企業のイメージアップや労働環境の改善策の一つとして、福利厚生制度の検討をしましょう。


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