残業代の還元なくして働き方改革の成功はない|3つの還元手法

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働き方改革関連法の目玉となっている、時間外労働の上限規制。法律により残業時間の上限が定まったことで、企業はさまざまな対策を講じる必要があります。

しかし、残業時間の上限規制について、具体的な内容や、その効果について企業の担当者や労働者が理解できていないことも多いのではないでしょうか。

「残業時間の削減が必要なのはわかったが、具体的にどのように減らせばよいのかわからない」

という人事担当者もいらっしゃることでしょう。

また、

「残業が減ると、残業代が減ってしまうので困る」「持ち帰りの仕事が増えるのではないか?」「サービス残業が増えるだけなのではないか?」

という不安を抱える労働者も少なくないようです。

単純に残業を減らすだけでは、働き方改革は成功しません

残業が減ったことによるデメリットを最小限に留め、得られるメリットを最大限にするためには、労働環境の改善と労働者の意識改革が不可欠です。

そして労働者の意識改革のためには、減った残業代の還元がポイントとなります。

今回は、働き方改革による「残業の上限規制で何が変わるのか」、「残業代の3つの還元方法」などについて、具体的に紹介していきます。

【注目】自社にとって本当に必要な福利厚生制度は?

もしもこの記事をご覧いただいている方の中で、自社の福利厚生制度についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずはじめに「企業担当者必見!「福利厚生サービス」のおすすめ5選を解説」の記事をお読みください。

残業時間の上限規制で何が変わるのか

残業には今までも上限が定められていましたが、法的な拘束力はありませんでした。

それでは今回の、働き方改革関連法では残業時間の上限規制はどう変わるのでしょうか?

改正前と改正後の残業時間の上限規制

改正前は法律上の上限規制なし

改正前も、残業時間は原則月45時間、年360時間と決まっていました。12時間程度ということですね。

この原則を、実際の現場の現状と比較して少ないと感じる方もいるでしょう。業種などによってもバラつきがありますが、残業時間が月に45時間を大きく上回ることは少なくありません。

改正前は上限を超えても行政指導のみで罰則はありませんでした。そのため、上限はあってないようなもの、という企業も多く存在するのです。

残業の平均時間については、「業務効率化の実現へ、ノー残業デー導入で得られるプラスの効果」の記事で詳しく紹介しています。

改正後は罰則規定があり厳格化

改正後の残業時間も、原則月45時間、年360時間です。改正前と違い、法律で残業時間の上限が定められ、これを超えることは原則できません。

さらに特別な事情がある場合も、最大で年720時間以内・月100時間未満(複数月の場合平均80時間以内)と定められました。

また、特別な事情があっても月45時間を超えられるのは年間6カ月までです。

※出典元:厚生労働省 働き方改革特設サイト|時間外労働の上限規制

所定外労働時間と法定外労働時間

次に、上限規制にかかる残業時間の考え方を解説します。

時間外労働には、所定時間外労働と法定時間外労働があります。そして、どちらの労働時間も残業時間と呼ばれています。

両者の違いを確認しましょう。

所定時間外労働

所定時間外労働とは、企業ごとの就業規則などで定められた所定時間を超えた部分のことを指します。

就業規則で勤務時間が9時から17時と決められているならば、17時以降が所定時間外労働の残業時間です。

法定時間外労働

これに対し、法定時間外労働の考え方は、企業のルールとは関係ありません。労働基準法で1日の労働時間は8時間(140時間)と決まっていますから、8時間を超えて働いた時間は法定時間外労働の残業時間です。

法律上はこちらの残業時間を用いますから、今回の法改正による残業時間の上限規制でも、法定時間外労働の時間が問題となります

残業時間の上限規制に違反した場合の罰則

今回の法改正の施行日以降に残業の上限規制を守らなかった場合、事業主に30万円以下の罰金または6カ月以下の懲役が科される可能性があります。

中小企業は上限規制が1年猶予される

20186月に成立した働き方改革法案ですが、改正法の適用時期は、企業の規模によって異なります。

大企業は20194月から、中小企業は202041日から適用となり、大企業よりも中小企業のほうが準備期間は長くなります。しかし中小企業ではこれまで残業時間について何も対策してこなかったという場合や、現在までの残業時間が多く減らすためにはあらゆる施策が必要なケースも多いでしょう。そのため早めの準備が必要とされています。

上限規制1年猶予の中小企業の範囲

上限規制が1年間猶予される中小企業の範囲は以下の通りです。事業所ごとではなく、企業ごとの規模で判断します。

業種ごとに判断基準が異なり、資本金または労働者数のどちらか一方を満たすことで中小企業に該当します。

業種

資本金

労働者数

小売業

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他(製造業・建設業など)

3億円以下

300人以下

残業時間の上限規制が猶予・除外される事業・職種

上限規制が猶予される事業・業務

今回の法改正では、「医師」「自動車運転業務」「建設事業」など、残業時間の上限の施行が5年間猶予される業種もあります。5年の猶予ののち、その業種に合った規制が適用されます。

※出典元:厚生労働省 働き方改革特設サイト|上限規制の適用が5年間猶予される事業・業務

上限規制が除外される業務

今回の法改正にともなって労働安全衛生法が改正されたことにより、新技術・新商品等の研究開発業務については、新たな規制が定められました。

新技術・新商品等の研究開発業務については、上記の残業時間の上限規制から除外され、次のような規制が設けられます。

  • 1週間当たり40時間を超えて労働した時間が、月100時間を超えた労働者に対して、医師の面接指導を義務化(罰則付き)
  • 面接指導を行った医師が必要と認める場合は、事業者が何らかの措置を講じなければならない

残業時間の上限規制で予想される問題

単純に残業時間の上限規制をしただけで他の対策を講じない場合、どのような問題が起こるのでしょうか?

残業代が減って働く意欲が減衰する労働者

残業時間が少なくなれば、家族と過ごす時間や趣味に費やす時間を確保できるでしょう。しかし、残業が減れば残業代が減ってしまいます。

楽しむ時間ができても、手取りが減ったことで金銭的な余裕がなくなってしまう可能性があるのです。残業代に頼った家計設計をしてきた労働者においては、ローンや子どもの教育費を払えない、という事態もあり得ます。

これまでの生活が維持できなければ、転職を考えることもあるでしょう。

持ち帰りの仕事やサービス残業が増えるという懸念もあります。残業代が減り、仕事は減らないのでは、労働意欲も減衰してしまいます。

仕事が増える管理職

一方、労働者を管理する側の負担が増えることも問題です。残業時間の上限規制を守ることだけを強制された管理職は、労働者をとにかく早く帰宅させなければいけません。終わらなかった仕事を自分でこなす羽目になるかもしれません。

持ち帰りの仕事や休日出勤が増える可能性もあるでしょう。

労働者の仕事への意欲減衰・離職で損をするのは企業

労働者が仕事への意欲をなくすことで、一番困るのは企業です。大切な社員の離職は企業にとって大きなダメージとなってしまいます。

残業代が減れば企業は一時的に支出が減るでしょう。しかし、その減った残業代は労働者へ還元すべきなのです。

残業規制の本来の目的は生産性の向上

残業の上限規制の本来の目的は、人件費カットではありません。

まずは残業規制の本質、本来の目的を確認しましょう。

残業規制の本来の目的を確認

残業時間の上限規制によって、残業代が減り企業側は一時的に人件費が減るかもしれません。

しかし、その本来の目的は生産性を向上させ、働き手を増やすことにあります。労働者が働きやすい環境を整えることで、生産性が向上し、働き手が増え、企業の利益に繋がるのです。

働き方改革の目的については、「5分で分かる「働き方改革」とは?取り組みの背景と目的を解説の記事で詳しく紹介しています。

労働生産性を向上させるためのポイントは、「労働生産性とは?混同しがちな定義と計算式をわかりやすく解説」の記事でも詳しく紹介しています。

目的達成するために意識改革を

「労働時間の短縮」を、労働者や管理者へ無理強いするだけでは、本例の目的を果たせません。

ツールの導入や、業務の一部外注、取引環境の改善などの環境整備も必要です。

そして、これらに加えて必要不可欠なのが、残業時間の上限規制後のビジョンを明確にすることです。

労働者は残業時間の上限規制後に何が起こるのか不安に思っているかもしれません。すでに労働意欲が低下している可能性もあります。

残業時間の上限規制が始まっても、収入は減らず、余暇が増えるのなら、どうでしょうか。

労働者は効率よく仕事をこなし、企業に貢献したいと考えるのではないでしょうか。

残業代の還元により労働者の意識を改革することが可能になるのです。

残業代還元で結果がでた実例

残業代還元を実際に行っている企業もあります。ここでは、SCSK株式会社の例をご紹介します。

SCSK株式会社とは?

SCSK株式会社は、2011年に住商情報システム株式会社と株式会社CSKが合併して誕生した、ソフトウエアの開発・ネットワークの構築などのITサービスを提供する企業です。

24時間、365日サービスを提供し続けなければいけないIT業界では、長時間労働が問題視されています。

2012年に社長に就任した中井戸氏は、SCSK株式会社にもこのような長時間労働の問題があることから、改革に乗り出したといいます。

残業半減の目標は達成したが

経営トップ主導で始まった改革は、環境整備、残業半減運動など、大規模で思い切ったものでした。

診療所や食堂を備えた新社屋へ移転するとともに、期間限定の「残業半減運動」の実施や、「有給休暇取得率90%」を目標にするなど大胆な改革を進めます。

そして約半分の部署で残業半減の目標が達成できたそうです。

しかし、その効果は持続せず、年度末の繁忙期にはもとに戻ってしまいました。

残業代還元で社員の意識に変化が

残業半減を定着させるには、社員の意識を変化させる必要があると考えた経営者側は、社員の意識を変えるために、「浮いた残業代の還元」をすることを決めます。

SCSK株式会社では、「スマートワーク・チャレンジ20」として、次のような施策を実施しました。

  • 20時間分の残業代を固定支給
  • 有給取得・残業時間削減目標を達成した組織へ特別ボーナス
  • 全社一斉年休取得日・取得推奨日
  • 5日間のバックアップ休暇(有給休暇を全部取得した後の不測の事態に付与)

このような施策により、社員自身が業務の効率化へ積極的に取り組むようになり改革が実現しました。

※出典元:SCSK株式会社公式ホームページ|スマートワーク・チャレンジ20実施による効果

クオリティ向上により取引先の理解を得る

残業が減ったことで業務の進行や対応速度に問題が生じると、「休んでいては取引先に怒られるのでは」と心配する労働者もいるでしょう。「受注が減ってしまうのでは」という懸念もあります。

SCSK株式会社では、取引先企業へ理解を求めるため、働き方改革によって業務のクオリティが向上すること、結果的に双方の利益に繋がり好循環を生み出すことをアピールしています。

※出典元:SCSK株式会社資料|SCSKの働き方改革

残業代3つの還元方法

残業時間の上限規制により減ってしまった残業代を給与で還元できれば、労働者にとっては一番助かるでしょう。しかし、賃金を一斉に上げることは、企業にとって負担が大きく、実際には困難な場合が多いと考えられます。

ここでは、給与アップ以外で残業代を還元する方法を3つご紹介します。

手当・賞与で還元

残業を削減した時間分を手当や賞与で支給すれば、労働者にとってもわかりやすく、企業側も負担が少なくて済みます。

効率よく短時間で業務をこなせば、早く帰れる上にボーナスがでるのであれば、労働者の意欲もアップするでしょう。

十分な休みをとることで業務に集中でき、さらなる効率アップも期待できます。

カフェテリアポイントで還元

手当や賞与での支給が難しい場合や、現金以外の方法で特典を与えたい場合には、カフェテリアポイントでの還元がおすすめです。

カフェテリアポイントとは、福利厚生サービスのカフェテリアプランで付与できるポイントで、金額やメニューは自由に設定可能です。

企業側が使って欲しいと考えるメニューに使途を限定することもできます。労働者の健康促進や生産性向上のためのメニューを選択することで、費用以上の効果が期待できるでしょう。

カフェテリアプランについては、「2019年最新版カフェテリアプランに関するまとめの記事で詳しく紹介しています。

各種割引サービス(福利厚生サービス)で還元

予算のあまりない企業におすすめなのは、福利厚生サービスの導入です。スポーツクラブやレストラン、旅行などが割引で利用できる福利厚生サービスは、労働者の収入を増やすことはできませんが、割引利用によって支出を減らせます。

1人あたり数百円から導入できますから、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

福利厚生サービスについては、「企業担当者必見!「福利厚生サービス」のおすすめ5選を解説」の記事で詳しく紹介しています。

残業上限の規制は意識改革とセットで行うこと

残業時間の上限規制は、労働環境の整備や必要なツールの導入などの環境を整えるのと同時に、労働者の意識改革がなければ成功しません。

働き方改革の本来の目的と残業規制後のビジョンを明確にし、労働者が自ら残業を減らしたいと思えるようにしなければ意味がないのです。

働き方改革を成功させるために、労働者へ残業代を還元し、意識改革を進めてみてはいかがでしょうか。

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長時間労働の是正と共に検討すべき
福利厚生制度の拡充

働き方改革が進む中で、その取り組みの中心となっている長時間労働の是正。

すでに多くの企業が取り組みを行っている中で、セットとして注目されているのが、給与・福利厚生制度などの待遇面の向上です。

残業削減は従業員のプライベートを確保し、仕事に対するモチベーションの向上に繋がっている一方で、残業代が減り、従業員の賃金低下が目立ってきています。

しかし、基本給を上げることは難しいので、残業代の代替策が求められます。

従業員満足度、生産性の向上、採用強化・離職防止に繋がる福利厚生制度の拡充を検討していくことが得策です。

業界トップの導入実績を誇るベネフィット・ステーションは、

・最短2週間で大手企業と同等の福利厚生を簡単に整備できる
全国の企業、幅広い年代層や多様なニーズに応えるための140を超える福利厚生優待サービス
東証一部上場企業の45.3%、公務団体の46.6%が導入済み
従業員が直接サービスを申込むため、導入後の事務作業は一切なし

と、従業員1人あたり600円(税抜き)~で充実した福利厚生制度の拡充が実現できます。

企業は人なりという言葉があるように、従業員の会社に対する満足度を高めることは、企業の業績を向上させることに繋がります。

ぜひこの機会に、福利厚生制度の拡充を検討していきましょう。


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