毎年の実施が義務に、ストレスチェック制度完全マニュアル
「ストレスチェックが必要と言われたけど、そもそもどのようなもの?」
「ストレスチェックの準備は何から始めれば・・・」
新たに人事・労務といった部署に配属された方の中には、このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで本記事では、ストレスチェックがなぜ必要なのか、その背景を踏まえて、実施する意義や手順について解説していきます。
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ストレスチェックの義務と意義
ここでは、ストレスチェックの概要と法律上の位置付け、また、企業におけるメリットについて詳しく解説していきます。
なぜ、ストレスチェックが必要なのか
ストレスチェックとは、事業者が労働者の心理的な負担の程度を把握するために実施する検査のことを指します。ストレスチェックは、平成25年に公布された改正労働安全衛生法において、常時50人以上の労働者を使用する事業者に対して、実施が義務化されました。
厚生労働省によると、ストレスチェックの対象者は以下2つの要件を満たしている人になります。
1. 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者ならびに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者および1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
2. 1.に該当する者1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
この法律改正の背景には、仕事によるストレスが原因となって精神障害を発病し、労災認定される労働者が年々増加していたことがあります。そこで、ストレスチェックによって事業者が労働者のストレスの程度を把握し、また労働者自身にもストレスへの気づきを促すことによってより働きやすい環境を構築することで、精神障害などの原因となっているメンタルヘルス不調を未然に防止しようという狙いから法改正が行われました。
なお、ストレスチェックは検査を行えば終わりというものではなく、検査結果に基づく面接指導の実施等も義務化されており、この一連の取り組みのことを「ストレスチェック制度」と呼びます。
仮に、ストレスチェック実施義務のある実施常時50人以上の労働者を使用する事業者が実施を怠った場合、労働安全衛生法違反の罰則として最大50万円以下の罰金が課される可能性があります。また、労働者に事故や疾病が発生した際に会社が実施すべきことをしていなかったとして、安全配慮義務違反等の問題となることも考えられます。
ストレスチェックを行う意義
前項ではストレスチェックの「義務」について触れましたが、その実施は事業者にとっても大きなメリットがあります。具体的には、次のようなメリットを挙げることができます。
労働者のメンタルヘルス不調の未然防止
労働者がメンタルヘルス不調に陥る前に業務に対するストレスや不安を把握することで、専門医への相談など適切な措置を講じられるようになります。また、労働者も普段意識していないようなストレスや不安と向き合えるようになることで、無理のない働き方をするきっかけにもなります。
職場の課題が把握しやすくなり、職場環境の改善に
労働者がストレスや不安を感じている場合、業務や職場環境そのものに課題があるケースが少なくありません。ストレスチェックの実施は、そうした潜在的な課題を発見することにつながります。結果として、職場環境の改善につながるケースが少なくありません。
職場改善が進めば、労働者の満足度も向上
前述したように、職場環境の改善が進むことで労働者の満足度向上につながります。結果として、離職率の改善や生産性の向上といった効果も期待できます。
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ストレスチェックの実施手順
ここからは、実際にストレスチェックを行う際の流れを9つのパートに分類して、それぞれ解説していきます。
参考元:厚生労働省 ストレスチェック制度導入マニュアル
導入前の準備
ストレスチェックの導入時には、「担当者」「実施者」「実施事務を補佐する担当者」「面接指導を担当する医師」を決める必要があります。
担当者とは、ストレスチェック制度の計画策定や進捗管理を担う人物です。一般的な事業者では、人事部がこの役割を担うことになります。
一方で実施者には、「医師」「保健師」「厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師」のいずれかに該当する人を選定する必要があります。既に契約している産業医などがストレスチェックの実施者として対応可能であれば、その方に依頼するとスムーズでしょう。
もし、前述のような方と契約していない場合には、ストレスチェックの実施者を探す必要があります。実施者が確定したら、ストレスチェック実施事務を補佐する担当者も決めておきましょう。この担当者は、質問票の回収やデータ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務を担当し、その内容を把握することになります。そのため、ストレスチェックの結果が人事に影響することのないよう、人事権を持たない人が担当する必要があります。
また、ストレスチェックを行った結果、高ストレスにあると診断された労働者が希望した場合には、医師や産業医による面接指導を受ける必要があります。
人選が確定したら、以下のように実施内容を確認しましょう。
・いつ実施するか
・どんな実施方法で行うのか(紙による調査票、Webでの回答など)
・どんな方法で高ストレスの人を選ぶのか
・面接指導の申出は誰にすべきか
・集団分析はどのような方法で行うのか
・ストレスチェック結果は誰が、どこに保存するのか
それぞれ、内容が確定したら社内ルールとして明文化するのを忘れないようにしましょう。ストレスチェック制度の実施方法等については、(安全)衛生委員会の調査審議事項となっています。ここまで準備が整ったら、ストレスチェックを受ける労働者に、その内容を知らせていきます。
質問表の配布・記入
ここから、実際にストレスチェックを始めていきます。まず、ストレスチェックの質問票を労働者に配布し、記入してもらいましょう。
ストレスチェックの項目は、次のようなジャンルであれば、自由に質問を考えても問題ありません。
・ストレスの原因に関する質問
・ストレスによる心身の自覚症状に関する質問
・労働者に対する周囲のサポートに関する質問
ただ、項目をゼロから考えるのは手間がかかるため、厚生労働省が推奨する「57項目の質問票」をベースにするのがおすすめです。下記の厚生労働省のサイトでは実際にセルフチェックを行うことができますので、まだ受けたことのない方は一度実施してみると良いでしょう。
参照元:厚生労働省 国が推奨する57問の質問票
注意点として、回答済みの質問票を回収する際、第三者や人事権を持つ職員がその内容を閲覧することは禁じられています。そのため、質問票の回収は必ず「実施者」または「実施事務を補佐する担当者」が行うようにしましょう。
ストレス状況の評価・医師の面接指導の要否の判定
回収した質問票の内容をもとに、「実施者」が回答した労働者のストレスの程度を評価します。その上で、高ストレスの労働者を選定していきます。
なお、高ストレスの基準は、次の通りです。
・ストレスの自覚症状が高い者
・自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポート状況が著しく悪い者
本人に結果を通知
ストレス程度の評価結果、高ストレスの判定、高ストレス者に対しては医師の面接指導の希望の有無を、「実施者」から直接本人に通知します。事業者が評価結果を入手するためには、本人への結果通知後、本人の同意を得る必要があります。なお、本人から医師による面接指導の希望があった場合、事業者が結果を知ることについて同意があったものとされます。
評価結果については、次のいずれかの方法で保管することが求められます。
・「実施者」もしくは「実施事務を補佐する担当者」が保存
・第三者に閲覧されないよう、企業内の鍵のかかるキャビネットやサーバー内に保管(鍵やパスワードは「実施者」もしくは「実施事務を補佐する担当者」が管理する)
本人からの面接指導の申し出、医師による面接指導を実施
ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要(高ストレス者)」とされた労働者から申出があった場合は、医師に依頼して直接指導を実施することになります。
申出は結果が通知されてから1ヶ月以内に、面接指導は労働者からの申出から1ヶ月以内に行いましょう。
就業上の措置の要否・内容について医師から意見聴取
医師が面接指導を実施した場合は、1ヶ月以内に医師の意見を聞きましょう。聞き取るべき内容は、「就業上、とるべき措置」と「措置を取る必要がある場合、その内容」です。
この面接指導の結果は、事業所で5年間保存しておく必要があります。なお、次の内容が含まれていれば、医師からの報告をそのまま保存しておけば問題ありません。
・実施年月日
・労働者の氏名
・面接指導を行った医師の氏名
・労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況
・就業上の措置に関する医師の意見
就業上の措置の実施
医師からの意見をもとに、労働時間の短縮など高ストレスの職場環境改善に必要な措置を実施しましょう。
なお、ストレスチェック制度には、努力義務として「集団分析」というものがあります。次項ではその手順について説明していきます。
集団分析と職場環境改善(努力義務)
ストレスチェックの「実施者」に、結果を部・課などのグループごとに集計・分析してもらいましょう。具体的には、質問ごとの回答の平均値などを比較するなどして、それぞれの集団がどういったストレス傾向にあるかを調べていきます。
その際には、原則として10人以上のサンプルをもとに分析を行うよう注意しましょう。10人未満の場合には、個人が特定されるおそれがあることから、分析時に全員の同意をとる必要が出てくるためです。
このように分析した結果を踏まえ、職場環境改善を進めていきましょう。
労働基準監督署への報告
最後に、ストレスチェックの実施状況を労働基準監督署に報告することを忘れないようにしましょう。紙媒体で実施の場合、厚生労働省のホームページから報告用のファイルをダウンロードし、必要事項を記載して提出する必要がありますが、オンラインで提出することも可能です。報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりすると、前述したとおり50万円以下の罰金が課されるおそれがあります。
報告の形式としては、次の書類フォーマットを参考にしましょう。
紙申請:厚生労働省 労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス
電子申請:総務省 e-Gov電子申請
ストレスチェック実施にあたっての注意点や相談先
ここからは、ストレスチェックを実際に行う際に注意すべきポイントを解説していきます。その上で、導入前の不明点を解消するための相談窓口を紹介します。
ストレスチェックの注意点
ストレスチェックや面接指導で個人情報を取り扱った「実施者」と「実施事務を補佐する担当者」には、法律で守秘義務が課されます。仮に情報を漏洩してしまった場合、刑罰の対象となりますので、十分な注意が必要です。
また、次のことを理由に労働者に不利益な取り扱いを行わないようにしてください。
・労働者が医師による面接指導を受けたいと申し出たこと
・労働者がストレスチェックを受けないこと
・労働者がストレスチェック結果の事業者への提供に同意しないこと
・労働者が医師による面接指導の申出を行わないこと
加えて、面接指導の結果を理由に、解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うことも禁止されています。
ストレスチェック制度についての相談先
ストレスチェック制度の導入にあたり、相談したいことが出てきた場合には、全国47ヶ所にある産業保険総合支援センターが開催している、ストレスチェック制度の実施のための研修・セミナーや、事業場へのストレスチェック制度の導入等に対する個別訪問支援等を活用してみましょう。
ご相談等の詳細については、以下のリンクからご確認ください。
独立行政法人労働者健康安全機構 全国の産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
また、ストレスチェック制度専門のサポートダイヤルも用意されています。
ストレスチェック制度サポートダイヤル
0570-03-1050(全国統一ナビダイヤル:通話料がかかります)
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感染症対策の中でも、在宅勤務が実施しづらい企業ではワクチン接種が効果的です。
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まとめ
ここまでストレスチェック制度とその実施方法について解説してきました。
前述したとおり、ストレスチェック制度は従業員の不安やストレスを把握するために欠かせないものです。その一方、ストレスチェックだけを行えば良いというものではなく、不安やストレスを生じさせないような「健康経営」を目指した取り組みが重要です。
ベネフィット・ワンでは健康経営に向けた様々なサービスを用意しております。例えば、ストレスチェックは、ベネフィット・ワンが提供しているデータ活用プラットフォーム「ベネワン・プラットフォーム」内での実施が可能です。法令対策や労働基準監督署へ提出用データの抽出も簡単に実施できますので、人事や健康管理室の業務効率化やDX化を実現できます。ストレスチェック以外にも、健康診断の結果や労働時間、残業時間など人事で点在する情報を一元管理して可視化や分析が可能になります。
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そこで、健康経営にはどのようなメリットがあるのか、特に健康経営が必要な企業の特徴を挙げ、取り組みの手順をまとめました。
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