健康経営

【健康経営の基本】健康診断の結果から企業と従業員がすべきこととは?

健康経営、ヘルスリテラシーのイメージ

健康診断(定期健康診断)の受診は健康経営の基本的な取り組みで、受診率が100%であることは、2022年度の健康経営銘柄及び大規模法人部門の健康経営優良法人の認定要件と、中小規模法人部門の健康経営優良法人の認定要件に設定されており、今後も認定要件に設定されることでしょう。健康経営の取り組みとして、健康診断の受診率100%を目標に受診の促進をすることと、健康診断の受診結果から従業員が健康への意識の向上に取り組むことが大切です。

しかし、人事総務部門での従業員の健康管理に関する業務は、取り組む項目が細かいために業務量が多く、どうしても煩雑になりがちです。この業務に振り回されないためには、健康関連の法制度を俯瞰しておくことが大切です。今回は、健康経営の基本的な取り組みとして、健康関連の業務の中でも必ず実施が必要な健康診断について、受診が必要な理由と健康診断の結果から会社・従業員がそれぞれなすべきことについて説明します。

 

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健康診断の必要性(企業)

健康診断やヘルスリテラシーについて説明を受ける従業員

事業者である企業として、従業員に健康診断の受診させることがなぜ必要であるか考えたことはありますか。法律で定められているということは誰でも思い浮かぶことですが、それ以外にも理由があります。ここでは、企業にとって健康診断の受診が必要な理由について説明します。

健康診断の受診は法的義務

冒頭で説明した通り、健康診断の実施は法的に義務付けられています。労働安全衛生法第66条によると、事業者は労働者に対して医師による健康診断を実施すべき義務があるとしています。この義務に違反すると、事業者である企業には労働基準監督署から勧告や指導、あるいは50万円以下の罰金が科される場合があります。この処罰については、労働安全衛生法第120条の1に記載されています。

企業に義務付けられている一般健康診断は以下の通りです。

健康診断の種類 対象となる労働者 実施時期
雇入れ時の健康診断 常時使用する労働者 雇入れの際
定期健康診断 常時使用する労働者(特定業務従事者を除く) 1年以内ごとに1
特定業務従事者の健康診断 労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者 左記業務への配置替えの際、6月以内ごとに1
海外派遣労働者の健康診断 海外に6ヶ月以上派遣する労働者 海外に6月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便 事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者 雇入れの際、配置替えの際

ここでいう「雇入れ時の健康診断」とは、入社時の健康状態を把握し、業務に支障がないかどうか健康診断の結果に基づいて確認するためのものであり、採用選考時に義務付けられたものではなく採否判定に使用するものでもありません。
採用選考時に健康診断の結果を提出することは、実際の募集内容と無関係の部分で応募者の情報を把握することとなり、応募者の適性や能力と本情報を総合的に判断することは就職差別につながる可能性があるとされています。したがって、労働契約が成立した内定者に対して、健康診断の結果を要因とした内定取り消しなど不採用と通知することはできません。選考時における健康診断の結果の提出についても、本当に必要かどうか慎重に確認し、必要と判断した場合は提出する項目を限定するなど十分に考慮した上で実施しましょう。

また、「常時使用する労働者」の対象範囲は、正規雇用者の他に、非正規雇用者であっても勤務期間が1年以上経過している場合や、1週間の所定労働時間が正規雇用者の3/4以上の時間であれば対象になります。なお、従業員数が50名以上の場合は、「定期健康診断結果報告書」を所轄の労働基準監督署へ提出が必要です。

生産性の向上につながる

企業は法令順守のために健康診断を実施するわけではなく、従業員のプレゼンティーズム(英語:Presenteeism)を防ぎ、生産性を高めるためです。プレゼンティーズムとは「出勤しているにも関わらず、心身の不調で労働意欲、集中力が低下し、本来発揮されるべき職務遂行能力が低下している状態」のことです。東京大学の調査によると、従業員の健康に関するコストのうちプレゼンティーズムが占める割合は77.9%にものぼるといわれています。つまり、定期健康診断を実施して従業員が全員受診し、その結果から企業が働きかけることで従業員の不調を未然に防ぐことができれば、1人ひとりのパフォーマンスを高めて生産性を向上させることができ、プレゼンティーズムに関連したコスト削減にもつながります。

健康経営に欠かせない

健康経営とは、「従業員の健康を経営課題としてとらえ、戦略的に実践を図ることで従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上を目指す経営手法」と定義されます。この点において、従業員の健康維持や増進のためにも健康診断の実施と受診が必須であることはいうまでもないでしょう。冒頭にも記述したとおり、「健康経営銘柄2022選定及び健康経営優良法人2022(大規模法人部門)認定要件」「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」には、「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」が挙げられており、その中には「従業員の健康診断の実施(受診率100%)」が含まれていました。

 

健康診断の必要性(従業員)

健康診断の診察を受ける従業員

前述のとおり、企業は必ず定期的に健康診断を実施し、従業員は受診が必要ですが、企業から強制的に受診を促されて「やらされ感」だけで受診していないでしょうか。ここでは、従業員にとって健康診断が必要な理由について説明します。

受診しないと懲戒の対象となる場合がある

従業員の中には業務量が多いため受診する時間がないという人や、異常が見つかった場合に保健指導を受けたくないという理由で健康診断の受診を拒否しようとする人もいます。上述したように事業者には労働者に健康診断を受診させる義務があり、労働者側にも労働安全衛生法第66条に基づき健康診断の受診義務が課せられています。また、健康診断は保険適用外です。企業が受診費用を全額負担し従業員に対して無料で受診の機会を提供してくれていますので必ず受診しましょう。しかし、健康診断の受診義務については企業とは異なり個人に対して法的な罰則はありませんが、企業として安全配慮義務違反に相当するため、日ごろから従業員の健康診断に対する意識を高めたり、健康診断を受診する期日を設けたりするなどして受診率の向上に努めましょう。再三の勧告にかかわらず受診を拒否する場合は、就業規則等の定めによって懲戒処分の対象とすることができますので、従業員は定期健康診断を必ず受診しなければならないという認識と従業員への周知徹底をおこないましょう。

ウェルビーイングにつながる

「ウェルビーイング(英語:Well-Being)」とは、WHO(世界保健機関)によると「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義されています。従業員がこのような状態を維持するためには、病気になった場合のケアだけでなく定期的な健康診断によって健康状態をモニタリングすることが必要です。よって、健康診断の実施は、世の中や働き方の変化にともない、たとえ自身が健康に見えても、身体の隅から隅まですべて確認することで思わぬ異常の早期発見ができ、症状の進行を抑制して将来的な重症化を防ぐことも目的としています。

 

健康診断の内容

健康診断を実施するイメージ

健康診断の対象者

健康診断の受診対象者は、パートを含む週30時間以上働く労働者で、かかる費用は原則として企業が負担します。なお、派遣社員は労働契約関係にある派遣元企業である派遣会社が受診義務を負います。

健康診断の実施項目

前述のとおり、事業者である企業には一般健康診断の実施が義務付けられており、そのうち「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」の検査項目は以下の通りです。

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(赤血球数、血色素量)
7 肝機能検査(ASTALT、γ-GTP
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査(安静時心電図検査)

以上の検査項目のうち、特に注目すべき項目の基準範囲については以下で説明します。ただし、基準範囲や単位、検査方法は異なることもありますのでご注意ください。

3 身長、体重、胸囲、視力及び聴力の検査

BMI=(体重kg)÷(身長m)÷(身長m)で計算され、正常値は18.524.9です。

視力は、裸眼でどこまで見えるか確認し、眼鏡やコンタクトレンズを併用でも確認します。

聴力は、1000Hz(低音域)と4000Hz(高音域)の聴き分けを確認します。

5 血圧の測定
正常基準値は血管収縮期(高血圧)が129mmHg以下、血管拡張期(低血圧)は84mmHg以下です。
6 貧血検査(赤血球数、血色素量)
血液中の血色素量(ヘモグロビン量)の正常基準範囲は男性13.116.3g/dL、女性12.114.5g/dLです。
7 肝機能検査(ASTALT、γ-GTP

AST(GOT)、ALT(GPT)とは、アミノ酸をつくるのに必要な酵素であり、肝臓に多く含まれます。正常基準値は30U/L以下です。

γ-GTPも肝臓に含まれる酵素で、正常基準値は50U/L以下です。

これらの数値がともに高いときは、肝炎や肝硬変などが疑われます。

8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)

LDLコレステロールとは悪玉コレステロールとも呼ばれ、高値になると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞などの心臓疾患や脳梗塞などの脳疾患につながるリスクが高まります。正常基準範囲は60119mg/dLです。

HDLコレステロールとは善玉コレステロールとも呼ばれ、悪玉コレステロールを運び出してくれます。正常基準値は40mg/dL以上です。

トリグリセライドとは中性脂肪のことで、エネルギー源として体に蓄えられている脂質ですが、増加しすぎると動脈硬化から心筋梗塞などの心臓疾患や脳梗塞などの脳疾患につながるリスクが高まります。正常基準範囲は30149mg/dLです。

HDLコレステロールとトリグリセライドの数値は、脂質異常症(メタボリックシンドローム)の診断基準にも使用されます。

9 血糖検査

血糖検査では空腹時血糖により糖尿病の有無を調べます。正常基準値は99mg/dL以下です。

ただ、初期の糖尿病は食後に血糖が上昇することが特徴のため、空腹時血糖だけでなく、HbA1cを合わせて測定することで正確な判断が可能になります。HbA1cとはヘモグロビンとブドウ糖が結合したもので、採血前約1ヶ月間の血糖値の状況がわかります。正常基準値は5.5%以下です。

10 尿検査
尿検査では尿中に蛋白が含まれているか検査されます。陽性(+)の場合、腎臓障害が疑われますが、一時的な疲労などが原因の場合もあります。

健康診断の結果の見方

健康診断は、受診後の結果に対するアクションが重要です。ここでは、健康診断の各項目に関する判定について一例を示します。

A:異常なし 今回の検査において異常は認められませんでした。しかし、今後もずっとその状態が続くことを保証するものではありませんので、維持するためのアクションを起こしましょう。
B:軽度の異常 この場合の異常は病気であることを意味してはいませんので、心配せずに日常生活を送れますが、自覚症状があれば医師の診療を受診しましょう。
C:要経過観察 一定期間経過後に再検査を受け、その変化を観察することで異常かどうかを判断します。
D2:要精密検査 異常所見が見られるため、医療機関で詳しい検査が必要です。
D1:要医療 治療が必要なため、医師と相談してください。
E:治療中 治療を継続してください。

参照元:ウェルネス・コミュニケーションズ株式会社 健康診断の二次検査とは?受診勧奨や費用負担の必要はある?

 

健康診断の結果に対して企業と従業員がすべきこと

厚生労働省のイメージ

ここまでで、健康診断を受診すべき理由と、健康診断の結果における項目や判定の内容について紹介しました。ここでは、健康診断の結果から起こすアクションについて、企業と従業員それぞれの視点から説明します。

企業側がすべきこと

検査結果を従業員に通知してデータを保管

労働安全衛生法第66条の6に基づき、検査結果は所見の記載有無にかかわらず企業から受診者全員へ文書を作成し、封筒に入れて通知します。また、健康診断の結果は個人情報であるため、紛失しないように慎重に取り扱わなければなりません。健康診断の結果は、書面もしくは電磁データで保存します。保存期間は5年間です。

 

実施報告書を所轄労働基準監督署へ提出

企業は、健康診断を実施した場合に、健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署に遅滞なく提出しなければなりません。
提出用の各種健康診断結果報告書については、厚生労働省のホームページからご確認ください。

 

医師の意見を基に従業員の働き方を精査

労働安全衛生法第66条の4に基づき、健康診断の受診結果で異常の所見がみられる従業員がいる場合、企業は就業上の措置について3ヶ月以内に医師の意見を聴かなければなりません。もし、健康診断の結果のみでは情報が不十分であれば、従業員との面談の機会を提供することが必要です。そして、労働安全衛生法第66条の5に基づき、企業は医師の意見を勘案し、必要に応じて就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮や、交替制勤務の場合は深夜業の回数を減少して日中勤務への転換などの措置を講ずる必要があります。
意見を聴く医師は産業医ですが、50人未満の事業場は産業医の選任義務がないため地方産業保健センターの相談窓口などを活用しましょう。もし、企業が医師の意見や勧告を無視して従業員の健康状態が悪化した場合は、安全配慮義務違反になる可能性もあるため、適切な措置を遅らせずに講じる必要があります。

従業員がすべきこと

健康診断の結果に異常がみられた場合

実際のところ、企業から二次検査(再検査)の受診を勧められた場合でも、従業員に受診義務はありません。そのため、二次検査は従業員の裁量にゆだねられることになり、業務が忙しい場合は後回しにされがちで、そのまま放置されることもあります。しかし、早期発見は早期治療や症状進行を抑制する機会ですので、健康診断の結果で指摘を受けた項目に対して極力は企業の促すとおりに日数を遅らせず二次検査を受診しましょう。

 

健康診断の結果に異常所見がみられなかった場合

たとえ異常所見がなくても、健康診断の結果は年齢とともに変化する体調に注目し、生活習慣を改善するための貴重な機会です。健診結果はファイルにとじるなどして、経年変化を確認しましょう。また、検査数値の原因を自分なりに振り返り、良い生活習慣は継続するようにします。肥満傾向にあるようなら、運動を生活習慣に取り入れるのも大切です。健康診断の結果から気づきが発見できたときに行動することが重要で、タイミングに早い遅いということはありません。

 

まとめ

今回は、健康診断の必要性から健康診断の項目、判定基準の説明と、実施後に企業や従業員がすべきことについて紹介しました。健康診断の結果からわかることはたくさんあります。それだけ、データが豊富であるということは、判定基準が項目ごとにバラバラであるということでもあり、すべて同じではない結果の入力やデータ管理などを含めて、担当者の業務はどれも煩雑になりがちということもおわかりいただけたと思います。このような負担軽減のためには、アウトソーシングを検討するのも一つの方法といえます。人生100年時代といわれている現在、就労年齢も引き上がっていますので、健康で長く働き続けるためにも企業は健康経営の基本でもある健康診断の受診率100%へ向けて、受診促進の周知と結果に対するフォロー体制を整えましょう。

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健康経営何から始めたら良いの?
とお困りの企業担当者の方へ

恒常的な働き手不足など、社会を取り巻く環境が大きく変化していく中、企業は従業員の健康管理を組織単位で個々の管理またはケアをしていくことが重要です。
 
改めて「企業は従業員に支えられている」「従業員の健康が企業の存続に影響する」といった考え方を再認識し、従業員の健康管理は「経営課題」として捉える必要性があります。
 
しかし「健康経営に取り組みたいけど時間とマンパワーがない」「なにから取り組めば良いのかが分からない」「健康経営銘柄も選定項目がありすぎて、一からやるのがめんどう」という企業の方は、ぜひ一度弊社にご相談してください。健康経営銘柄を取得した弊社がサポートをします。

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