ワークライフバランス

労使協定とは?労働基準監督へ届出が必要な種類など基礎知識についてわかりやすく解説

契約や協定を締結した企業と従業員

時間外労働などを労働者に科すときに密接に関わってくる労使協定。社員を指す労働者と会社を指す使用者(会社)との合意によって締結される協定ですが、どのような内容なのか、労働契約や就業規則となにが異なるのか把握していないという人事総務部門の担当者も多いでしょう。

今回は、労使協定についてわかりやすく解説します。労使協定の種類によっては労働基準監督署に届出が必要なものもあり、労使協定を結んでからでないと作成できない就業規則の項目もあります。違反すると罰則が科されますので締結する内容について届出の要否を必ず確認しておきましょう。また、労使協定をスムーズに締結できないときのおすすめ方法もご紹介していますので、あわせてチェックしてみてください。

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労使協定とは

就業規則などの社内ルールを策定している人事部門の従業員

労使協定とは労働者と使用者、つまり社員と会社との間で交わされる協定のことです。労働基準法には「労使協定」という言葉は書かれていないのですが、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定(労働基準法第36条より引用)」という文言を一般的に「労使協定」としています。

適用範囲が定められていない限りはその会社で働く全社員に適用される労使協定は、国が定めた労働基準法と現場でおこなわれている仕事の実情との差を埋めるために有効です。例えば、労働基準法では認められていない時間外労働や休日出勤などを会社が社員へおこなって欲しい場合、時間外労働や休日出勤を認める内容の労使協定を労働者側と結んでいれば例外的に認められます。会社の仕事内容や状況などによってどのような規定が必要かは変わりますので、労使協定によって定められている規定は会社ごとに異なるのが特徴です。

ただし、労働者側が同意すればどんな内容の協定でも良いというわけではなく、労働基準法における14項目のみ認められているので注意が必要です。それぞれ協定締結までの手続きなどが細かく定められていますが、どれも「書面による協定」という部分が共通しています。

「書面による労働者と使用者間の協定」には、労使協定以外にも労働協約や労働契約などがありますが、それぞれに法的効力の違いなどの差異があるのでしっかりと把握しておくことが重要です。

以下では労働協約、就業規則、労働契約、労働基準法について、労使協定との違いを説明します。

労使協定と労働協約の違い

労使協定も労働協約も、労働者の代表が使用者である会社と話し合って決めるという点では違いがありません。しかし、それ以外で4つの大きな違いがありますので、以下を確認しておきましょう。

 

1. 規律する機能

労使協定は労働基準法の例外を認めるためにできたものですので、協定自体に規律する機能はありません。ただ「労働基準法では認められていないけれど、罰則を受けることがない」という免罰効果が得られるだけです。それに対して労働協約は、国が定めた労働基準法だけではフォローしきれない部分を補うものとして有効で、ここで定められた労働条件に従って仕事を行うという規律性があります。

 

2. 人数要件

労使協定も労働協約も、どちらも締結の際には「労働者側の代表者」との合意が必要ですが、労使協定の場合「労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数の中から投票や挙手などで選ばれた代表者」であるのに対し、労働協約の場合は労働者の過半数に満たない労働組合であっても締結が可能です。

 

3. 効力の範囲

労使協定の効力は適用範囲が定められていない限りその会社で働く全労働者に及びますが、労働協約の効力は締結した労働組合の組合員にのみ発揮されます。つまり、労働協約の効力を受ける労働者と受けない労働者が同じ会社内に存在することになります。ただし、締結した労働組合に事業場の4分の3以上の労働者が属している場合は、組合員でなくても労働協約の効力を受けることになります。

 

4. 有効期限

労使協定の有効期限には法律上の制限がないため、その会社によって定める期限は異なります。ただし、一般的には1年間と定めている会社が多い傾向にあります。それに対して、労働協約の場合は「締結の日から上限3年間」と定められています。

労使協定と就業規則の違い

就業時間などに言及する労使協定の規定は、就業規則だけでも賄えるのではないかと思う方もいるでしょう。しかし、この2つには効力やそもそもの作り方が異なりますので、違いを把握しておくことは重要です。

そもそも就業規則とは10人以上の労働者がいる会社に作成が義務づけられているもので、労働者への意見聴取の義務があるとは言え、会社側が一方的に作成・変更できるものです。労働者に対しての規範的な効力を持ち、労働者は就業規則で定められている規定に準じなければならないという民事的な権利義務が発生します。

それに対して労使協定は、労働者と会社の合意の元に締結するものです。労働基準法で認められていないことに対しての免罰効果が得られますが権利義務は発生しません。そのため、就業規則を作成してからその規則に基づいて労使協定を締結するというケースが多々あります。

労使協定と労働契約の違い

働く上で最も身近に感じるものが就業規則と労働契約という方は人事総務部門の担当者はもちろん、部門外の社員にも多いことでしょう。就業規則との違いについては上で説明しましたが、労働契約も労使協定とは大きな違いがあります。それは、締結の目的です。

労使協定はあくまで「免罰」という部分に特化していることに対し、労働契約の目的は「労働提供に対しての賃金支払いの約束」です。労働契約は労働者個人と会社間で締結される契約であり、労働者1人ひとり内容が異なっていても問題ありません。そして、労働者にだけ影響を及ぼす労使協定とは違い、賃金の支払いなどの項目において会社にも権利義務が発生します。労働契約は、労働者・使用者(会社)どちらにも民事的効力を発揮するのが特徴と言って良いでしょう。

労使協定と労働基準法の違い

労働基準法は国によって定められている法律です。労働者の保護を目的として、雇用する上での労働条件の最低基準などが定められています。この基準を満たさない労働条件で雇用した場合は法律違反となり、罰金や懲役刑が付くこともあります。労働者と会社が対等な立場で契約できるように定められているため、労働者・使用者(会社)どちらにも効力を発揮するのが特徴です。

このような特徴がある労働基準法に定められた労働条件に例外を設けられるのが労使協定です。労使協定を締結していれば、労働基準法で定められている労働条件から逸脱していても認められる免罰効果が得られます。つまり、労働基準法の例外を認めるのが労使協定なのです。

労使協定の位置づけと優先順位

労働基準監督に届け出が必要な種類とは

前述のとおり、労使協定には民事的な効力はありません。そこで気になるのが、労使協定はどのような位置づけで優先順位はどの位なのか、ということでしょう。ここでは、労使協定・労働協約・就業規則・労働契約・労働基準法の位置づけと優先順位を説明します。

労使協定は労働者に効果を強制するものではない

労働協約・就業規則・労働契約・労働基準法の優先順位は以下のとおりです。

 

労働基準法 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約

 

労働基準法は国が定めた法律のために効力が最も強く、全ての規則・契約・協定に効力を及ぼします。つまり、就業規則や労働契約に労働基準法に準じない内容が書かれていたとしてもそれは無効となります。ただし、就業規則については会社側が一方的に作成したものなのに対して労働契約は労働者と使用者(会社)の間で結ばれた契約のため、就業規則に書かれている労働条件以上のことが労働契約に書かれている場合は労働者も合意の上だと判断されてその部分は無効になりません。

上記の優先順位に含まれない労使協定は、実は優先順位として図れない位置づけにあります。労働者と使用者(会社)の間で結ばれた「約束事」という認識にあたるため、民事的な効力を発揮しません。「労働基準法で認められていない労働条件であっても、労使協定を結んでおけば法律で罰せられることはない」という免罰効果が得られるだけですので、労使協定を結んでいたとしても時間外労働などの指示に逆らうことは可能である上になんの罰則もありません。そのため、もし時間外労働などの労働条件に民事的な効力を付けたい場合は、労使協定を結んだ上で就業規則や個別の契約書に具体的な労働条件や労働者の処遇を規定する必要があります。

選択型福利厚生を導入するという事例が増加傾向

会社側としては労働基準法に縛られずに労働条件を付け加えられる労使協定を結んでおきたいと思うこともあるでしょう。しかし、労働組合との協議で労使協定を受け入れてもらえないことはしばしばあります。これを解決するために増えているのが選択型福利厚生制度の仕組みを持つカフェテリアプランの導入です。

カフェテリアプランとは、会社が様々な福利厚生制度を設定してその中から社員個人が自分に合った福利厚生メニューを選択する福利厚生制度のことです。ベースとなる福利厚生制度に付加する形で必要なときに必要なものを選択できるのが特徴です。

その仕組みはとても簡単で、まず会社が労働者に有効期限付きのポイントを毎年付与し、労働者は自分の所有ポイントの範囲内で福利厚生制度を選択します。福利厚生制度を必要とする人しか制度を利用しないので、会社全体の福利厚生費のコストダウンができるというメリットと共に、必要な制度を受けられるという労働者側のメリットも得られます。

カフェテリアプランは、労使協定を締結する際にも有効な手段です。労使協定を結ぶ際はベースアップなど労働者側のメリットを労働組合から要求されることが多いのですが、会社が労働組合からの要望を飲めない場合は賃金ではなく福利厚生でそのメリットを賄おうというわけです。

労使協定の種類と提出の有無

東京の労働局(労働基準監督署)の所在地

労使協定には大きくわけて2つの種類があり、労働基準監督署に届出が必要なものもあります。もし届出を怠った場合「届出義務違反」となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があるので、必ず確認しておきましょう。

労働基準監督署に届出が必要な労使協定の種類

労働基準監督署に届出が必要なのは、以下7つの労使協定を結んだ場合です。それぞれどのような協定なのか説明します。

 

1. 貯蓄金管理協定届

使用者である会社が労働者の貯金を管理する委託を受けた場合に届け出なければいけない協定が貯蓄金管理協定届です。また、この協定を結んだ場合は、毎年4月30日までに3月31日以前1年間の預金管理状況を報告する義務があります。

 

2. 1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定届

1ヶ月で平均したときに、1週間当たりの労働時間が労働基準法で定められた労働時間を超えないような労働条件を定めた協定を結んだときに届け出なければいけません。つまり、労働基準法に違反する時間外労働があったとしても、1ヶ月で平均したときに1週間の労働時間が基準値におさまっていればOKということです。

 

3. 1年単位の変形労働時間制に関する協定届

平均する期間を1年以内とした協定を結んだときに届け出なければいけないのがこの協定届です。1週間の労働時間が平均して40時間を超えなければ問題なしとされています。

 

4. 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届

この協定届は、週間単位で毎日の労働時間を事前に労働者に通知するという前提で、1日に10時間まで労働させることが可能になる協定を結んだときに届け出なければいけません。

 

5. 時間外労働・休日労働に関する協定届

時間外労働・休日労働に関する協定届は、労働基準法に定められた労働時間を延長して労働させることができる協定を結んだ際に届け出なければいけないものです。休日出勤をさせる際にもこの労使協定の届出が必要になります。

 

6. 事業場外労働に関する協定届

いわゆる「みなし残業」を認める協定を結んだ際に必要となる届出です。事業場外での労働で労働時間の算定が難しい場合に適用されます。ただし、事業場外労働が法定労働時間内におさまっている場合、届け出る必要はありません。

 

7. 専門業務型裁量労働制に関する協定届

専門性の高い仕事である場合、業務の遂行手段や遂行時間を具体的に指示できないことがあります。そのような労働時間の算定が難しい場合、労働時間を労使協定で定めた時間であるとみなすため届出が必要になります。

労働基準監督署に届出が不要な労使協定の種類

労働基準監督署に届出が必要ないのは以下の7つです。どのような協定か参考までにそれぞれを説明します。

 

1. 賃金控除協定

原則として賃金は全額支払う必要がありますが、この協定を結んでいれば財形貯蓄などを賃金から控除することが可能になります。

 

2. フレックスタイム制

労使協定を結べばフレックスタイム制を導入することが可能です。

 

3. 休憩時間の一斉付与原則の解除

基本的に一般の業種においては休憩時間が定められていますので皆一斉に休憩を取りますが、この協定を結んでいれば一斉に休憩を取らなくても良くなります。

 

4. 割増賃金の割増率引き上げ分に相当する有給代替休暇を付与する場合の労使協定

1ヶ月の時間外労働時間が60時間を超えた場合、50%の割増賃金を支払う必要がありますが、この協定を結んでいれば割増賃金の代わりに有給を付与することができます。

 

5. 年次有給休暇の分割付与を行う場合

この協定を締結していれば、1年に5日分を上限に時間単位の有休取得が可能になります。

 

6. 年休日の賃金を標準報酬月額で支払う労使協定

専門性の高い業務など技術力の必要な業務に限り適用される協定です。

 

7. 育児介護休業法に関する協定

育児休業や介護休業が取得できない人に対して有給の付与などを行うことができます。

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代表的な36協定に違反すると罰則が科せられる

代表的な36協定に違反すると罰則

労使協定の中で最も代表的なのが「36(サブロク)協定」です。多くの企業が締結している36協定はどのようなものなのか確認しましょう。

36協定とは

36協定とは、労働基準法で定められた労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働を科す場合に必要な協定のことです。法定労働時間を超える時間外労働を労働者にさせたい場合は、36協定の届出・対応が必須になります。

36協定を締結しても上限は定められており、時間外労働が月45時間・年間360時間が原則です。なお、特別条項付きの36協定を結べば1年のうち6ヶ月は上限を超える時間を有効時間となり、残業させることが可能です。ただし、特別条項は納期が差し迫っていたり不測の事態が起こったりなど緊急性の高い一時的な業務があった場合にのみ認められます。日常的な業務を行っている際には認められませんので注意しましょう。

36協定に違反すると?

36協定に記載されている労働限度時間を超えて労働を行った場合や、特別条項付きの36協定を結んだ場合において7ヶ月以上の上限を超えた時間外労働を行った場合は、協定違反となり会社側が処罰されます。

36協定違反の場合6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があり、使用者(会社)が違反を黙秘していた場合にも30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。36協定違反になると懲役や罰金などの処罰に加え、労働者からの信頼を失う結果を招きかねません。しっかりと労働時間を管理監督することが重要です。

【アンケート】従業員の健康に対する意識理解していますか? 

効果的な健康経営を実施するためには、現状を把握したうえで、自社に適した取組みを検討することが重要です。ただ、なにから実施すればいいのかわからない方が多いのではないでしょうか?自社の現状把握はアンケートを活用しましょう。

・健康に対して持っている意識
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労使協定をスムーズに締結するには福利厚生制度の見直しを

さまざまなデバイスを使用して福利厚生の向上を実感する従業員

労使協定は民事的な効力を発揮しないとはいえ、労働者にとっても会社にとっても大変重要な協定です。会社の利益を大幅に増進させる可能性を秘めています。しかし、締結にあたっては労働組合との協議がスムーズにいかないこともあるでしょう。

そこで、今回ご紹介した選択性福利厚生制度のカフェテリアプランなど新しい福利厚生制度を会社に導入することをおすすめします。労働者側が得られるメリットを給与賃金の上昇に代わって福利厚生で補うという提案です。しかし、新しい福利厚生制度の導入・制度維持にはある程度のコストがかかる上に管理が難しくなることも考えられます。ベネフィット・ワンでは福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」をはじめとしたメニューを豊富に用意しており、コストを有効活用することができます。ベネフィット・ステーションには、パッケージ化されている基本的な福利厚生と健康支援メニューに加え、教育や研修支援など従業員の成長を促す人材育成に力を入れ、これらの利用促進サポートを備えています。ベネフィット・ステーションを導入することで、従業員はコア業務に集中できるようになり生産性の向上も期待できますので、福利厚生制度でお悩みの方はベネフィット・ステーションをご検討ください。

長時間労働の是正と共に検討すべき
福利厚生制度の拡充

多くの企業で課題となっている長時間労働の是正は、生産性向上や人材定着にも効果的です。

すでに多くの企業が取り組みを行っている中でセットとして注目されているのが、給与・福利厚生制度などの待遇面の向上です。

残業削減は従業員のプライベートを確保して仕事に対するモチベーションの向上に繋がっている一方で、残業代が減り、従業員の賃金低下が目立ってきています。

しかし、基本給を上げることは難しいので、残業代の代替策が求められます。

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