早期退職優遇制度とは?トラブルを避けスムーズに実施する方法
少子高齢化の加速により定年が徐々に引き上げられている一方で、2021年、早期退職優遇制度を実施する企業は大幅に増加しました。その背景には、企業の長期的な経営戦略が潜んでいますが、早期退職優遇制度は企業だけでなく従業員にとっても割増退職金などメリットのある制度です。
今回は、早期退職優遇制度の現状から、制度の種類や実施手順、注意点まで紹介していきます。早期退職優遇制度の概要が知りたい、具体的な実施に向けて知識を学びたいという担当者は、ぜひ参考にしてください。
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目次
早退職優遇制度の現状
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により経済は大きな打撃を受け、従業員の給与や賞与を減額するだけにとどまらず、早期退職優遇制度を実施する企業数は上半期だけで2019年1年間のそれを上回りました。これは日本だけではなく、世界的に同様の制度を実施する傾向がみられました。
東京商工リサーチが実施した「2021年(1-12月)上場企業「早期・希望退職」実施状況」の調査結果によると、早期・希望退職者募集企業は84社でした。人数を公表した企業69社によるとすでに15,892人となり、過去最多人数を記録していた2020年の93社18,635人の実績からは減少しましたが、15,000人を超えたのは2003年の16,833人以来18年ぶりで2年連続の高水準です。
一方で「2022年(1-6月)上場企業「早期・希望退職」実施状況」では、すでに25社4,515人が早期・希望退職者募集を実施したという調査結果が出ていますが、2021年の同期間は56社12,813人でしたので実施企業ベースでは56%、人数ベースでは65%と大きく減少しました。しかし、少なくとも実施する企業数も人数もコロナ以前の水準よりは増えていますので、まだそれだけ多くの企業で人員整理をおこなわなければならない状態であるということがわかります。東京商工リサーチも円安や資源高、ウクライナなど国際情勢を筆頭に建設・不動産、小売、サービス業などの内需型産業においては予断を許さない状況と分析しています。
また、近年の特徴としては、経営不振による人員整理だけでなく、今後を見据え先行的に実施する企業の増加です。
経営が立ち行かなくなった結果、早期退職優遇制度の実施を余儀なくされているというよりは、経営体力が残っているうちに人員構造の見直しを図る目的で実施するという傾向もみられます。
健康経営、うまく実践できていますか? 健康経営とは、従業員の健康管理を経営課題として戦略的に取り組む経営手法のことです。 しかし、健康経営は効果が見えにくく、担当者の負担だけが増える一方に思われがちです。 そこで、健康経営にはどのようなメリットがあるのか、特に健康経営が必要な企業の特徴を挙げ、取り組みの手順をまとめました。 健康経営銘柄や健康経営優良法人と言った顕彰制度の申請方法についても掲載していますので、理想的な健康経営を実現しましょう。
従業員が健康であれば高い集中力を保って仕事に取り組めるため、生産性が向上するというプラスのサイクルが生まれます。
早期退職優遇制度は2種類ある
早期退職優遇制度には、次の2種類が用意されています。制度が目的とするものや、従業員の退職の扱いが異なるため詳細を解説します。
早期希望退職制度
早期希望退職制度とは、人員整理や経営の安定化などを目的としており、会社側の都合によって募集をおこなう制度を指します。
早期希望退職制度は、いつでも、何人でも可能というわけではなく、募集期間や人数制限を設けられます。企業によっては、設定した人数に満たなければ達するまで募集を繰り返すケースもありますが、まったく同じ優遇内容ではなく、初回以降、徐々に優遇レベルを下げている企業が多いです。
早期希望退職制度の利用者は、会社都合による退職と扱われるため、雇用保険において「特定受給資格者」となります。退職者が特定受給資格者になれば、待機期間なく長期で失業保険の受給が可能です。
そのため退職後は、失業保険受給中に転職活動をする時間を創出できることから納得のいく再就職や転職ができたり、新たなスキルを身につける時間に充てたりすることができます。
選択定年制
選択定年制とは、会社の人事制度として設けられる制度で、会社の新陳代謝促進や従業員の新しい働き方を支援する目的があります。
選択定年制は就業規則に盛り込む必要があり、従業員は常時制度の利用が可能です。
対象者については、年齢や勤続年数によって制限されており、企業ごとにそれぞれ優遇措置が設けられています。
会社にとっては、ベテラン従業員が増えすぎた従業員構成を改善して組織の若返りが図れるメリットがあり、従業員にとっては新たなキャリアを構築するきっかけとなる制度です。
しかし、選択定年制の場合においては、自己都合による退職扱いとなるため、失業保険は受給期間が短く受給開始までも時間を要すというデメリットもあります。
早期退職優遇制度とリストラの違い
早期退職優遇制度はいわゆるリストラとは完全に同じではありません。リストラは主に整理解雇を目的として、本人の意思ではなく企業から解雇予告をされた上で職を失うことを指します。
それに対して早期退職優遇制度は福利厚生制度のひとつとして、人員整理を目的とした臨時で実施するパターンと、定年より早く退職することでその後のキャリアプランの幅を広げることを目的とした常時実施するパターンがあり、一般的には退職金を割り増ししたり再就職支援などの優遇措置を条件に従業員自らの意思で退職することに違いがあります。
早期希望退職制度の実施手順
早期希望退職制度を実施する際には、以下のような手順で進めていきます。順番に要点を確認していきましょう。
条件提示
まずは、揉め事や事件にならないようにするためにも、早期希望退職制度の条件を明確に定める必要があります。募集人数、範囲、期間、条件などの詳細を決定しましょう。
この段階までには、幹部や役職者間でコンセンサスを定めておかなければなりません。
社員からの批判や意見に対応していくためには、幹部や役職者全員が同じ方向性をもっていなければ、社内に混乱を招きます。
これらが固まった後、社員へ周知します。方法としては、文書での掲示、回覧、社内報の発行、説明会の実施などが考えられます。
希望退職者の受付・面談
早期希望退職制度の実施を掲示した後は、退職希望者の申込みを受付、面談を進めていきます。文書での掲示、説明会の実施をおこなった場合においても、個別の面談は必須だと認識しておきましょう。
その理由は、今後のトラブル回避のためには、この段階までにいかに社員に会社の経営状態への理解が得られるか、条件などを漏れなく伝えられるかという点が重要であるためです。
文書の掲示や説明会の実施でも伝えることは可能ですが、より深い理解を得るためには、希望者一人ひとりと腰を据えて向き合う時間を取るべきです。
なお、面談の担当者は、会社の経営実態を把握した幹部や役職者が望ましいでしょう。
辞令発令
退職日が決定された後、退職者へ辞令を発令します。退職者が退職届を提出、会社側が辞令を発令することで、締結されていた雇用契約は効力を失います。
辞令の交付は、可能であれば社長や幹部、役職者から直接手渡しすることをおすすめします。
その方が、人事担当者が事務的におこなうよりも、退職者も良い気持ちで会社を去ることができるでしょう。
今までの貢献に感謝の気持ちを伝え、送り出してあげましょう。
退職手続き
最後に、退職金の支給や社会保険喪失手続きなどの退職手続きや承認を進めていきます。主な手続き内容として、以下のものが挙げられます。
・離職票作成、退職者へ交付
・雇用保険被保険者資格喪失届の作成、届出
・退職者へ雇用保険証書、厚生年金保険手帳の返却
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の作成、届出
・退職者から健康保険被保険者証の受領
・退職者への貸与物の回収
・給与の清算
・退職金源泉徴収票を退職者へ交付
・給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届の提出
・人事データに退職日などを反映
早期退職優遇制度実施の注意点
早期退職優遇制度を実施する際には、あらゆるリスクを想定し十分すぎるほどの対策や運用手順で実施すべきです。過去には、退職者とトラブルに発展し裁判沙汰になったという企業の事例もあるため、安易な実施はおすすめできません。
会社の信用や資金の損失を回避するためにも、以下のポイントに注意していきましょう。
退職は会社の承諾を条件にする
早期希望退職の利用は、会社の承諾が得られることを条件とする旨をあらかじめ掲示しましょう。
しかし、いくらなんでも無条件に誰でも確実に利用できるとしてしまうと、会社側にとって必要な人材まで流出する恐れがありますので、条件を記載するなどで引き止める必要があります。
そのため、早期退職優遇制度の条件掲示の際には除外規定を設け、業務上、特に必要だと認められる社員は除く旨を記載しておきましょう。
応募条件を定める際は計画的性と具体的性を定める
早期退職優遇制度の応募条件を決定する際には、長期的な計画と具体性をもっておこないましょう。
早期退職優遇制度では、割増退職金を退職者に支払うことになります。そのため、一時的ではありますが通常より人件費が増加し、経営を圧迫することになるでしょう。
持ちこたえられる程度のコストであれば問題ありませんが、経営の安定化を図って実施した早期退職優遇制度によって経営が悪化してしまっては本末転倒です。
そのため、募集人数や退職金の割増率など、細かい部分までシミュレーションする必要があります。
守秘義務を徹底
早期退職優遇制度では、社員の退職後に起こり得るトラブルまで想定した対応が求められます。
退職者が会社のノウハウを流出させるなどのトラブルを未然に防止するため、必ず守秘義務契約を取り付けましょう。守秘義務契約を結んでいれば、万が一、退職者とトラブルに発展しても、会社の立場を守ることができます。
条件などの周知徹底
早期退職優遇制度を実施する際には、内容の周知を徹底しましょう。万が一、条件が誤認されると後々トラブルに発展しかねません。
また、早期退職優遇制度により退職が決定した社員は、あとから別の方法で退職を希望することはできない旨の周知も必要です。
例えば、数期にわけて何度か募集をかけたり、希望退職制度が複数用意されていたりする場合は、「そんな話は聞いていない」、「もっと自分に有利な条件が適用される制度があるのではないか」などといった混乱が発生する可能性があります。
そのため、希望退職優遇制度の募集工程や早期退職制度の種類などについて、徹底的に周知するようにしましょう。
早期退職優遇制度導入の際は、不要な不安をあおらないことも大切!
早期退職優遇制度の実施は、通常の退職者対応よりも慎重に進めなければなりません。今まで自社に貢献してくれた従業員に感謝と敬意を示し、送り出しましょう。
また、実施の際は自社に残る従業員に対してのケアも欠かせません。早期退職優遇制度の実施によって、自社の経営状態に対しての不安を煽り、想定外の退職者を生み出してしまう可能性もあります。
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従業員が企業担当者を介さずサービスの利用申し込みを行うため、導入後の事務作業はほとんどありません。
ぜひ、企業のイメージアップや労働環境の改善策の一つとして、福利厚生制度の検討をしましょう。