人材育成

新入社員の離職を防ぐ、採用前後で取るべき11の対策

新入社員 辞めたい

新入社員が入社後まもない期間で退職し、なかなか人材が定着しない、そんな問題に頭を抱える人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
長い時間とお金をかけて採用した社員が辞めてしまうのは、会社にとって大きな損失になります。

なぜ新入社員は辞めてしまうのでしょうか。
どのような想いで退職を決意するのでしょうか。

退職理由が分かれば、事前に対策をとることも可能です。今回は新入社員の真の退職理由に迫ると共に、新入社員の定着率を高める施策についてご紹介します。

入社後に新入社員が退職を決意する5つの理由

冒頭でも述べたように、企業にとって入社した社員が短期間で辞めてしまうのは大きな痛手となります。採用費用や研修費用が無駄になるばかりか、その社員がしていた引継ぎ業務の実施についても他の社員へ負担がかかってしまいます。

また、離職率が高い組織では、社内でナレッジが蓄積されずただただ業務効率が下がり、残された社員が疲弊してしまうという問題点もあるでしょう。社員のモチベーションが下がると、退職の連鎖が加速する恐れもあります。

対外的にも、企業の担当者がすぐ変わってしまうと新たに信頼関係を築くために時間がかかるなどのデメリットも考えられます。

令和310月に公表された厚生労働省による「学歴別就職後3年以内離職率の推移」の調査結果によると、新規学卒者の1年以内の離職率は、大卒者の場合1年以内で10.6パーセント(令和2年度就職者)2年以内で21.5パーセント(平成31年度就職者)3年以内で31.2(平成30年度就職者)であることがわかりました。この数値は高卒者と短大卒者においてはさらに高くなり、中学卒から大学卒まで平均すると約18パーセントの新卒生が1年以内に退職していることがわかりました。

産業分類別では、宿泊業・飲食サービス業、次いで生活関連サービス業・娯楽業の順に離職率が高いこともわかりました。

労働時間・休日等の労働条件が悪かった

労働基準法による法定労働時間は18時間、週40時間ですが、36協定と呼ばれる労使協定を締結すれば、1か月に最長45時間まで時間外労働が可能です。

しかしながら、職種や役職によってはこの上限が免除されることもあります。さらには、サービス残業を含む長時間労働が慣習化されている、いわゆるブラック企業であることも考えられるでしょう。20072014年の会社員の口コミをもとにした調査によると、平均残業時間は月に47時間というデータもありますが、厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和3年分結果速報」では、従業員数が5人以上の事業所での所定外労働時間は月9.7時間となり、時間外労働は年々減少傾向にあるにもかかわらず、現在も前者の事例のように現在の平均を大きく上回る状況であればやはり退職を決意してしまうでしょう。

このように、ワークライフバランスが重視できない環境では、長年に渡って勤務することが身体的・精神的に困難であることで現職を去り、転職を決意する人がいると考えられます。

予想以上に給与等収入が少なかった

給与などの条件も仕事を選ぶ際には重要な要素となります。

入社時に給与額について合意していたとしても全く昇給がなかった、残業代が一部しか出なかった、業績が悪く賞与の支給がなかったなど、入社後に収入面の不満が出る可能性もあります。

厚生労働省が令和4年に発表した「令和3年賃金構造基本統計調査の概況」によると、宿泊業、飲食サービス業の平均賃金は月25.7万円で産業別の比較の中で最も低い数値でした。

このように、労働時間に見合わない報酬である場合に離職率が高くなる傾向があると考えられます。

職場の人間関係が好ましくなかった

上司や同僚との人間関係が好ましくないと仕事に行くことがストレスとなり、業務に集中することも難しくなる可能性があります。

本来であれば困ったときに相談をする立場である上司とのコミュニケーションが円滑でない場合や、仕事の考え方や方針が大きく異なる場合などが考えられます。また、部署やチームの協力体制がない、適切な情報共有がされないという職場環境では、業務に支障をきたすこともあるでしょう。

最悪の場合、パワハラやいじめなどの問題が関連する恐れもあり、この場合は早期退職につながりかねません。一緒に働くメンバーの存在は職場環境に大きく影響しますが、入社するまでは雰囲気をつかむことが困難であることも、入社後「こんなはずではなかった」と感じる原因のひとつではないでしょうか。

仕事の内容に興味を持てなかった

仕事内容にギャップを感じることが大きな離職理由と考える場合もあります。

入社前に描いていた仕事内容と、実際に入社してから担当する業務が異なる場合です。入社前の情報収集が不足していたという従業員側の問題も考えられますが、採用する企業側も十分に情報開示をしているか気を付ける必要があるでしょう。

例えば、1日の仕事の流れや業務分担の方法など、細かいことまで確認することが大切です。同じ職種名であっても、企業の規模や上司の方針などによって実際の仕事内容が大きく異なることが考えられることが背景に挙げられます。

能力・個性・資格を活かせなかった

自分の個性が活かせないと感じて退職する人は、企業文化や上司の仕事の進め方が合わない、自分が成長できる環境ではないと感じている可能性があります。

企業文化は企業規模や業種などによっても異なり、入社するまでは把握することが難しいポイントでもあります。また、自分が得意な分野を活かして活躍したいと入社しても、希望の部署に配属されなかったなど従業員が本来持っている能力やスキルが活用できていないということも考えられます。能力や資質を活かせなければ、やりがいを感じながら仕事に取り組むことは難しいでしょう。そうなると、従業員は他社に活躍の場を求めて退職してしまう可能性が高まります。

採用前後で企業が必ず取るべき対策

この章では、採用のミスマッチをなくすことを目的とし、入社前に事前に行いたい対策と入社後にも必ず押さえておきたい対策について解説します。

採用のミスマッチをなくす!入社前に事前に行いたいこと

自社を深く理解してもらう

入社後に新入社員が思い描いていた会社や仕事内容とのギャップを感じてしまうという問題を防ぐためには、情報発信の充実が欠かせません。

まずは入社前のコツとして、会社説明会の資料、会社案内、ホームページの採用ページ、メディア掲載記事、動画、出版書籍など、会社の特徴や雰囲気、仕事内容がより正しく伝わるようなツールを準備して理解してもらうことです。

会社のミッションや社長の信念など、経営者の気持ちが伝わる工夫をすることで、より会社の進むべき方向が明確に発信できるでしょう。

 

入社前に社員との懇親会を開く

会社からの情報発信と並行して実施すべきことは、現場の雰囲気をつかんでもらう取り組みです。配属先の社員と懇親会を開くなどして、ざっくばらんに会社について質問してもらうことで、面接では伝わりきれなかった現場の生の声を届けることができます。

一緒に働くメンバーと入社前に会うことで、入社後に働く姿をイメージしやすくなります。また、人事担当者では答えられない細かい業務に関する質問など、仕事をする上で不安に思っていることがあれば入社前に解消してもらうことが重要です。たとえオンラインであってもコミュニケーションを図る機会には変わりなく、むしろデジタル世代の若者は直接会うよりハードルが低いために参加しやすいと感じ、DXが推進されている会社というイメージも持たれておすすめです。ただし、注意点として、夜間遅くに実施したり、長時間にわたる懇親会は控えましょう。

 

インターンシップ制度を導入する

新卒採用時に大変効果的な対策として、インターンシップ制度があります。実際に業務を体験してもらうことで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。

企業によっては選考過程の一部として機能させるケースもあります。期間も1日から数ヶ月などの単位で業務に携わってもらい、その後、内定を出すこともあります。

短期間でもOJTなどの教育機会を設けることで仕事ぶりや周囲とのマッチングを確認ができるため、双方にとって有効な手段と考えられます。学生にとっては、初めての企業での就業体験となるため、与えられた課題や役割の中でわからないことを先輩に質問しながら業務のイメージを把握することが可能です。

 

マネジメントや社内イベント、入社後にも万全なるフォロー体制を整える

社内イベントや交流会を企画する

新入社員のフォローアップは入社したら終わりではなく、入社後のケアも重要です。

入社してからも、しばらくは社内の人間関係や企業文化などを掴むために時間がかかります。社内イベントや交流会を企画することで、他部署の社員ともコミュニケーションを図って親睦を深めながら会社の特徴や業務内容をより理解してもらうことができると期待できます。

入社日が近い社員同士での同期会で悩みを共有したり、全社合同のパーティーなどで役員や管理職の名前と顔を覚えたりすることで、業務が円滑に進むこともあるでしょう。人事部門は現場に丸投げするのではなく、さまざまな単位での交流会を積極的に企画して参加を呼び掛けることが大切です。こちらも懇親会と同様にオンラインで実施する方法も効果的です。

 

メンター制度を導入する

1人の上司が抱える部下の人数が多い場合や、プレイングマネージャーである場合などに有効なのがメンター制度です。

新入社員1人につきに1人、メンター役の先輩をつけることで、日々の業務から悩み事の相談まで対応します。具体的には、業務以外の社内手続きや社内のルール、美味しいランチのお店など、上司に聞くまででもないことや、業務を遂行する上でちょっとした疑問なども聞きやすいので、特に新卒採用や若手社員を採用する場合に有効と考えられます。また、在宅勤務が中心の場合や在宅勤務とオフィス勤務を併用するハイブリッドワークの場合で、オンラインでのコミュニケーションが希薄な場合の対応もメンターがフォローして新入社員の孤立を防ぐことで離職防止の効果があります。

 

マネージャーのマネジメントスキルを向上させる

新入社員の人材育成責任者は上司です。新入社員と適切なコミュニケーションをとらない、放置するなどといった行為はマネージャーとして失格です。

逆に、厳しすぎる指導やマイクロマネジメントをすることもよくありません。社員にとって直属の上司がどのようなタイプかということは、仕事をする上で重要な要素になり得ます。的確な業務指示とフォローアップをするマネジメントスキルが求められますので、必要に応じてマネージャーのマネジメント研修をするなどの対策も必要でしょう。

 

適正な労働時間管理をする

マネージャーの仕事のひとつでもあるのが、適正な労働時間管理です。

規定を超えた残業時間になっていないか、長時間労働や休日出勤をしていないかなどを管理し、必要であれば業務分担を見直したり、チーム編成を組み直したりすることが求められます。タイミングよく人員計画を見直し、繁忙期が来る前に補充人員の採用を開始するなどの対応が必要です。

もちろん、人事部門は現場と協力して全社的な労働時間管理と適正な人員計画の策定に努めなければなりません。

 

人事評価制度を整備する

調査結果にあるように、給与等が低いことは離職理由のひとつになります。

仕事を頑張っても認められないようでは、長いビジネス社人生で能力を発揮し続けることは難しいでしょう。そのためには適正な人事評価制度の運用が重要です。

仮に昇給ができないケースでも会社業績や方針に対する情報やその評価内容の意味について正しく開示し、社員の評価内容が納得感のあるものであれば、社員の不満は減少すると考えられます。上司は普段から社員との信頼関係を築き、的確な評価のフィードバックを行うことが重要です。また、目先の業務目標だけでなく、社員の将来におけるキャリアプランの実現に向けて一緒に取り組む姿勢が求められます。

 

コンプライアンス通報窓口を設ける

社内の不正やパワハラ等の問題は社員のモチベーションを著しく下げ、退職に追い込む大きな原因になります。特に、新入社員は自分がされていることがハラスメントに相当するかどうか判断も容易ではない上に、ハラスメントに遭っていても自分の立場からして言い出せません。また、明らかな不正行為であっても自分が加担しているかどうかの判断もしにくい上に、相手が上司や先輩であれば断りにくいためやむを得ず加担してしまう可能性もあります。

コンプライアンス違反を防ぐためには全社的にも不正が起こらないような対策を講じ、社内コミュニケーションを活性化させて風通しの良い職場環境を整える必要があります。このままコンプライアンス違反を放置しておくと会社の存続にも関わるリスクになり得ますので、早期解決のためにも匿名で通報できる窓口を設けることが望ましいでしょう。

 

ツールを活用して離職防止策を講じる

長引くコロナ禍で在宅勤務とオフィス勤務を掛け合わせたハイブリッドワークを実施している企業が増加傾向にありますが、上司は部下の在宅勤務中の業務への取り組みが正確に把握できないことやコミュニケーションが円滑に図れないという課題が発生しています。特に、新入社員ともなると社内の人とのつながりもまだ少ないため、コミュニケーション不足からエンゲージメントが低下し、離職を検討してしまうケースもあります。

このような状態を防ぐためにも、ストレスチェックや健康診断の結果、スキルや能力など従業員に関するあらゆるデータはあらかじめ一元管理しておき、いつでも可視化できる環境であれば退職の予兆を早期発見して離職防止につなげることも可能です。

まとめ

新入社員が辞めたいと感じる理由は、待遇面や雇用条件の不満、人間関係の不満、仕事内容に関する不満などさまざまな種類があります。

また、新人でなくても社員の定着率を高めるためには、企業の経営者や人事部門がこれらの不安要素を取り除き、社員が安心して業務に集中できる職場環境を整える必要があります。

そのためには、社内コミュニケーションを活性化させて人間関係を円滑にする土台を作ることや、人事制度を整えて業績や努力が報われるような昇給・昇格のシステムを運用することが求められます。

社員の定着率を高めることは、企業文化の醸成や生産性向上にもつながる重要なポイントです。内定者と新入社員のフォローアップを充実させ、採用のミスマッチが起こらないような採用活動が入社後のミスマッチや離職防止への成功の近道です。

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