看護師の約8割が退職を希望?人材不足の現状と解決策

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看護師の人材不足は、深刻化しています。

厚生労働省が行なった「第2回 看護職員需給見通しに関する検討会」では、平成37年(2025年)に看護職員が約196万~約206万人も必要とされている一方、平成28年末(2016年)の就業者総数は約166万人にとどまっています。

今後、仮に3万人/年のペースで増加しても、2025年には約3万人~最大約13万人ほど看護師が足りなくなる計算です。

慢性的な人手不足は一人あたりの業務負荷を増大させ、看護師の離職を招きます。また、ベテランが抜けた穴を経験不足の人材が埋めることで、医療サービスの低下につながるケースも起こっています。

こうした状況を解消するには、どのような手段が考えられるのでしょうか?

看護師の人材不足における様々なデータを読み解きつつ、看護師はなぜ退職をするのか、その理由に迫ると共に、人手不足対策の現状についてお伝えいたします。

「結婚・出産退職」の裏側に隠れた、真の退職理由とは?

そもそも看護師不足は、なぜ発生するのでしょうか? 需要に対し供給が少ないという理由のほかに、退職者の存在が上げられます。

公益社団法人日本看護協会が発表した「2017年病院看護実態調査」によると、正職員として勤務する看護師の10.9%、新人看護師では7.6%が離職しています。退職率そのものは他の職業と比べて多くありませんが、需要と供給が追いついていない中で、この離職率は人手不足に追い討ちをかける要因となっています。

実際、看護師はどのような理由で退職するのでしょうか。代表的な理由は、多い順に以下の通りです。

1位 出産・育児のため

2位 結婚のため

3位 他施設への興味

4位 職場の人間関係

5位 超過勤務が多いため

これらの離職理由は、女性が多い職種だからこそのものといえます。ちなみに2016年の厚労省の調べによると、就業していた看護師114万9,397人のうち女性は106万5,204人(全体の約93%)、男性は8万4,193人(約7%)となっています。

結婚を機に専業主婦になることを選択したり、出産・育児により子育てに専念せざるをえなくなったり。産休・育休の取得は以前よりも容易になったとはいえ、取得できない職場もまだまだ多く、看護師職の女性は難しい選択を迫られます。

これらは、男女共通の理由であり、看護師が置かれた職場環境の難しさを表しているものといえるでしょう。

そして、3位~5位まで理由こそ違えど「職場への不満」といった退職理由が目を引きます。6位に「休暇が取れない、取りづらい」がランクインしていることを考えると、多くの看護師が職場への不満を抱いていることが分かります。

看護師の約75%が、退職を希望している

もっとも、1位と2位に「出産」「結婚」が入っていることを踏まえると違う見方もできます。「職場への不満が強いからこそ、結婚・出産を機に離職を選ぶ」ということです。

育休・産休をスムーズに取得でき、復帰も容易な職場環境であるならば、離職する必要はありません。終身雇用が崩壊し共働きが一般化する中、専業主婦の立場を選ぶには相応の理由があると考えられます。

その見方を裏付けるデータも存在します。日本医療労働組合連合会の「看護職員の労働実態調査」によると、看護師の約75%が仕事を辞めたいと思っているということがわかります。内訳でみると、看護師の2割強が「いつも辞めたい」、約6割が「時々辞めたい」とのことです。

>仕事を辞めたいと「いつも思う」19.6%(21.7%)と、「ときどき思う」55.6%(57.6%)と合わせると75.2%(79.3%)で、前回より若干減少しているが、4人に3人は仕事を辞めたいと思いながら働いている。

>辞めたいと「思わない」のは僅か16.8%(15.0%)である。(問34)

>仕事を辞めたいと「いつも思う」比率は、時間外労働が多いほど、休憩が取れないほど、高くなる。

>「仕事を辞めたい理由」(3つまで選択)では、「人手不足で仕事がきつい」44.2%(46.1%)が最も多く、次いで「賃金が安い」33.9%(37.0%)、「思うように休暇が取れない」33.3%(35.4%)、「夜勤がつらい」31.6%(30.5%)、「思うような看護ができず仕事の達成感がない」27.8%(30.5%)と続く。(問35)

>「医療・看護事故が続く大きな原因」(上位2つ選択)についても、「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」が81.3%(84.9%)と突出して高い。(問19)根本的な問題である人員不足の改善がなければ、「休暇」や「夜勤」、「仕事の達成感」などに関する問題も解決しない。

女性ならではの離職理由に目を引かれますが、根本的な問題には職場環境への不安・不満があります。そこにアプローチしない限りは、皮相的な対策になってしまうでしょう。

看護師不足が続くと、何が起こるのか?

実際に、看護師の不足が続くと何が起こるのでしょうか?

厚生労働省が2008年に発表している「コメディカル不足に関して~看護師の人数と教育~」という資料によると、「病床あたり看護師数が多いほど、患者の安全性は高い」という結果が報告されています。

患者4人に対して看護師1人の場合の患者死亡率を100%とした場合、5人に対して1人のときは107%、6人に1人のときでは114%、7人に1人のときは123%まで増加することがわかっています。

つまり、看護師の人数が増えることで、患者の安全性は高まります。人数が多ければ多いほど、患者一人一人に目が行き届きやすく、きめの細かいサービスが提供できます。

実情はどうなっているのでしょうか。

同じ資料によると、100病床あたりの看護師数において、日本は諸外国平均の1/4だという統計も出ています。イギリスが200、アメリカが141、イタリアが136に対し、日本はわずか38に過ぎません。

医療ミスが発生しやすくなる/発生への不安が増える

人員が不足することで1人あたりの業務量が増え、患者のケア、新人教育、その他雑務における担い手が不足します。

結果、シフトに余裕がなくなり、看護師は常に疲労を抱え、事故への不安を感じながら仕事をし続けることになります。結果それは大きなストレスにつながり、離職の引き金になっているのが実情です。

新卒のキャリアアップが難しくなる/離職のきっかけになる

退職者が多くなることで、経験が浅いにも関わらず責任あるポジションにつかざるを得なくなり、勉強が必要なのに休暇を取れなくなり、希望の病棟に異動できなくなったり。業務内容や責任はベテランと同じなのに、自分自身は経験不足であり、待遇も新卒並み。

厚生労働省の「新人看護職員研修の現状について 」という資料によると、新人看護職員の離職理由の上位は以下のとおり。

1位:基礎教育終了時点の能力と現場で求める能力とのギャップが大きい

2位:現代の若者の精神的な未熟さや弱さ

3位:看護職員に従来より高い能力が求められるようになってきている

4位:現場の看護職員が新卒看護職員に仕事のなかで教える時間がない

5位:交代制など不規則な勤務形態による労働負担が大きい

1位と3位、4位において「現場とのギャップ」を表す理由が出てきています。現場で求められる能力と、学んできたことのギャップは特に新人看護師を苦しめる要素です。

看護師のプライベート確保が難しくなる

こうした状況では、結婚や育児などプライベートとの両立も難しくなります。すでに述べた通り、看護師の離職理由の1位は「出産・育児」、2位は「結婚」でした。

しかし、別の資料を見ると、そもそも看護師の未婚率そのものが高い現状があります。

>20~50歳未満では一般女性と比較して看護職の有配偶率は低い傾向があり、未婚率は高い傾向がある。

また見逃せない記述として、当直勤務者の置かれた状況があります。

>当直勤務者の4人に3人は、労働基準監督署が示す「当直」の定義に当てはまらない(終夜業務が継続して仮眠が取れない状態である)。

>さらに、当直勤務者の4割は、当直明けが休みとなっておらず引き続き日勤に入っている。

こうした状況下ではそもそも出会いを見つけることが難しく、配偶者探しは困難になることが容易に想像できます。

看護師不足を解消するために行われている改善案

これまでご紹介したように、看護師不足は病院単体だけの問題ではなく、国や自治体にとっても大きな課題です。

日本の看護師不足を解消するために、行政は養成学校の増設や職場環境の改善などに着手しています。

今後、新しい施策の登場が期待されますが、ここではその改善案の一部をご紹介します。

看護職員養成学校の増設

学校養成所総数では、平成23年に989校だったものが平成30年には1,064校まで増加しています。入学定員の総数も平成23年の59,212人から67,881人にまで拡充しました。

とはいえ前述のとおり平成28年末(2016年)の就業者総数は166万0,071人であり、このままのペースでは需給ギャップは埋まらないことがわかっています。

しかし、学校の新設は当然ながら容易ではなく、すぐに決定されることでもありません。

待遇・職場環境の改善

離職率が下げ止まりの傾向を見せているとはいえ、国家資格職である看護師が毎年10万人も離職していることは由々しき事態です。

特に都市部の中小規模の病院では離職率が高くなっていますが、それはより待遇・就業環境のよい大病院などに転職の選択肢が多いためと考えられます。

では、大病院は何が優れているのかというと、看護配置が比較的手厚い(手厚くできる)ことが大きな要因と考えられます。実際、日本看護師協会の調べにおいても、「7対1看護配置(患者7人に対し看護師1人)」の場合に離職率が最も低くなるという報告がされています。

しかしこれは「看護師不足を解消するためには、看護師の数を増やす必要がある」というトートロジーにすぎません。潜在看護師の活用もこの枠に入りますが、激務に耐えかねて離職した人たちが看護配置の厳しい職場に戻ろうとはなかなか思いづらいはずです。

医療ロボット/AIの活用

米国で試験運用が始まった、病院で医療品をピックアップし運搬する「モクシー」、検体や薬剤をロボット「Relay(リレイ)」などがすでに存在しており、さらにAI領域では遺伝子解析の『ワトソン』、病名を診断する『ホワイトジャック』といった製品が開発されています。

医療ロボットやAIの活用が広まれば、看護師の負担がある程度は軽減されることは期待できるでしょう。

例えば患者の急な病変をAIが察知、各種データを瞬時に分析し正確な病状をドクターに通報するといったことが期待できます。もっとも費用がかかる話でもあり、現時点での需給ギャップをどの程度解消できるかは不透明です。

民間紹介会社の活用

看護師不足は、人口の少ない地域ほど深刻です。こうした地域で、医療機関はリクルートに手を割くことは難しく、民間の紹介会社を頼らざるを得ません。

しかし、紹介会社の手数料は近年高額になっており、平成28年度の常設看護職員1人あたりの紹介手数料は平均で約87万円。

総計でも、平成26年度には約11億円だった紹介料が、28年度に約16億円とたった2年で約5億円も増加しています。日本看護協会は、無償で看護師を紹介する「ナースセンター」を通じ、紹介を強化していますが抜本的な解決には至っていません。

まとめ|潜在看護師の活用を中心とした複合的な施策を

様々なデータを見ていきましたが、結局のところ看護師不足の原因は過重労働、つまり「患者に対して看護師の数が少なすぎる」ことで起こっていることがわかります。

ロボットやAIを駆使し、ある程度解消できる部分はあるでしょう。看護学校の増設も、民間紹介会社の活用も、いずれも施策としては一定レベルでは有効です。

しかしながら、今後とも「この施策を選べば、状況が解消する」という魔法の杖は存在しないのが実情。結局のところ、様々な施策を組み合わせながら徐々に改善を期待するほかなさそうです。

とはいえ、ボトルネックが「単純な看護師の人数不足」にあることは様々なデータから明らかです。看護師の就業人数を増やす上で、有経験者・熟練者である「潜在看護師」の利活用はその中でも中心的な施策になっていくでしょう。

潜在看護師がナースセンターに登録し、ハローワークと連携して徐々に復職を進めている地域もあります。

一方で、潜在看護師が復帰しない理由は「出産・子育て」「技術面のブランク」「責任の重さ」など様々。こうした面にアプローチしつつ、複合的な施策を進めていくことが肝要だといえそうです。

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