働き方改革

働き方改革で管理職の仕事はどう変わる?3つの変更点や役割を解説

働き方改革により、これまで多くの一般社員の残業時間は抑制されてきました。しかし、一般社員のやり残した仕事は、時間外労働が適応除外されていた管理職が対応することとなり、結果的に管理職(特に中間管理職)にしわ寄せが及ぶ、という結果を招きました。

この問題を改善すべく、2019年4月に改正された労働安全衛生法では、一般社員と同様に管理職の労働時間を把握することが義務化されました。

労働安全衛生法の改正にともない、管理職の業務はどう変わるのでしょうか?また、管理職を含めた社員全体が「働き方改革」を実現するためには、管理職はチームにおいてどのように振る舞いリードすべきなのでしょうか?

本記事では、働き方改革によって求められる、管理職の新しい役割や、企業が行うべき施策について説明していきます。

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前提として知っておくべき「管理職」の法的な定義

働き方改革における管理職のあり方を考える前に、まずは「労働基準法で定義されている管理職」について解説します。

管理職とは、労働基準法では「管理監督者」といいます。同法の第41条では、「管理監督者」について次のように定められています。

「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」

さらに、「労働基準法関係解釈例規」ではこのような記述もあります。

「監督若しくは管理の地位にある者とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」

つまり、管理職(=労働基準法でいう「管理監督者」)は、「職場内でほかの社員の管理・監督や労務管理などの業務を行っている立場の人」のことを指しています。つまり、法律的には会社内での肩書きは関係なく、社内メンバーのマネジメントに携わりチームの方向性の決定権を持つ人のことを指します。

このことを念頭に置いた上で、管理職の働き方改革について考えていきます。

管理職に該当する働き方改革関連法の3つの変更点

2019年4月に改正された労働安全衛生法により、どの企業においても、社員の「労働時間の状況(※)」を把握する義務が新設されました。

※労働時間の状況:どの時間帯にどのくらいの時間、労務を提供しうる状態にあったかという概念

新設ルール① 残業時間の上限を超えたら罰則が課される

労働基準法では、労働時間が「1日8時間、週40時間まで」と定められています。これを「法定労働時間」と言います。

また、「週に1日、または4週間の内4日の休日」を設けなければなりません。これを「法定休日」と呼びます。

もしも、法定労働時間を超えた残業(時間外労働)や、法定休日を返上した労働をする場合は、あらかじめ労使間で労使協定を結んでおく必要があります。この労使協定は労働基準法第36条で規定されているため、「36(サブロク)協定」と呼ばれています。

ただし、36協定を結んでいるからといって、限度なく働けるというわけではありません。

36協定でも時間外労働の限度が定められており、「1ヶ月45時間、1年360時間」を超える時間外労働は禁止されています。

以前は、特別な事情があれば限度時間を超えた残業が許されており、特別条項を破って時間外で働いていても、せいぜい行政指導があるくらいでした。しかし新制度では、36協定に違反すると罰則が課せられることになりました。

さらに、特別条項を設けた場合においても、次のような特例が定められました。

・月45時間の残業を超えてよいのは、年間6ヶ月まで
・通算では年720時間以内の残業におさめる
・複数月平均80時間以内(休日労働も含める)
・月100時間を超えてはいけない(休日労働も含める)

これを破った場合、罰則が課せられます。

新設ルール② 労働時間の状況把握が義務化

先述の通り、2019年4月に改正された労働安全衛生法により、労働時間の状況を把握する義務が新設されました。この目的は労働安全衛生法における「面接指導」を徹底して実施することです。

以前は「月100時間を超える残業をした者から申し出があった場合、医師の面接指導を実施する」という義務が定められていましたが、今回の改正により、この義務が生じる時間数が、月100時間から月80時間超に変更されました。

これは、企業の規模に関わらず実施しなくてはならない義務です。また、これまでは対象外だった管理監督者や裁量労働者も適用対象となりました。

このように、従業員の労働時間を適切に把握することは、こうした時間外労働の上限規制(36協定)や、割増賃金支払いはもちろんのこと、労働安全衛生法の義務を果たすためにも必須です。

長時間労働については、別記事残業代の還元なくして働き方改革の成功はない|3つの還元手法にてご紹介しております。併せてご覧ください。

新設ルール③ 有給休暇時期指定義務

また、2019年4月から、従業員が年次有給休暇を確実に取得するよう、有給休暇時期指定義務制度がスタートしました。

年次有給休暇とは、十分な休養を取ることによって仕事とのバランスを保ち、心身の健康を維持・増進することを目的とした法定休暇です。

原則として、従業員が自由に取得できるはずの有給休暇ですが、2016年度の厚生労働省の調査によると、有給休暇取得率は半数に満たない49.4%でした。

年次有給休暇制度では、企業が計画的に年次有給休暇を与える「計画的付与制度」が認められ、計画的付与を除き、これまで従業員からの申し出によるものであった年次有給休暇の取得を、使用者が指定する時期指定義務になりました。

これによって、

  • 半年間継続的に雇われている
  • 全労働時日の8割以上を出勤している

この2点を満たしている従業員は、最低年5日間の年次有給休暇を取得することが、義務付けられました。

時季指定義務の対象となるのは、10日以上の年次有給休暇が付与される条件で働いている従業員で、下の表の、青い部分にあたる従業員になります。

  • 正社員等、週40時間以上、または週5日以上勤務の場合

勤続年数

6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
  • 週30時間未満で、週1〜4日勤務の場合
勤続年数→
労働日数↓
6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月

週4日

(年169日〜216日)

7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日

週3日

(週121日〜168日)

5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日

週2日

(年73日〜120日)

3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日

週1日

(年48日〜72日)

1日 2日

2日

2日 3日 3日 3日

※週以外の期間で、労働日数が定められている場合、年所定労働日数でみること

また、条件を達成している管理監督者も対象となります。
 
有給休暇義務化については、別記事「5分でわかる「有給休暇義務化」担当者が知っておきたいこと」にてご紹介しております。併せてご覧ください。

改正後の労働安全衛生法によって管理職の負担は増えた?

では、2019年4月に改正された労働安全衛生法によって、管理職の業務は具体的にどのように変化したのでしょうか?
実は、改正後の実態は、中間管理職の業務負荷が増加した結果となっています。

パーソル総合研究所が2019年10月に「中間管理職の業務負担に関する定量調査」という調査を発表しました。

この調査によると、働き方改革が進んでいる企業で「中間管理職の業務量が増加した」と回答した割合は62.1%という結果となりました。一方で、働き方改革が進んでいない企業では48.2%となりました。ここから読み取れるのは、働き方改革が進んでいる企業ほど、中間管理職の業務は増加しているという実態です。

また、リクルートスタッフィンングが2019年9月に発表した「働き方改革における管理職への影響と変化」で、自分(中間管理職)の残業が「増えた」もしくは「やや増えた」と回答した中間管理職に対してその業務内容を聞いたところ、「所属部署・課における管理業務」(71.7%)、次いで「部下のサポート業務」(58.5%)となりました。

この2つの調査を照らし合わせてみましょう。従業員の目先の労働時間の削減が優先されてしまう、いわば「名ばかりの働き方改革」によって、その上司である中間管理職にしわ寄せが及んでいるということが見えてくるのではないでしょうか。

働き方改革によって業務を増やさないようにするための管理職の役割

このような問題が明らかになりながらも、働き方改革が進められる中、管理職には一体どういった役割を担う必要があるのでしょうか。また、どういった施策に取り組めば良いのでしょうか。

管理職が取り組まなければならない業務と、業務効率化のために一般社員に向けて行うべき働きかけを紹介します。

従業員の労働時間の把握

前述のとおり、法改正によって各企業や事業者に「従業員の労働時間の把握」が義務化されました。そのため、管理者は、自身の労働時間の把握だけではなく、従業員一人ひとりの労働時間を適正に把握しておく義務が必然的に発生します。

これに加えて、企業は各従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を記録し、3年間保存しておく必要があります。

確認・記録方法としては、次のようなものが有効です。

  • タイムカード
  • ICカード
  • パソコンの起動時間の記録

また、記録の確認が難しく、自己申告制を行う場合は、不正やサービス残業などが起こる可能性もあります。企業・従業員とも倫理観を持つことはもちろん、従業員に対して十分に勤怠管理の重要性説明をし、理解してもらうことが必要です。

もちろん相互の信頼関係は大切ですが、従業員の申告した労働時間が実際の労働時間と整合しているか確認し、適正な申告がされているかをきちんと管理するのも管理職や労務管理担当者の役割です。

従業員の有給取得日数の把握

労働時間に加え、従業員ごとの有給取得日数を把握しておくことも重要です。ご存知のとおり、日本の労働環境では、有給休暇の取得率の低さも課題の一つです。そして、2019年からは有給休暇取得が義務化しました。

従業員のパフォーマンスを安定的に保つためにも、計画的な有給休暇取得期間を設定し、有給休暇取得を促していく必要があります。そのためには、部下に対し、有給休暇の取得日数や有効期限などをきちんと伝え、認識させることが大切です。

また企業は、従業員ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存することが義務付けられています。

有給休暇義務化に関する参考記事:「5分で分かる「有給休暇義務化」担当者が知っておきたいこと

具体的に記載する内容は以下です。

  • 有給休暇を労働者が実際に取得した日(時間単位年休使用時には、使用した時間も記載)
  • 有給休暇の日数(申請した日数ではなく、取得した日数)
  • 有給休暇の基準日

これらは法律で元々義務付けられている「労働者名簿」あるいは「賃金台帳」と合わせて作成することもできます。

部下の意識改革

時間外労働(残業)が抑制されることで、従業員の勤務時間も当然短くなります。とはいえ、企業としては、その分の業績を低下させてしまうわけにはいきません。そのため、短い時間の中で、従業員一人ひとりが労働生産性を高める意識を持つことが、大変重要となってきます。

管理職は、従業員とコミュニケーションを密に取り、勉強会などを開くことにより、従業員に働きかけていくことが重要です。

日々の業務の見える化

労働時間を短縮しても、業績を維持するためには、業務効率の向上が必要です。そのため、業務の見える化を図ることが役立ちます。

  • スキルマップやマニュアルを作成し、業務の見直しと改正
  • 従業員の満足度を上げ、優秀な人材を確保すべく、福利厚生制度の充実、フレキシブルなワーキングスタイルの導入

など、これらの作業を同時に行うことが必要となってきます。

また、IT導入や外注などに投資をすることで、業務の効率化を高めることができます。

それでももしも効率が上がらず、成果が打ち出せない場合は、経営コンサルタントや社会保険労務士など、専門家に相談することも一つの手段です。外部の専門家が入ることにより、自分たちだけでは見えなかった課題や、他社で有効だった施策を導入することもできます。

これらの工程を省き、労働時間の短縮だけを行ってしまった場合、必ず経営にしわ寄せが来ることになります。

一番してはならないことは、管理職が現場に指示だけする、あるいは経営陣が中間管理職に指示だけして押し付けてしまうことです。場合によっては、労働時間を減らすためにサービス残業が横行したり、ずさんな業務管理や事業運営が起こる温床にもなります。経営陣、管理職が率先して不要な業務を徹底的に排除できるように働きかけ、チーム一丸となって「働き方改革」を実践していくことが重要です。

労働生産性に関する参考記事:「労働生産性とは?混同しがちな定義と計算式をわかりやすく解説

管理職が取り組むべき働き方改革の進め方

働き方改革に取り組むにあたって管理職がすべきことは、「自身のマネジメント力の向上」と、「部下の状況を把握し、残業を減らすこと」の2つです。

進め方としては、次のようなステップが基本の考え方です。

  1. 現状の課題を把握
  2. 課題に対する施策を検討
  3. 施策の実施
  4. 施策の見直し・改善

1.現状の課題を把握

自社内での課題を的確に捉え、解決策を見出すには、現状の把握が必要です。

不要な業務はないか、そもそも管理職自身が部下の不要な業務を生み出していないか、まずは自らのマネジメントスタイルの課題を省みることが大切です。

さらに、一定の部署やプロジェクトチーム、従業員に作業が集中してしまっていないか、残業の多い従業員、有給休暇の取得できていない従業員がいないか、あるいは従業員ごとの成果など、まずは自社の課題を把握しましょう。

2.課題に対する施策を検討

ひとえに「働き方改革」といっても、課題は企業によってさまざまです。

  • 従業員のワークライフバランス
  • 従業員の過重労働
  • 従業員の健康不安
  • 勤務時間の短縮による業務量の減少
  • 年次有給休暇の取得率の悪さ
  • 正社員と非正規社員とでの不合理な賃金
  • 業務量に見合わない待遇

自社にとって必要な業務や無駄な業務を選別し、業務の効率化を図りましょう。

また、人材配置の最適化や、従業員ごとの成果や効率に見合った賃金配分をすることも大切です。

IT導入による省力化や、アウトソーシング企業に業務を依頼することで、業務効率を向上させることも有効です。従業員の教育に力を入れることも、大事な先行投資となります。

これらの取り組みによって、従業員の満足度が上昇し、生産率の向上や離職率の低下、メンタルヘルスケアなどに結びつきます。

3.施策の実施

自社の課題に対しての施策が決まったら、実際に取り組んでみましょう。

従業員との密なコミュニケーションもとても大切です。チーム一丸となって取り組みましょう。

4.施策の見直し・改善

また、定期的に効果を検証し、施策の見直しや改善をすることも大切です。

良い成果をもたらしている施策は継続し、あまり成果の出ていない施策は改善するか、別の施策を検討すると良いでしょう。

まとめ|管理職にしわ寄せがいかないスムーズな働き方改革を

管理職にしわ寄せが及ぶ、“名ばかりの働き方改革”ではなく、不要な業務をなくす、業務内容を根本的に変える、業務プロセスを短縮するなどして、従業員と一丸となって「働きやすい理想の会社作り」に取り組んでみてはいかがでしょうか。

働き方改革の目指すところは、一億総活躍社会の実現です。生産年齢人口が年々減少してきている今だからこそ、中長期的な目で見て、真摯に取り組むことが大切です。

知識がないまま放置しておくか、先手を打って先行投資するかでは、数年後の成果もだいぶ変わってきます。

不安な場合は、専門のコンサルタントなどに相談するのも良いでしょう。

ただ休暇取得を促すのではなく、心身共にリラックスができる
有給休暇の過ごし方を提案しよう

社員へ休日の過ごし方を聞けば「1日家にいてぼーっとしていた」「とにかく寝ていた」など、ただ有給休暇を消化しているだけ

有給休暇の過ごし方は、個人の自由です。しかし、休日の充実度合が仕事にも影響を及ぼすため、企業としては、心身共にしっかりとリフレッシュができる有意義な休日を過ごしてもらうことが重要です。

充実した休日の提案には、福利厚生サービスの充実を検討しましょう。

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ぜひこの機会に有給の取得推進とあわせ、福利厚生サービスの導入を検討してはいかがでしょうか?


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