【嘘のような本当の話】公平な福利厚生を作ったのに社員から不平等と言われてしまうワケ
この動画でわかること
- 公平な人事を行うことで時に不平等になってしまうことがある
- 公平と平等とは社員の納得性を最大にするため調和させるもの
- 競争条件を整えることで社員は公平な競争をすることができる
福利厚生の“公平”と“平等”を考える―住宅手当・カフェテリアプランから学ぶ納得性のある制度設計
社員が納得する福利厚生は「公平」と「平等」のどちらが大切?その違いとバランスの取り方
企業の福利厚生を設計する際、多くの管理職や人事担当者が悩むのが「公平」と「平等」どちらを優先するべきかという問題です。特に住宅手当や家族手当、育児支援など社員属性に着目した制度を導入すると、“不公平だ”と感じる社員の声が必ずと言っていいほど現れます。
このテーマは、納得度の高い福利厚生制度を作る上で不可欠な視点です。
- 住宅手当や家族手当を受ける社員と受けない社員の「納得感」が葛藤ポイント
- 公平(Fairness)は成果や条件に応じた対応、平等(Equality)はすべての社員を同じように扱う考え方
- 会社としてどちらを重視するかは、時代や企業文化、人事制度によって異なる
住宅手当の「公平」と「平等」―社員ニーズと企業施策のすれ違い
“持ち家”と“賃貸”で手当の有無が異なる現実―不満が生まれる理由とは
賃貸住宅に住む社員に住宅手当を支給する制度は、経済合理性や生活支援の観点で多くの企業が導入しています。しかし、持ち家の社員からは「自分だけ住宅費支援がないのは不公平じゃないか?」という声も。
- 賃貸社員にのみ住宅手当を支給→生活水準の平等を狙う施策
- 持ち家社員は住宅費がかからないため手当なし→公平の観点を優先
- 社員間の“納得感”や“公平性”こそが制度の成否を左右する
住宅手当設計の正解は一つではありません。社員属性や会社の歴史、人事施策の流れによって変わります。
平等と公平の定義を福利厚生にあてはめる
人事制度も福利厚生も「平等」と「公平」は実は違う概念です。
- 平等とは「みんな同じように扱うこと」
- 公平とは「条件や成果、必要性に応じて扱いを変えること」
- 企業は“公平な人事”を目指し、結果的に不平等となる場面も
例えば年功序列、成果主義、ライフステージ別施策など、その背景・制度設計によって平等と公平のバランスは大きく変動します。
成果主義の台頭と福利厚生の変化―現代的制度設計のヒント
公平・平等の両立は難しい?時代に合わせた柔軟な考え方が鍵
20世紀の日本企業では、「同じ年齢、同じ勤続年数には同じ給与」を払う平等主義が根付いていました。しかしバブル崩壊後は、成果主義や職能給が主流となり「成果・条件に応じた公平な人事」へと転換しています。
- 成果主義は公平性重視→結果として個々の待遇や手当に差がつく
- 生活水準の平等を求めて家族手当・住宅手当等の個別支援が導入されることも
- 時代や企業の体力、働き方の多様化によって施策も進化
突然の制度変更は“社員の反発”や“不利益変更”につながるリスクもあり、慎重な運用が大切です。
育児支援・介護手当の平等と公平―成果主義時代にも補助が活きるワケ
育児・介護社員の納得感を高める競争条件の調整策
成果主義を標榜する現代でも、「育児支援や介護補助」を導入する企業が急増しています。これは、社員間の“公正な競争条件”を整える目的も含まれています。
- 育児・介護をしながら働く社員と、100%仕事に専念できる社員では競争条件が異なる
- 手厚い福利厚生支援によって納得感を高め、働き続けられる環境を維持
- 成果主義の運用でも、一定程度属性に応じた「平等性」を織り込むのが現代流
全員を一律で評価(真の公平)するだけでなく、家庭事情やライフステージも加味した運用が重要視されています。
究極の公平・平等を目指すカフェテリアプラン―ポイント付与制度の効果と誤解
カフェテリアプランは“公平型”福利厚生?全社員ポイント付与の背景
カフェテリアプランは、すべての社員に同じポイントを付与することで“公平性”を担保します。同時に、メニューの選択肢次第で自身のニーズに合わせた”平等な機会”を享受できる制度として注目されています。
- 全員に同じポイント→公平な福利厚生の代表例
- 不要だと感じる社員にもポイント付与→“もったいない”との声も昔は多かった
- 多様化時代には誰しも福利厚生ニーズがあるため制度の無駄は少ない
ポイント活用で“人的資本の強化”、納得感と満足度の向上を目指す企業が増えています。
まとめ~企業の福利厚生は「公平」と「平等」の“納得性”が最重要
福利厚生制度設計の本質は、「社員が納得して働ける環境づくり」にあります。
公平と平等は相反するものではなく、社員の人生やニーズにフィットするよう調和させてこそ信頼される制度となります。
- 住宅手当・家族手当などを廃止・見直す際は納得性の観点から慎重に検討
- 成果主義やカフェテリアプランの活用で「公平な機会」と「平等な条件」の両立を目指す
- 社員の多様なライフステージや事情を尊重した柔軟な制度運用こそが、現代型福利厚生のカギ
時代や企業文化に合わせて“納得性の高い福利厚生”を追求し、全社員が安心して働ける組織を実現しましょう。
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻:社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信
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