福利厚生

【令和版】春闘と賃上げ白書~人事担当が知っておくべきこと~

春闘の賃上げ対策

令和の春闘と賃上げ事情

春闘は賃金や労働条件の交渉を統一的に行う日本独特の仕組みで、賃金設定に大きな影響を与えます。春闘における賃上げについて、最新の傾向とこれまでの動きについて解説します。

【最新】2025年の春闘における賃上げ傾向

賃上げ率5%以上(定期昇給を含む)が目標とされた2025年の春闘では、満額や要求を上回る回答が得られ、賃上げの流れが確立してきました。2025年の主な企業の回答は下記のとおりです。
(2025年3月調べ)

  • トヨタ:賃上げ・一時金ともに満額回答(金額非公表)
  • 日産:16,500円(※)
  • ホンダ:8,500円
  • マツダ:18,000円(※)(満額)
  • スズキ:21,600円(※)(要求以上)
  • 三菱自動車:17,000円(※)
  • 日本製鉄:12,000円
  • 神戸製鋼所:15,000円(満額)
  • 三菱重工業:15,000円(満額)
  • 川崎重工業:15,000円(満額)
  • NEC:17,000円
  • 日立製作所:17,000円
  • JR東日本:13,782円
  • 日本航空:10,000円
  • NTT主要6社:12,000円(満額)
  • サントリー:12,000円
  • サッポロビール:15,000円
  • 味の素:16,000円(満額)

(※)定期昇給分を含む

自動車メーカーでは、トヨタやマツダで満額回答、スズキでは要求を上回る回答となりました。鉄鋼大手や機械メーカーにおいても、神戸製鋼所や三菱重工業、川崎重工業、NEC、日立製作所など多くで満額回答が得られています。

NTT主要6社は満額回答で、過去最高額のベアとなりました。業績などの理由から要求額を下回った企業でも、賃上げの流れを受け多くが高水準での妥結となりました。

なお、2025年3月19日時点での連合の集計結果によると、2025年春闘の賃上げ額は17,486 円、賃上げ率は5.40%となっており、前年同時期を上回っています。

2024年以前の春闘における賃上げ傾向

2025年の春闘は、賃上げの定着について注目されてきました。ここで、厚生労働省が集計している「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」から、2024年以前の春闘における現行ベース(交渉前の平均賃金)に対する賃上げ率がどのようであったか、推移を見ていきましょう。

1995年以降、バブル崩壊後の不況により長らく1~2%台が続いていた賃上げ率は、令和となった2019年は2.18%、2020年は2.00%、2021年は1.86%と低下傾向にありました。しかし、2022年には2.20%に回復し、2023年には1994年以来の3%台である3.60%に上昇します。

物価の高騰や人材不足を背景に、2024年にはさらに前年を大きく上回る5.33%の賃上げ率となり、2025年を迎えることとなったのです。

※参照:厚生労働省「令和6年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41871.html

企業の春闘における賃上げ課題と対策

2024年・2025年と賃上げ率は5%に達した一方、企業は賃上げにおいてさまざまな課題を抱えているのが現状です。

ここでは、賃上げ対策となる福利厚生の拡充事例についてご紹介します。

賃上げ対策としての福利厚生

給与としての賃上げが難しい場合、対策として福利厚生を充実させて社員の満足度を向上させることも有効です。

福利厚生は社員の実質的な手取りを増やす効果が期待できるため、近年注目度が高まっています。企業側にとっても、税負担を軽減できる・他社と差別化できるなどのメリットがあります。

一例として、福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」の導入事例を紹介します。

給与天引きで決済できるガソリン割引の導入【富士ソフト株式会社】

独立系ITベンダーとしてソフトウェア開発を手がける富士ソフト株式会社様では、社員が割引や特典を給与天引きで決済できる「給トク払い」限定で提供されているガソリンカードサービスを導入されています。

福利厚生ガソリンカードは、ENEOS・出光・昭和シェル・コスモ石油など全国約26,000ヵ所のサービスステーションで利用でき、全国平均価格をベースに割引が適用されるサービスです。

ガソリンは日常的に使用するものでありながら値上がりが続いているため、利用者が割引の恩恵を実感しやすいことがメリット。利用の度に事前の利用申請や申し込みを行う必要がなく、クレジットカード感覚で決済できるので、利便性の高さから利用者が増えてきているのだといいます。

2親等対象の福利厚生で親孝行をサポート【ユーソナー株式会社】

ユーソナー株式会社様は、ビジョンである「みんなが親孝行できる会社」と合致することから、福利厚生としてベネフィット・ステーションを採用してくださっています。

ベネフィット・ステーションで提供される飲食店やレジャーの割引クーポンを利用すれば、経済的な負担を抑えられ、賃金は変わらなくても実質的に使えるお金を増やせます。

カラオケや宿泊施設の割引、生活トラブルサポートなど、社員本人はもちろん親や家族が利用できる機会が多くある点がメリット。ユーソナー様では、割引に加え年間5,000ポイントを付与する追加プランを選択し、社員へサービスの利用促進を図っています。

全国の社員が利用できる制度を導入【株式会社しまむら】

全国に衣料品店舗を展開する株式会社しまむら様では、パートを含むさまざまな年齢層の社員が地域を問わず公平に恩恵を受けられるサービスとして、ベネフィット・ステーションを導入されています。

導入の決め手となったのは、日常的に利用できるサービスの割引や優待に加え、年間5,000ポイントが付与される点がメリットとして伝わりやすいこと。さらに、無料のe-ラーニングが充実している点も理由となったそうです。

福利厚生サービスの利用においては店舗のパート社員までサービス内容が浸透しにくい点が課題でしたが、サービス動画の視聴率目標を設定して店舗でのサービス周知に取り組んだ結果、アカウントを登録した社員は約94%に達しました。

福利厚生が働き続ける理由の一つとなるよう、家族のアカウント登録の促進やメリットの発信にも力を入れておられるそうです。

幸福度向上に繋がる映画やスポーツクラブの割引を提供【ドリームビジョン株式会社】

IT関連事業を展開するドリームビジョン株式会社様では、「日本一エンジニアにやさしい会社」を目指すため、サービスの種類が充実したベネフィット・ステーションを2015年5月より導入いただきました。

福利厚生による社員の満足度向上には、社員が利用を希望するサービスが揃っていることが重要。ベネフィット・ステーションには映画やスポーツクラブの割引など、ニーズが高く幸福度向上に繋がるサービスが数多く揃っています。そうしたサービスの利用率を高めるために具体的な利用方法などを積極的にアナウンスし、これが社員からも好評。導入前の2013年・2014年は20%台だった離職率は、2021年・2022年には7%台に低下し、従業員の満足度や定着率の向上に一定の効果が現れているとのことです。

私生活の充実度向上に繋がるNetflix見放題を導入【キッズモブ株式会社】

子供向けの体操教室やダンススクール、プロテイン販売などを手がけるキッズモブ株式会社様は、日本で初めてNetflixを福利厚生に導入された企業。ベネフィット・ステーションのサービスの割引・優待に加え、5,000円分のポイントとNetflixがセットになった「Netflix得々プラン」がそれにあたります。

充実した私生活を送ることによる仕事へのモチベーションアップや、さまざまなコンテンツを通じて知見を広げる機会を増やすことが目的です。

任意検診に利用できる医療ポイントを付与【日鉄興和不動産株式会社】

日鉄興和不動産株式会社様は「社員が健康で働ける職場環境」を実現できるよう、会社全体で健康増進に取り組んでいます。

福利厚生の一環として2016年に新導入したカフェテリアプランでは、基本ポイントとは別に任意検診に利用を限定した医療ポイントを設定しているのが特徴的。ポイントの付与により、自発的な再検査や人間ドックなどの任意検診の受診者が増えたといいます。

ほかにも、社員が参加できる健康イベントの開催や健康に関するメールマガジンの配信などにより、社員の健康意識が高まるという効果が得られています。その結果、2019年に「健康経営優良法人ホワイト500」に初認定され、以降2025年まで6回の認定を受けています。

※「健康経営優良法人ホワイト500」とは
日本健康会議によって認定される、特に優良な健康経営を実践する「健康経営優良法人」のうち、大規模法人部門の上位500法人を指します。

労使交渉の前に知っておくべき「春闘」と「賃上げ」

労使交渉においては、自社や従業員にとってプラスとなる賃上げを回答する必要があります。春闘の意義や目的、賃上げが及ぼす影響などについて、正しく理解しておきましょう。

春闘とは何か

春闘とは、毎年2~3月にかけて行われる賃上げや労働環境の改善を目的とした統一的な労働運動のこと。憲法第28条において労働者に認められている労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)に基づいて実施されるもので、「春季闘争」「春季生活闘争」を略して春闘と呼んでいます。

春闘では、全国の労働組合組織や産業別組織が決定する方針をもとに企業へ賃金や労働条件についての要求を提示して労使交渉を行い、企業側の回答をもって妥結します。

春闘の歴史

春闘は、雇用側との交渉力を高めるために「単産(同一産業に働く労働者で組織される労働組合)」が共同で闘争したことが始まりです。

1954年、炭労・私鉄総連・合化労連・電産・紙パ労連で「5単産共闘」が組織され、翌年1955年に全国金属・化学同盟・電機労連が合流し、賃上げ交渉を行いました。この「8 単産共闘」 が日本で初めての春闘とされています。

翌年の1956年にはさらに官公労も加わり、合同闘争本部を設置して官民スケジュール闘争を行う、現在のような方式となりました。

以降、春闘は賃金決定方式として重要な役割を果たしてきましたが、バブル崩壊を経て雇用維持を優先するようになります。現在では要求を賃金に限定せず、労働環境や労働条件の改善、格差是正などが課題とされるようになりました。

賃上げには種類がある

賃上げとは給与水準を上げることであり、定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)の2種類があります。

定期昇給とは

企業の昇給制度に沿って定期的に賃金を上げる方式のこと。人事考課や業績、勤続年数などをもとに個別に昇給を行います。

定期昇給は年1~2回、規定の時期に実施するのが一般的です。

ベースアップとは

基本給の昇給を指し、個人ではなくすべての従業員に対して一律で実施する昇給方式のこと。企業の業績や物価をもとに実施します。

ベースアップには、物価上昇やインフレによる実質賃金の目減りを防いで生活水準を維持する役割があります。そのため、春闘では定期昇給とベースアップの両方が要求されますが、重要な争点となるのはベースアップです。

なお、春闘では、賃金とともに一時金の要求も行われます。一時金とは、賞与など臨時的に支払われる給与です。

賃上げが経済に与える影響

賃金水準は、従業員の生活水準だけでなく経済にも影響を与えます。

賃上げが起こると、マクロの視点では消費がプラスに働きます。

賃上げにより雇用者の所得が増加すると、家計で消費に回せる資金が増えるため消費行動が活発になり、消費拡大に繋がります。消費拡大は企業の生産活動の拡大をもたらすため、雇用の増加、さらなる雇用者報酬の増加に繋がるという好循環を生み出すのです。

厚生労働省が行った産業連関表分析によると、賃金・俸給額1%の増加は生産額を0.22%、雇用を0.23%、雇用者報酬を0.18%増加させる効果があるとされています。

※参照:厚生労働省「令和5年版 労働経済の分析 -持続的な賃上げに向けて-第2章 賃金引上げによる経済等への効果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/23/2-2.html

賃上げと物価上昇の関係

賃上げと物価上昇にも関連性があります。

雇用者の賃金が上がると、消費需要の増加や賃金増加分の価格転嫁により物価を押し上げる効果があります。一方、物価が上昇すれば、雇用者の生活維持のため賃上げが考慮されるようになります。

ただし、物価上昇には賃上げ以外の要素も影響する点には留意が必要。特に近年では、円安の影響による物価上昇が大きくなっています。物価対策として賃上げを行ってもそれ以上に物価が上昇しているため、実質賃金は低下し、消費の拡大や経済成長が期待できないという状況なのです。

賃上げによる経済効果を期待するには物価上昇を上回る賃金の上昇を継続させる必要があるため、これからの企業にはDX化や環境整備、人材育成の強化など、労働生産性の向上に繋がる施策に取り組むことが求められています。

賃上げの社会的効果

賃金は経済だけでなく、結婚の選択に影響を及ぼすという研究があります。

厚生労働省がまとめた「令和5年版 労働経済の分析」によると、近年、婚姻数は低下しているものの、結婚の意思については大きな変化がありません。結婚の意思があるものの未婚である理由の一つとして、結婚資金の不足が挙げられています。また、結婚に必要と考える年収に対して未婚者の年収に乖離があることも考慮すると、賃金が結婚の選択に影響を及ぼしていると考えられます。

つまり、賃上げにより給与水準が上昇すれば、希望している人が結婚できる可能性が高まります。ひいては、少子化対策として一定の効果を期待できる可能性もあるでしょう。

結婚年齢・出産年齢を考慮すると、若い世代を中心に賃上げを実現していくことが少子化対策の一端を担うともいえるのです。

※参照:厚生労働省「「令和5年版 労働経済の分析」を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35259.html

総合福利厚生サービス ベネフィット・ステーションとは?

ベネフィット・ステーションは、従業員満足度を向上し、健康経営やスキルアップを促進する総合型福利厚生サービスです。
グルメやレジャー、ショッピングだけでなくeラーニングや介護・引っ越しなどライフイベントに関わるものまで、幅広いメニューを取りそろえています。

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