働き方改革

第6回:前回連載での判決からみえてくる、適正な待遇差について

前回みたように昨年6月の「長澤運輸事件」「ハマキョウレックス事件」最高裁判決以降も、地裁・高裁で「同一労働同一賃金」に関連する判決が相次いでいる。しかも、改正される短時間・有期雇用労働法第8条でいう「それぞれの待遇の性質・目的に照らして」不合理な差を禁止するという改正趣旨に沿った判断を示すようになっている。

この傾向が定着すると、事業主にとって人事制度の見直しの負担や人件費負担が重くなる懸念がある。

なぜなら、人事に関連する諸規程は、待遇改善によって採用や定着を有利にしたり、より働きやすくすることによって生産性の向上を期待したりするものである。この点において、正規・非正規に違いはないからである。

ただ、非正規従業員の採用が容易であった期間が長く続いたうえ、労働力供給の調整役割を担うとする考え方が根強かった。そのため、費用対効果を考慮して事業主は正規従業員と同じ待遇としてこなかっただけである。しかし、その点が「それぞれの待遇の性質・目的に照らして」不合理な差とみえてしまうのである。ここからは判例・判決からみえてくる実務的な対応について考えていきたい。

まずは個々の待遇の目的を、規程や規則に明記することである。

住宅手当は、一般には「社員に支給する住宅手当について規定する」と規定されていることが多いが、転居転勤のある従業員の住宅費負担の軽減を目的としているのなら、「第1(目的) 住宅手当は転居を伴う転勤を命ぜられる社員の住宅費負担の軽減を図ることを目的として支給する」とすることで、性質・目的がより明確になる。

退職金についても、支給目的が在職中の報酬の最終精算・加算にあるなら、退職金規程は「第1(目的) 退職金は在職中に支給した給与・賞与等に加えて、在職中の会社への貢献の対価として加算支給するものである」となるはずである。これにより賃金の後払いの性格が明確になる。

もちろん規程・規則で目的を定めているだけでなく、その目的に沿った制度運用をし、目的と実態が一致していることも求められる。

もう一つの対応は、正規従業員と非正規従業員の待遇差を「働き方」に応じた「手厚さ」の違いにより設けることである。これまでの雇用慣行では、正規・非正規という雇用区分の違いが先にあり、それによって待遇に差が付けられていた。

しかし、福利厚生は、採用・定着の促進、労働生産性の向上を期待するものであり、正規・非正規に違いはない。そのため非正規従業員にだけ支給しないのは、福利厚生の一般的な性質・目的からみて不合理といえる。

つまり、非正規従業員にも正規従業員と同じ種類の待遇を付与するが、「働き方」に応じて支給額には差を付ける。待遇差を「支給の有無」でなく、「支給額の手厚さ」によるものとするのである。

連載第4回で紹介した賞与の判決でも、支給額に差があっても非正規従業員にもある程度支給されていることで、待遇差は「働き方」の違いによると考えられ、「不合理な差」と判断されていない。

 

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