時短勤務の人は残業可能?企業の対応から残業代の計算まで紹介
介護や育児中により時短勤務で働く従業員に対して「今までと同じように残業が可能なのか?」というのは、管理職や人事担当者に生じやすい疑問です。また、当該従業員に残業をお願いする場合、その手当における注意点なども把握しておきたいことでしょう。
そこで今回は、時短勤務における残業などの時間外労働の法的な考え方と、残業代を支給するときの計算方法などを詳しく解説します。
目次
時短勤務期間中の残業は可能?
短時間勤務期間中に残業をさせられるかどうかの判断は、労働基準法と育児・介護休業法で定められた条件と当該従業員の意思によって変わってきます。
時短勤務でも残業は法律上可能
法律上では、時短勤務をする従業員の残業自体を禁止するといった決まりはありません。
また、労働基準法の36では労働組合や労働者の過半数を代表した者と企業の間で36協定を締結していることや就業規則や雇用契約書の中で残業に関する細かなルールが書かれていた場合は、その内容に沿う形で残業してもらうことを定めています。
つまり、基本的な考え方としては時短勤務をする従業員であっても法律上は残業可能と考えて良いことになります。
免除申請があれば残業を強制できない
ただし、育児・介護休業法では以下の条件に該当する従業員が請求をした場合に企業は残業を免除しなければならないことを定めています。
・3歳に満たない子を養育する労働者が子を養育するため
・要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその家族を介護するため
残業免除を希望する従業員は、免除開始日の1ヶ月前までに書面などの事業主が適当と認める方法で請求をしなければなりません。そして、この制度では1回の請求につき1ヵ月以上1年以内の期間で残業を免除できると定めています。なお、請求できる回数に制限はありません。
申請があっても残業免除の対象外にできる場合もある
育児・介護休業法では、以下の条件に該当する場合に子育てや介護をする従業員からの申請があっても残業免除の対象外もしくは請求を拒めると定めています。
・入社1年未満の労働者(労使協定による対象外)
・1週間の所定労働時間が2日以下の労働者(労使協定による対象外)
・事業の正常な運営を妨げる場合
深夜残業のみ免除申請される場合
育児・介護休業法では、以下の条件に該当する従業員が事業主に請求をした場合に22:00~5:00までの深夜において労働できない制限を設けています。
・3歳に満たない子を養育する労働者が子を養育するため
・要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその家族を介護するため
昼間から働いている人の深夜残業だけでなく、24時間稼働している工場などで交代勤務をする人にも当てはまります。そして、以下の条件に該当した人は免除の対象外になる決まりです。
・日雇いの労働者
・入社1年未満の労働者
・所定労働時間のすべてが深夜にある労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
この他にも、深夜に就労していないなどの3条件に該当する16歳以上で、保育もしくは介護のできる同居の家族がいる人の場合も深夜の残業を含めた勤務制限から外れることになります。
時短勤務における法定内残業と法定時間外労働
時短勤務を導入して実際に運用を行う場合、仕事の時間が少なくなっているわけですから通常の働き方と違って「どこからどこまでが残業扱いになるのか?」という疑問が出てくるかと思います。労働基準法では法定労働時間と所定労働時間という考え方がありますが、それぞれ時短勤務にどう影響しているのか見ていきましょう。
時短勤務でも法定労働時間は同じ
まず、労働基準法では「1週間で40時間、1日8時間」を原則とする法定労働時間を定めています。そのため、企業側で法定労働時間を超えて従業員を働かせる場合は36の提出と割増賃金の支払いが必要です。
そして、労働基準法で定められた法定労働時間は、企業や従業員にどんな事情があっても「1週間で40時間、1日8時間」から変わることはありません。これは時短勤務であっても変わりはありません。
時短勤務は所定労働時間の短縮
これに対して、所定労働時間は法定労働時間の範囲内で企業が自由に定められる労働時間を意味します。この時間は、会社の就業規則や雇用契約書に記載されています。
例えば、時短勤務の利用で1日6時間勤務になった場合は法定労働時間ではなく企業側が自由に決められる所定労働時間が変わるという考え方になります。
法定労働時間を超えない残業は法定内残業
事業主が従業員に支払う残業代は、法定労働時間を基準とする法定内残業と法定時間外労働のどちらに該当するかによってその判断が変わってきます。
法定労働時間の「1週間で40時間、1日8時間」を超えて残業をした場合、超過分に対して割増賃金が支払われる法定時間外労働の扱いになります。これに対して、従業員自身が「自分は残業をしている」という認識を持っていても時短勤務などの理由で法定労働時間を上回らなかった場合は法定内残業の扱いになるのです。この場合の残業時間は、割増賃金の支払対象から外れることになります。
時短勤務の残業代の計算方法
ここまで紹介した時短勤務に対する残業のまとめとして、以下の条件で1ヵ月間、時短勤務で働いた従業員Aさんに支払うべき残業代の計算例を紹介します。
【Aさんの勤怠情報】
・基本時給:1,500
・出勤日数:1ヶ月22日
・所定労働時間:1日6時間
・残業時間:48時間(4時間×12回(日))
・法定内残業時間:44時間
・法定時間外労働:4時間
法定内残業は基本時給で計算
まず、先述のとおり法定労働時間に満たない法定内残業時間は割増賃金の対象外です。所定労働時間と同様に、基本時給をかける以下の式を使って給与の計算を行います。
法定労働時間に満たない労働時間分の賃金 =(所定労働時間+法定内残業時間)×基本時給
法定時間外労働分は割増
次に、法定労働時間を超えた残業時間は法定時間外労働ということで割増賃金の対象となり、以下の計算式で残業代を求めるようになります。
法定時間外労働の残業代 = 法定時間外労働時間×基本時給×1.25
シミュレーション計算結果
上記2つの式に数字を当てはめると、Aさんに支払うべき1ヶ月分の給与は以下のとおりになることがわかります。
・法定労働時間内の賃金:(6時間×22日+44時間)×1,500円 = 264,000円(A)
・法定時間外労働分の割増賃金:4時間×1,500円×1,25 = 7,500円(B)
・時短勤務をしているAさんの月給 = A+B =271,500円
このように、具体的な事例を使って賃金や残業代の計算をしてみると、1日6時間の時短勤務になった人の残業分が1.25倍の割増賃金になるためには、かなり多くの時間外労働をする必要があることがわかるかと思います。
みなし残業の場合
みなし残業とは、会社と取り交わす労働条件通知書などで「○時間分の残業代を含む」といった記載をすることで、従業員が残業をしてもしなくてもその時間分の残業代を支給するという考え方です。
基本的に法定労働時間よりも働く時間が少なくなる時短勤務の場合、みなし残業という仕組みを当てはめることがかなり難しいと考えられます。そのため、多くの企業では今までみなし残業だった従業員が時短勤務になった場合に、法定労働時間を基準に残業代の支給に関する判断をする考え方に変えるのが一般的です。
労働時間の種別を理解して正しい時短勤務の残業管理を
時短勤務者の残業を禁止する法律はありません。しかし、育児・介護休業法では3歳に満たない子どもの養育もしくは要介護状態にある家族の介護をする従業員が請求をした場合、企業は残業を免除しなければならないという決まりがあります。
短い時間で仕事をする時短勤務者の場合、労働基準法で定めた法定労働時間に満たないことから残業代についても1日8時間のフルタイムで働く一般の従業員と比べて少なくなりやすい特徴があります。
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