ワークライフバランス

建設業の労働時間(時間外労働)に上限規制が!? 2024年の適用猶予終了について

20194月、働き方改革の一環として労働基準法が改正され、罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されました。建設業においては、上限規制の適用に5年の猶予が与えられたため、20244月より適用されます。

 

建設業は比較的、労働時間が長い傾向にあり、長時間労働の是正を求める声も少なくありません。こうした中で、上限規制の適用に猶予期間が与えられた理由には、建設業界における慢性的な人手不足があります。

 

本記事では、2024年の上限規制適用までに建設業者が取り組むべきことを紹介した上で、人手不足を解消する手段を解説していきます。

 

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時間外労働の上限規制とは? 36協定の基本

現在の日本における労働時間は、労働基準法により原則18時間、1週間40時間と規定されています。

 

1947年に同法が制定された当初、労働時間の規定は、ILO)で採択された国際労働条約の労働時間を基準に、18時間、1週間48時間でした。その後、国際的な労働時間の基準が週40時間(週休2日制)となり、日本もその基準を受けて、1994年から18時間、1週間40時間が原則となっています。

 

(※)国際労働機関。労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とした国際連合の専門機関。

 

しかし企業においては、受注量の増加や納期の逼迫などの要因から、従業員に通常の労働時間を超えて業務にあたってもらう必要性が生じるケースも少なくありません。

 

このような場合には、使用者と労働組合(または労働者の代表)間で同法36条に規定されている時間外労働・休日労働協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働が可能になります。

 

36協定には、時間外労働の上限として「1ヶ月45時間、1360時間」という基準があります。しかしこの基準は、2019年の法改正前は法律で定められておらず、大臣名による告示でした。そのため、仮に違反したとしても使用者側に科される罰則はなく、行政指導止まりとなっていました。

 

さらに、臨時的な特別の事情がある場合においては、この上限を超える時間外労働が認められています。これは「特別条項」と呼ばれており、従来は年間6回・6ヶ月まで、36協定に定められた時間外労働の時間を無制限に延長することができました。

 

そのため、時間外労働における労働時間は事実上、青天井状態でした。

 

こうした背景から、2019年に労働基準法が改正され、時間外労働に対する上限規制が設けられました。この改正では罰則規定も追加されており、仮に上限規制を超える違反をした場合、使用者である企業は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。

 建設業にも適用される、時間外労働の上限規制

時間外労働(残業時間)の上限規制について解説!罰則・リスクを防ぐには?

時間外労働の上限規制は、当初、大企業にのみ適用され、中小企業や建設業や自動車運転業、医師などの業種は適用除外となりました。

 

限られた従業員数で業務を行う中小企業においては、労働時間の是正に時間を要すると判断されたことが、その要因のひとつです。結果として、中小企業には1年の猶予期間が与えられ、20204月から上限規制が適用されました。

 

一方、建設業・自動車運転業・医師などの業種においては、業務の性質上、長時間労働が必要となるケースが多く、中小企業と同様に、労働時間の是正により多くの時間を要すると判断されました。そのため、上限規制の猶予期間は、中小企業よりもさらに長い5年となっています。

 

特に建設業界では、少子化などを要因とした人材確保の困難に加えて、長時間労働が慢性化していると言われていることから、若者を中心に入職者が減少傾向にあります。

 

実際に、厚生労働省の公表している毎月勤労統計調査でも、建設業は他業種と比較して長時間労働であることがわかります。令和39月の確報内の「月間実労働時間及び出勤日数」では、総実労働時間(所定内労働時間+所定外労働時間)の全産業平均が135.1時間であったのに対し、建設業は165.9時間でした。また出勤日数においても、全産業平均の17.7日に対し、建設業は20.3日となっています。

 

結果として、建設業界では、従業員の高齢化が進むとともに、慢性的な人手不足が加速しています。しかし、こうした状況を速やかに改善することは困難です。そのため、前述した通り、建設業においては上限規制の適用に5年の猶予が与えられ、20244月より適用されることになっています。

 

上限規制の適用後は、特別条項付きの36協定が締結された場合でも、時間外労働は単月100時間未満、複数月平均80時間以内(休日労働を含める)、1720時間(休日労働を含めない)の範囲に限られます。

 

ただし、災害の復旧・復興の事業においては、上記のうち、「時間外労働単月100時間未満」と「複数月平均80時間以内(休日労働を含める)」の規制は適用されません。

2024年の上限規制適用を前に、企業が対応すべきこととは?

ここからは、上限規制の適用に向けて企業が対応すべき具体的な内容について、3つのポイントに分けて解説します。

①管理体制の構築・強化

規定された労働時間の上限を超えないためにも、使用者である企業は従業員一人ひとりの勤怠管理体制を強化する必要があります。

厚生労働省が定めたガイドライン(※)では、従業員の労働時間を適正に把握するために使用者が講じるべき措置として、使用者が直接確認することや、タイムカード・ICカードの使用、PCの使用時間などの客観的な記録を用いることなどが定められています。

しかしながら、建設業においては、従業員が直接現場に出勤し、業務終了後は現場から直帰するケースも少なくありません。そのため、労働時間の把握をすることは容易ではなく、主に従業員の自己申告によって労働時間を把握することになります。

そこで同ガイドラインでは、従業員の自己申告制によって労働時間の確認・管理をする場合、使用者は自己申告を行う労働者や勤怠管理者に対して、ガイドラインを基に自己申告制の適正な運用などについて十分な説明を行う必要があることを示しています。

その上で、実態調査を行い、自己申告によって把握している労働時間と実際の労働時間が合致しているかを確認し、労働時間の補正を行うことが必要であることも示しています。

(※)「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)

②ICT活用による業務効率化・生産性向上

建設業界では慢性的な人手不足から、少人数で短納期の業務をこなさなければならないケースも少なくありません。

建設業の業務は現場作業に加えて、事前の施工計画書や安全管理・品質管理に関わる書類の作成、材料の確認、各工程の確認、作業終了に関わる報告書類の作成といった多くの業務があります。そのため、従業員の業務負担は大きく、結果として労働時間も長くなりがちです。

こうした中、時間外労働の上限規制に対応するためには、上記の業務を効率化することが重要です。実際に最近では、業務効率化のためにICT(情報通信技術)を活用する企業も少なくありません。

例えば、タブレットやスマートグラスといった通信端末や一連の業務を一元化できるシステム、各種のIoTツールなどを導入・活用することで、書類の作成・送付がスムーズに行えたり、管理者や責任者が現場に赴かずに作業確認や技術支援ができたりと、業務をより効率的に行えるようになります。結果として、従業員の労働時間短縮につながります。

さらに、労働時間の短縮によって従業員の心身的な負担が軽減されれば、生産性の向上にもつながるでしょう。

 ③労働環境について相談できるパートナーの確保

法制度の新設や改正に合わせて適切な対策を講じるためには、法律に関する深い知識や理解が必要になります。

しかし、法律のような専門的な知識を全てカバーすることは、時間的・コスト的な面から、経営者や事業責任者にとって容易ではありません。そのため、弁護士や社会保険労務士(社労士)といった、労働環境や労使関係に関する専門家の力を借りることも視野に入れることが重要です。

法律の専門家をパートナーにすることで、新しい法律への対応方法を相談しつつ、自社に最適な取り組み方を提案してもらうことができます。場合によっては、自社にとって有益な制度を紹介してもらえることや、申請や届出などの手続きを代行してもらえるなどのメリットもあります。

 さらに、雇用関係におけるトラブル未然防止策や、万が一トラブルが生じた場合の的確な対応についても相談することができます。

建設業の働き方改革、鍵は「福利厚生」

今回の労働基準法の改正は、労働者一人ひとりの事情に応じて多様な働き方を選択できる社会の実現を目指した「働き方改革」の一環として実現されました。

本記事で紹介した取り組みを実施し、労働環境を改善していくことで、建設業における慢性的な人手不足の解消につながるでしょう。

その上で、人手不足の解消のためには、福利厚生の充実にも注力しておきたいところです。

 

 

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 まとめ

建設業においては、労働時間が不規則になることも少なくないため、管理者による従業員の労働時間・健康状態の把握が重要と言えます。

 

人材不足や従業員の満足度向上、人事管理業務の効率化などに課題を感じていらっしゃる企業様・ご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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