人手不足なのになぜ週休3日制?導入企業の狙いとは
昨年、安倍内閣が「働き方改革」の旗印を掲げて以来、日本中のメディアが連日のように「働き方改革」について取り上げ、一種のトレンドになっています。
「働き方改革」と一口に言っても、「長時間労働の是正」や「テレワークの推進」や「ダイバーシティ推進」、「同一労働同一賃金」や「副業解禁」など、その範囲は非常に広範囲にわたり、一体どこから手を付けるべきなのか、翻弄されて身動きが取れなくなっている企業も少なくありません。
そんな中で彗星のごとく現れたトピックが「週休3日制」です。
バブル期を上回る有効求人倍率を記録するなど、人手不足であえぐ企業が目立つ中、休日出勤を余儀なくされる企業も多く、さらに休日を増やす「週休3日制」なんてありえない、というのが一般的な受け止め方でしょう。
筆者は8月2日、NHKの「クローズアップ現代+(プラス)」で「週休3日制」について特集された際、人事コンサルタントのゲストコメンテーターとして、「なぜ今、週休3日制なのか?」について解説しました。
本エントリーでは、人手不足と働き方改革の両立に悩む企業が増えている中、どのような狙いで週休3日制の導入を決めているのでしょうか。その理由を解説します。
もしもこの記事をご覧いただいている方の中で、自社の福利厚生制度についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずはじめに「企業担当者必見!「福利厚生サービス」のおすすめ5選を解説」の記事をお読みください。
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「御恩と奉公」の時代は終わった
週休3日制を導入する企業側の狙いは大きく2つです。まず一つが目下抱えている「人手不足」に対する解決策としての「週休3日制」です。
「人手不足で猫の手も借りたいのだから、社員を休ませている場合じゃないのでは…?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、人手不足だからこそ真剣に考えなくてはいけないのが「この会社で働く魅力づくり」です。
「週休3日制」の導入で話題になった、佐川急便を傘下に持つSGホールディングスをはじめ、運輸業界は一部報道にもあった通り、非常に過酷な労働環境です。そのため、不人気業界となってしまい、新卒・中途採用を問わず、採用活動において一段と苦戦を強いられています。さらに、これだけ求人が活況を呈していると、転職の選択肢も広がるため、「働き方を変えたい」という思いを持った人が次々と退職をしてしまいます。
事業計画を達成する上で、人員計画は非常に影響度が大きいです。それゆえ、思うように人が採れない、あるいは想定よりも多くの社員の離職があると、事業計画の達成はたちまち困難となってしまいます。
そのため、「人材確保」は経営戦略上、非常に重要なのですが、適正な人材確保を実現するためには採用という足し算の発想と、離職という引き算を抑える必要があります。
「採用」という足し算を積み重ね、「離職」という引き算を抑制するためにこそ必要なのが、働く職場としての「競合優位性」です。
他社よりも魅力的な「職場づくり」ができれば、採用力も高まりますし、他社に転職してしまう人材流出のリスクも最小限に抑えることができます。
そうした魅力ある、競合優位性の高い「職場づくり」のための手段の一つとして、働き方改革は非常に有効です。とりわけ、激務で休日が少ないとされる運送業・サービス業においては、「働き方を変えたい」というニーズを持っている働き手が非常に多いため、さらに効果は絶大です。
今回、SGホールディングスが「週休3日制」や「副業解禁」といった働き方改革に踏み込んだのも、今まさに直面している人材難を乗り越えるための起死回生の一手としてチャレンジしていると言えるでしょう。
休みはどう過ごす?「休み方改革」が鍵を握る
「週休3日制」によって得られる果実は、人材確保だけではありません。「週休3日制」によって、トータルの残業時間が減り、休みが月4日増えることで、個人が自由に使える「可処分時間」が増え、会社にこもっていては得られないイノベーションの種を蒔くことができるのです。
「可処分時間」が増えることで、生活時間が増えるため、仕事漬けになってしまうと忘れてしまいがちな「生活者視点」や「生活者発想」を取り戻し、これまでには思いつかなかったようなアイデアがひらめくようになります。
また、増えた「可処分時間」をどう活用するか、という観点も非常に重要です。
かつて日本ではまだ全く普及していなかった「週休2日制」を、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助が先駆けて導入した際、週2日ある休日の過ごし方を「一日休養、一日教養」というキャッチコピーで、一日はしっかり休養にあてて健康を維持しつつも、もう一日はただダラダラと無目的に過ごすのではなく、学問に励んだり、本を読んだり、教養を学ぶことで自己研鑽をしなさい、と説いたのです。
もし松下幸之助が現代も生きていたらどんなスローガンで「週休3日制」を普及促進するでしょうか。一日はしっかり休養にあてて、次の日は教養を学びインプットを充実させたなら、残る一日はそのインプットを活かしてアウトプット(価値創造活動)の時間に充てよ、という意味で「一日休養、一日教養、一日活用」というスローガンを掲げ、複業を含めた社外活動を積極的に奨励するかもしれません。
そうして、増えた「可処分時間」を活用して、自ら考え、自らの意思で時間のポートフォリオを考えるようになると、社員の自立度が高まり、優れたアイデアを発想しやすくなります。
SGホールディングスが「週休3日制」とセットで「副業解禁」を打ち出されているのを見ると、この辺りへの配慮や意欲を感じます。
もしうちの会社で週休3日制を導入したら?
「週休3日制」を導入しようとなると、既存の労働リソースを5分の4に減らして組織体制を設計しないといけないため、そもそもの既存の業務にムダはないか?をきちんと点検し、必要のない業務は止める、必要だがコアではない業務については、どんどんアウトソーシングしたり、テクノロジーやツールを導入して自動化・簡略化することで、業務ボリュームを20%削減する、というところまでセットで取り組まなければなりません。
なかなか気が遠くなるような話に聞こえるかもしれませんが、「働き方改革」に近道はありません。
自社の生産性を最大化するために、何が今ボトルネックになっているのか、そのボトルネックを解消するためにはどんな解決策が考えられるのを考え抜き、まずは一歩踏み出してみることが大切です。
実際に自社で導入するかどうかはさておき、「もしうちの会社で週休3日制を導入したら?」と思考実験をするところからはじめてみると、人事施策としても発想が広がっていきます。「うちの会社では週休3日なんてとても無理だ」と決めつけずに、「どうやったら週休3日で働けるか?」とポジティブに考えてみることをオススメします。
「週休3日制」によって、トータルの残業時間が減り、休みが月4日増えることで、個人が自由に使える「可処分時間」が増え、会社にこもっていては得られないイノベーションの種を蒔くことができるのです。
「働き方改革」何から取り組めば良い?
とお悩みの企業担当者の方へ
やるべきことが分からず、まずは今話題の残業の抑制から取り組んでみたという企業が約86%を超える中、その半数にも及ぶ、約44%の従業員が残業抑制に関する満足度を実感出来なかったと回答をしています。(※参考:LINE株式会社 livedoor NEWS 残業削減で「収入が減った」が3割 「生産性で評価して」という声)
このようにそもそもの目的を見失い、残業を減らしたり、休みを増やしたところで、従業員の満足度が下がればその施策は無意味なものとなります。
何から始めて良いのか分からない・従業員満足度を向上させたい、とお困りの企業担当者は、まずは福利厚生アウトソーシングサービスの導入を検討してみはいかがでしょうか。
福利厚生の充実は、従業員満足度の充実による労働生産性の向上、離職率の低下・採用力の強化(人材不足の補填)など、様々なメリットがあります。