リテンションマネジメントとは?必要性とメリット、導入事例を解説
人材採用のハードルが年々上がりつつある今、リテンションマネジメントは重要な人事戦略の一つです。
しかし、「リテンションマネジメントは本当に効果的なのか」「導入すれば離職率が改善するのか」といった疑問を抱く方は少なくないでしょう。
そこでこの記事では、リテンションマネジメントが注目される理由とメリット・デメリットを解説します。また、リテンションマネジメントを成功させるためのポイント、導入事例についても触れていますので、導入を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
リテンションマネジメントとは
リテンションマネジメントとは、人材流出を防ぐための取り組みを行うとともに、全ての従業員が継続かつ安定して働き続ける環境を構築することです。維持や引き止めといった意味を持つリテンション(retention)と、会社といった組織管理を意味する(management)を組み合わせた言葉であり、人材を確保して組織を維持することを指します。
少子高齢化の影響を受け、人材確保が難しい昨今は、人材流出を防ぐための施策であるリテンションマネジメントが注目されています。
また、リテンションマネジメントに似たような取り組みとして「オンボーディング」があげられますが、こちらは新たに採用された人材が働きやすくなるための方法で、リテンションマネジメントとあわせて取り組まれることが多いです。
リテンションマネジメントが注目されている理由
リテンションマネジメントが注目されている理由として、以下の3つがあげられます。
・深刻な労働力不足
・離職率の高さと人材流動化
・働き方の多様化
深刻な労働力不足
昨今、少子高齢化によって、労働力として期待される10代後半から60代までの人口が減少しています 。定年を迎えた従業員が退職して組織の人数は減っていく一方で、新しい人材をいつまでも採用できないという悪循環に陥っているのです。
このような中、厚生労働省は働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高齢者雇用安定法の一部を2021年に改正し、企業に対して定年の引き上げや定年制の廃止など、70歳までの就業機会を確保するよう努力義務を設けました。
しかし、出生率の低下によって労働力不足が解消される状況にまでには至っておらず、今後も深刻な労働力不足が続くと考えられています。
離職率の高さと人材流動化
これまで日本企業のスタンダードであった終身雇用や年功序列は、日本経済の低迷や成果主義を採用する企業が増えてきたことにより崩壊しつつあります。そのため、一社で長く働き続けるよりも、より良い条件の会社に転職するキャリアアップ志向の労働者が増え、今や転職は珍しいものではなくなりました。
また、転職市場は人手不足による売り手市場、つまり求職者に有利な状況といわれており、職探しをしやすくなったことも離職率が高くなった要因の一つです。人材の流動化が高まっている状況において、自社の人材が流出しないようリテンションマネジメントに取り組む企業が増えています。
働き方の多様化
労働者が個別の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現をすべく、政府主導のもと行われた「働き方改革」により、働き方の多様化が進みました。
働き方の多様化は従業員の価値観にも影響を与えており「ワークライフバランス」を重視する労働者が増えています。
特に、若年層は就職してからワークライフバランスがとれないことや、企業との価値観の違いを理由に離職することも多いため、柔軟な働き方への対応が求められます。
リテンションマネジメントのメリット
続いて、リテンションマネジメントのメリットをみていきましょう。具体的には以下の5つがあげられます。
採用コスト・教育コストの削減
従業員が定着しない企業では、新規採用者への教育コストがかさむ傾向にあります。しかし、リテンションマネジメントによって人材定着率を上げられれば、採用活動における費用のみならず、採用に関わる担当者の負担軽減にもつながります。
長期的な事業計画の推進
企業の成長や事業拡大においても、リテンションマネジメントによる人材の定着は重要です。従業員は長く業務に従事することでより多くの経験を積み、専門的なスキルが磨かれていきます。そういった従業員が増えれば結果として 配置をスムーズに行えるでしょう。
労働生産性の向上
既存の従業員が、新人研修や指導に時間をとられてばかりいると、業務の負担が増えてしまい精神的にも負荷がかかってしまいがちです。その点、リテンションマネジメントによってベテラン従業員が増えていけば、業務への慣れや効率アップの側面から労働生産性の向上に期待できます。
従業員の満足度・エンゲージメント向上
リテンションマネジメントを推進し、働きやすい職場環境を構築できれば、従業員の満足度やエンゲージメントの向上にもつながります。携わっている業務の意義や仕事のやりがいに気付いてもらうことで、パフォーマンス発揮や主体性を高めることにも結びつき、結果的には業績アップにもつながるでしょう。
企業ブランディング
離職率が低い企業は「従業員を大切にする」といったプラスのイメージを抱いてもらいやすいです。企業イメージが良くなることは、求職者だけでなく消費者や取引先にも好印象を抱いてもらいやすくなるため、集客や売り上げの面においても好影響が期待できます。
リテンションマネジメントのデメリット
リテンションマネジメントには少なからずデメリットもあるため、導入を検討する際は以下の3つに留意する必要があります。
労働環境や社内制度の改善に時間や労力がかかる
労働環境や社内制度の改善や見直しにおいては、時間や労力そしてコストがかかります。特に、社内制度を創設する場合はゼロから仕組みを構築していくため、想定以上に手間がかかることもあるでしょう。十分な効果を得るためには、これらを想定したうえで改善に取り組む必要があります。
専用のツールやシステムの初期投資が必要
例えば、従業員の基本情報やスキルなどのデータを集約するタレントマネジメントシステムの導入では、初期費用や維持費が発生します。他にも、新たなデバイスや専用ツールの導入なども考えられるため、トータルコストも含めて慎重に判断することが大切です。
中長期的に施策や管理をする必要がある
リテンションマネジメントは、働き方を取り巻くルールや従業員のニーズに応じて柔軟に対応していく必要があります。従業員の声に耳を傾けながら、リテンションマネジメントの施策を少しずつ改良していくことは、従業員のモチベーション維持にも必要な措置です。一朝一夕でできるものではなく、日々改善していくことが求められます。
リテンションマネジメントを成功させる6つのポイント
リテンションマネジメントは、以下のポイントを押さえることが成功への近道となります。
自社の状況把握
まずは「離職の原因として考えられることは何か」「チームの課題は何か」を定性的、定量的に把握します。従業員に対してアンケートや面談による聞き取りを行えば、従業員の満足度を下げる要因や不満がみえてくるはずです。
コミュニケーションを活発化できる環境の整備
例えば、オフィスの仕切りをなくしてオープンにしたり、気軽に集まれるフリースペースを設置したりすることで、従業員同士がコミュニケーションをとりやすくなるかもしれません。意思疎通がしやすい職場は従業員の働きやすさへとつながり、コミュニケーションが活発になれば従業員が定着しやすくなります。
人間関係におけるサポート
人間関係に問題を抱えている部署や従業員の把握に努め、問題に対し迅速な対応をとることで大きな問題に発展する前に対処できます。素早い対応は、職場でのストレス軽減や離職率の低下にも結びつくでしょう。
福利厚生の整備と充実
福利厚生の充実には、従業員の健康増進や金銭面でのサポートが効果的です。健康診断はもちろんのこと、精神的な健康をサポートできる悩み相談室の窓口設置など心身の健康管理にも目を向けてみてください。
また、金銭面では住宅補助や子育て支援補助などの福利厚生が良いでしょう。資格取得補助やアニバーサリー補助なども含めて、従業員の意見を取り入れながら整備していくことをおすすめします。
給与体系の見直し
従業員が給与に不満を感じ始めると、離職につながりやすいです。経験やスキル・責任に見合った給料となるよう見直し、透明性のある給与体系を整える必要があります。
例えば、個人に対してインセンティブを出す、あるいは部署ごとでインセンティブを出すなど、企業にとって好ましい成果を評価する仕組みをつくることも方法の一つです。
評価基準の明確化
人事評価に納得できない従業員の多くは、評価基準の曖昧さと透明性に欠ける点に不満を持っています。不信感を軽減するためには、評価基準を明確化し、従業員全員に共有する機会を設けることが大切です。
また、上司だけではなく同僚や部下を含む多方面の従業員から評価をしてもらう「360度評価」や、マネジメントシステムによって評価を可視化する手法も評価基準を明確化する方法の一つです。
リテンションマネジメントの導入事例
ここからは、リテンションマネジメントの導入事例を紹介します。各企業の成功ポイントをぜひ参考にしてみてください。
クックパッド株式会社
レシピ投稿サイト「CookPad」を運営しているクックパッド株式会社では、オフィス近隣にレンタルキッチンスペースを設け、気軽にメンバー同士で料理を楽しめるようにしたり、農業体験を通じて生産者と交流したりするなど、従業員の主体的な取り組みの支援を行っています。
また、言語習得を支援する語学サポート制度やイギリスオフィスへの短期出向プログラム制度など、グローバルな人材育成に向けた積極的な支援も展開しています。
サイボウズ株式会社
ビジネス向けのソフトウェア開発や運用を行うサイボウズ株式会社は、働く時間や場所を自分で全て決められる「働き方宣言制度」や、子どもを連れて出社する子連れ出勤制度など、一人一人の実情に
あわせた制度が特徴です。
また、社内コミュニケーション活性化をはかる取り組みとして、5人以上集まった部活動に活動費を出したり、誕生月の従業員が集まって開催する誕生日会に祝い金を出すなど、コミュニティ形成の支援も積極的に行っています。
株式会社ヒューゴ
Webサイトの設計や運営を行う株式会社ヒューゴでは、スペイン発祥の「シエスタ」を取り入れ、午後1時から4時までの3時間を従業員の自由時間としています。
長時間の昼休みを確保する海外の企業が高い成果を上げている事例に目を向け、実際に導入したところ従業員の残業時間が大幅に減り生産性が上がったことに加え、制度を知った中途採用の応募者も増加しました。
トヨタ自動車株式会社
世界トップクラスの自動車メーカーであるトヨタ自動車株式会社は、賃金体系における年功序列制度を撤廃し、工場などで働く技能系社員を中心に賃金の見直しを行いました。その結果、若手社員のモチベーションが大幅にアップしたといいます。
また、優秀な社員は定年後であっても定年前と同様の賃金や待遇で働けるよう改善した他、従業員が自由に福利厚生を選べる選択型福利厚生制度を導入したことで、離職率を抑えることに成功しています。
リテンションマネジメントの促進はベネフィット・ワンにお任せください
企業が安定かつ継続的な経営を目指すには、リテンションマネジメントを通じて社員が働きやすい環境づくりを進めていく必要があります。
しかし、リテンションマネジメントの施策にはいくつの方法があり、例えば「福利厚生」の一つをとっても、従業員が満足する制度を独自に構築することは容易ではありません。
今後もし、福利厚生の整備や充実をお考えであれば、手間をかけずに導入できる「ベネフィット・ステーション」をぜひご検討ください。
ベネフィット・ステーションでは、従業員の多様なニーズに応えられる満足度の高いサービスを提供しています。eラーニングなど学習コンテンツによるスキルアップ支援もありますので、従業員の離職防止やエンゲージメント向上の一環として、取り入れやすい福利厚生制度の導入から検討してみてはいかがでしょうか。
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