従業員エンゲージメント

インセンティブとは?【企業担当者向け】最小コストで導入する方法も伝授

社員のモチベーションを上げるための施策の1つがインセンティブ制度ですが、「導入したものの、思ったような成果が出ない」という企業も多いのではないでしょうか。

この記事では、インセンティブ・インセンティブ制度とは何かを詳しく解説するほか、導入で失敗しないためのポイントや成功事例を具体的にご紹介します。

【10分で分かる】企業が知るべき「インセンティブ」とは

インセンティブとは?まず知っておきたい基礎知識

インセンティブとは

語源と基本的な意味

インセンティブ(incentive)という言葉は、ラテン語の「incentīvus」(刺激的な、扇動的な)に由来します(※1)。

現在では「意欲を起こさせるもの」「やる気を刺激するもの」という意味で広く使われており、単なる「報奨金」という狭い概念を超えて、社員の行動や成果を促進するあらゆる動機づけを指すようになりました。

※1:Oxford English Dictionary. “incentive, adj. and n.” OED Online. Oxford University Press. https://www.oed.com/dictionary/incentive_adj?tab=factsheet#775592 (参照日:2025年10月11日)

ビジネスにおける意味

ビジネスにおけるインセンティブとは、企業が設定した目標を社員が達成した時や目標達成に貢献した場合に、その努力に報いるために提供される報酬や仕組みのことです。

報奨金のような金銭的な報酬はもちろん、表彰や承認、昇進、達成感などもインセンティブとして位置づけられます。

インセンティブ制度の定義

インセンティブ制度とは、金銭的・非金銭的な報酬や仕組みを組み合わせて社員のモチベーションやロイヤリティを継続的に向上させ、企業の生産性や価値の向上につなげるための総合的な取り組みです。単発の報酬ではなく、評価軸や目標設定、付与ルール、運用方法までを含む継続的な制度設計を含めたものを指します。

普及した背景

インセンティブ制度が注目される背景には、労働環境の大きな変化があります。終身雇用制度の見直しや成果主義の導入、深刻な人手不足により、企業にとって優秀な人材の確保と定着が困難になったためです。

具体的には、以下のような状況が制度への関心が高まる要因となっています。

  • 離職率の高さと採用コストの増大
  • 社員のモチベーション低下と生産性の伸び悩み
  • 優秀な人材の他社への流出
  • 多様化する社員の価値観への対応

加えて、チャットツールやクラウドサービスの普及によって称賛やポイント付与を日常的に運用できる技術的基盤が整ったことも、制度普及を後押ししているといえるでしょう。

インセンティブと似た用語の違い

インセンティブと混同されやすい用語について、それぞれの特徴と違いを一覧表にまとめました。

用語 支給基準 対象 特徴
インセンティブ制度 個人の成績・目標達成 個人・チーム単位 基本給+追加報酬
金銭・非金銭の両方を含む総合的な仕組み
歩合給 売上・契約件数に連動 個人単位 成果に応じた変動給
完全歩合制はリスクが大きい
ボーナス(賞与) 企業業績・在籍期間 全社員 定期支給
個人成果の反映は限定的
給与アップ 昇進・査定結果 個人単位 恒久的な基本給増
一度上げると下げることは困難
報奨金 特定の成果・貢献 個人・チーム 一時的な金銭報酬
単発的な性格が強い
モチベーション やる気そのもの
(インセンティブはその手段)
歩合給との違い

歩合給は成果に直接連動する変動給で、完全歩合制の場合は基本給がありません。成果に対するリターンが大きい反面、成果が出ない月は収入が大幅に減少して生活が不安定になるといったリスクもあります。

一方、インセンティブ制度では基本給を保証しつつ目標達成時に追加報酬を提供するため、社員にとってリスクが少なく安定性があるといえるでしょう。

ボーナスとの違い

ボーナスは企業全体の業績に基づいて支給されるため、個人の努力や成果が直接反映されにくい特徴があります。夏・冬合計で基本給3カ月分などと目安が定められていることが多く、社員が自分の成果が反映されているという実感を持つことはまれです。

インセンティブは個人の成績に応じて支給されるため、社員は自分の頑張りが報酬に直結することを実感できます。

給与アップとの違い

給与を上げることでも社員のモチベーションアップは見込めますが、一度上げた給与を下げることは難しく、毎月同じ金額が支給されると金額に慣れてしまうため、モチベーションを保つ効果はすぐに薄れてしまいます。

報奨金・モチベーションとの違い

報奨金もインセンティブの一種ですが、特定の成果に対する一時的な金銭報酬で、単発的な性格が強いものです。

インセンティブにはこのような単発的なものから継続的に運用するものまで、幅広い形があります。

また、モチベーションはやる気そのものを指すのに対し、インセンティブはそのやる気を引き出すための具体的な手段や仕組みを指します。

インセンティブ制度のメリット

社員の持続的なモチベーション向上

インセンティブ制度の最大のメリットは、社員のモチベーションを短期間で向上させ、それを持続させられることです。個人の成績や成果が明確に評価されるため、社員は自分の努力が認められていることを実感できます。

目標が明確になることで社員は自然と目標達成に向けて工夫や努力をするようになり、管理職による細かな指示に頼らない自律的な行動が促進されるでしょう。

優秀な人材の確保と定着

成長志向の強い人材や成果に自信を持つ人材を中心に、基本給以外のインセンティブに魅力を感じる求職者が増えているといわれています。努力次第で追加報酬を受け取れる環境は、こうした人材にとって大きな魅力となるはずです。特に営業職や専門職の採用において、インセンティブ制度の有無は応募者数や質に影響を与える可能性があります。

また、やる気が持続することで離職を防ぐ効果も期待できます。社員が「頑張れば報われる」環境を実感できれば、他社への転職理由が減少して離職率の改善につながるでしょう。

組織全体の生産性向上

個人のモチベーション向上は、組織全体の生産性向上に直結します。社員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮することで、企業の競争力強化が期待できるでしょう。

また、成果を出した社員が社内で注目されることで他の社員にも刺激を与え、組織全体のレベルアップが促進されます。

柔軟な制度設計と文化の醸成

基本給を大きく動かさずに社員のモチベーションを向上させることができるため、景気や事業状況に合わせた柔軟な制度設計が可能です。

また、承認や感謝を「見える化」することで日常のコミュニケーションが活性化し、「良い行動が連鎖する」企業文化の醸成にもつながるでしょう。

インセンティブ制度のデメリット

評価の難しさと不公平感

インセンティブ制度では社員個人の評価が不可欠ですが、すべての業務で数値化による成果測定ができるわけではありません。営業職では成約件数や売上高など目に見える指標がありますが、事務職や企画職などでは定量的な評価指標の設定が困難な場合があります。

評価基準が曖昧だと社員間で不公平感が生まれ、「なぜ自分は貰えないのか」とかえってモチベーションの低下を招きかねません。

収入格差の拡大と組織への影響

金銭的インセンティブでは成果を出しやすい一部の社員に報酬が偏ってしまう可能性があるため、仮に能力の差だったとしても、収入に偏りが生まれることで組織内の結束力に悪影響を与える恐れがあります。

日本では年功序列や終身雇用といった従来の雇用慣行を背景に極端な格差に対する抵抗感が生じやすいため、慎重な制度設計が求められます。

収入の不安定化と心理的影響

金銭的インセンティブの支給が当たり前になると、基本給は変わっていないにも関わらずインセンティブが支給されなかった際に「貰えなかった」と感じる社員が出てきます。

これは心理的な収入減少感を生み出し、特に家族を養う社員にとっては大きなストレス要因となる可能性があります。

ノウハウ共有の阻害とチームワークの低下

個人の成果のみが評価されるインセンティブ制度では、成果を出した社員が仕事のノウハウを他の社員と積極的に共有しなくなる可能性があります。これは組織全体の知識やスキルの底上げを妨げるリスクとなり、長期的には競争力低下につながる可能性も孕んでいます。

また、必要以上に社員同士が競い合う事態になればチームで達成すべき目標があってもチームワークが欠如し、部署間の連携が悪化したり協力を渋ったりするような問題が生じる可能性もあります。

これらのデメリットの多くは、評価基準の透明化・金銭と非金銭の適切な組み合わせ・個人評価に加えチームも評価する・丁寧な説明といった設計と運用の工夫で軽減できます。導入前に「何のために行うのか」「どの行動を増やしたいのか」を明確にし、現場の声をヒアリングしながら段階的に進めるようにしましょう。

インセンティブの種類

インセンティブを「外発的インセンティブ」と「内発的インセンティブ」という大きな枠組みで捉え、さらに具体的な5つのタイプに分けて解説します。

外発的インセンティブと内発的インセンティブ

インセンティブは、動機の源泉によって大きく2つに分けられます。

外発的インセンティブは、外部(主に会社)から与えられる報酬や評価によって行動を促すものです。報奨金や表彰制度などが代表例で、即効性が高く効果を実感しやすいという特徴があります。ただし、効果は一時的になりがちで、継続的なモチベーション維持には工夫が必要です。

内発的インセンティブは、個人の内面から湧き上がる動機によって行動を促すものです。達成感や成長実感、やりがいなどが該当し、持続的なモチベーション向上につながりやすいという特徴を持っています。人間が本質的に持つ「認められたい」という気持ちを満たす動機づけです。

初期の行動促進には外発的手段を活用し、長期的な定着には内発的インセンティブを核に設計するのが基本的な進め方です。外からのきっかけで社員の心を刺激し、内側の動機として持続する状態を作ることこそ、インセンティブの本来の役割といえるでしょう。

インセンティブの5つのタイプ

外発的・内発的という区分に加え、インセンティブは報酬の性質によって5つのタイプに分けられます。

インセンティブタイプ 概要 具体例
物質的 金銭や物品による報酬 報奨金・特典交換・社内ポイント制度
評価的 承認や評価による報酬 優秀社員表彰・360度評価・業務プロセス評価
人的 人間関係による報酬 感謝の言葉・チーム達成感・サンクスポイント
理念的 企業理念への共感による報酬 社会貢献活動・理念体現活動
自己実現的 成長や達成感による報酬 キャリア開発・スキルアップ支援

物質的インセンティブは、金銭や有形の物品を報酬として提供することで動機づけを行うインセンティブです。営業成績に応じた報奨金や社内ポイント制度による特典交換などが代表例として挙げられるでしょう。即効性が高い反面、慣れによる効果の減少や収入格差への不満といった課題も存在します。

評価的インセンティブは、個人の成果や努力を公的に認知し、評価することで動機づけを行うインセンティブです。優秀社員表彰や上司・同僚・部下など多角的な視点での「360度評価」、日々の業務プロセスを評価する仕組みなどが代表例として挙げられます。「頑張りを認めてもらえた」という実感が、自信や継続的な努力につながるでしょう。

人的インセンティブは、人間関係や社会的つながりを通じて動機づけを行うインセンティブです。同僚からの感謝の言葉やチームで目標を達成した時の一体感、社員同士で報酬を送り合うサンクスポイント制度などが含まれます。組織全体の結束に効果的といえるでしょう。

理念的インセンティブは、企業の使命や価値観への共感を通じて動機づけを行うインセンティブです。社会貢献活動への参加や企業理念を体現する活動の推進などが該当します。

自己実現的インセンティブは、個人の成長や自己実現を支援することで動機づけを行うインセンティブです。研修制度の充実やキャリアパスの明確化、業務の裁量権拡大などが代表例として挙げられます。

インセンティブ制度に向いている職種

インセンティブ制度に向いている職種といえば、不動産業界や保険業界などの営業職を思い浮かべる方が多いでしょう。目標を達成した時に発生する報奨金、契約件数や売上金額に応じて支払われるインセンティブが代表的です。

しかし、インセンティブ制度はあらゆる業種・職種への導入が可能です。企業の業績を向上させるのは営業職だけではありません。顧客と接する職種はもちろんのこと、人事や経理などのバックオフィスも企業の経営において重要な役割を担っているのです。

営業職以外での具体的な活用方法

事務系の業務での活用

事務系の業務でも、工夫次第で効果的なインセンティブ制度を導入できます。例えば人事部門では採用目標の達成率や研修への満足度、経理部門では月の決算を早く終わらせることや業務改善の提案が採用された回数、総務部門では社内イベントの参加率アップや備品管理の工夫などを評価の対象にできるでしょう。

これらの成果に対するインセンティブとしては、社内ポイント制度による特典交換・表彰制度・スキルアップ研修を受ける機会・特別休暇の付与などが効果的。重要なのは最終的な「結果」だけでなく、そこに至るまでの「プロセス」や「チームへの貢献」も適切に評価することです。

販売代理店での活用

人手不足が深刻化する現代において、販売代理店の活用は重要な成長戦略の一つです。効果的な代理店インセンティブには、売上実績に応じた金銭的報酬だけでなく、商材研修の充実や営業支援ツールの提供、認定制度の導入などが含まれます。

代理店スタッフ個人へのインセンティブでは、最終的な売上実績だけでなく、商談件数や提案活動といったプロセスも評価対象とすることで、継続的なモチベーション維持が可能になります。

製造・技術系の業務での活用

製造業では品質向上や生産効率のアップ、安全管理に対してインセンティブを設定できます。

不良品率を減らすこと、生産目標の達成、無事故日数の更新、改善提案が採用された件数などが代表的な評価の基準。技術者やエンジニアには、プロジェクトを期限内に完成させること、技術研修への参加、特許の出願件数などを評価対象とする企業が増えています。

サービス・接客業での活用

サービス業や接客業では、お客様の満足度向上に直結する行動を評価することが効果的です。

お客様からの感謝の声、リピーターを増やすこと、新しい提案の件数、チームワークへの貢献などを見えるようにすることで、社員のモチベーション向上につながるでしょう。

企業課題ごとに適したインセンティブとは

離職率の低減・定着率の向上

社員の承認欲求を満たす非金銭的インセンティブが効果的です。社員同士で感謝を伝え合うサンクスポイント制度や日々の貢献を称える表彰制度により、職場への帰属意識を高められます。

また、スキルアップ研修や資格取得支援といった成長機会の提供も、長期的なキャリア形成への期待感を醸成し、定着率向上に寄与します。

売上・粗利の拡大

明確な数値目標と連動した金銭的インセンティブが威力を発揮します。例えば営業成績に応じた成果報酬や四半期ボーナスは、短期的な業績向上を促進することが可能。

最終結果だけでなく商談件数や提案活動といったプロセス評価も組み込むことで、健全な競争環境を構築できるでしょう。

イノベーション創出を促進

創造性を刺激するインセンティブが重要になります。新規アイデア提案への報奨金制度や、失敗を恐れずチャレンジした取り組みを評価する表彰制度が有効。特許出願数や改善提案件数を指標とするインセンティブも考えられます。

部門間のシナジー強化

協働を評価する制度設計が必要です。部門横断プロジェクトの成功に対する合同表彰や他部署への貢献度を評価するサンクスポイント制度を取り入れれば、組織の連携強化を図れます。情報共有頻度や合同取り組みの成果をKPIとして設定すると効果的でしょう。

生産性の向上

作業効率化や品質向上の貢献を評価することで、皆が作業効率を意識して労働するようになり、生産性の向上が見込めます。

また、このような評価をポイント化して休暇と交換できるようにしている企業もあります。休暇によるリフレッシュで、さらに良いサイクルが生まれます。

インセンティブに関するQ&A

Q1. インセンティブ制度を導入する際、就業規則への記載は必要ですか?

はい、就業規則への記載が必要です。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則の作成・届出と賃金に関する事項の記載が義務付けられています(労働基準法第89条)。

また、雇入れ時には労働条件の明示義務があります(同法第15条)。

Q2. インセンティブの支給は所得税や社会保険の対象になりますか?

はい、給与所得として所得税の課税対象となります。

社会保険については、支給間隔により取り扱いが異なります。

  • 3カ月以内の定期支給:「報酬」として標準報酬月額に反映
  • 3カ月超の間隔・臨時支給:「賞与」として標準賞与額で処理

現物支給(商品券・旅行券・物品等)も現物給与として課税対象です。制度設計時には支給間隔が税務・社会保険に与える影響を考慮し、年金事務所や社労士への事前相談をおすすめします。

Q3. 営業職以外でも効果的なインセンティブはありますか?

はい、あります。事務職では「業務効率化提案の採用」「ミスの削減」、エンジニアでは「コード品質改善」「技術資格取得」、バックオフィスでは「コスト削減提案」「業務マニュアル整備」などを評価できます。具体例として、社内ポイント制度による同僚への感謝の「見える化」、プロセス重視の表彰制度、スキルアップ研修機会の提供などがあります。

重要なのは、各職種の特性に応じた評価基準を設定し、チーム連携を促進する仕組みを取り入れることです。

Q4. 成果給の支給間隔が残業代計算に与える影響は?

残業代計算への影響は、制度の名称ではなく支給間隔によって決まります。労働基準法施行規則第21条により「1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金」は残業代計算の基礎から除外されます。

【具体例での比較】

  • 毎月支給される成果給(名称問わず)→ 残業代計算の基礎に含まれる
  • 四半期・半期・年1回の成果給(名称問わず)→ 残業代計算の基礎から除外

例えば、基本給20万円に加えて:

  • 毎月5万円の歩合給 → 基礎賃金25万円で残業代計算
  • 四半期ごと15万円のインセンティブ → 基礎賃金20万円で残業代計算

同じ年間60万円の成果報酬でも支給間隔により企業の残業代負担が大きく変わるため、制度設計時の重要な検討要素となります。

Q5. 同一労働同一賃金への配慮で注意すべき点は?

正規・非正規雇用者間で不合理な待遇差が生じないよう、業務内容・責任・成果への貢献度に応じた公平な評価基準の設定が必要です。

特に同一職務に従事する場合は、雇用形態にかかわらず同等のインセンティブ機会を提供することが求められます。基準を明確化し、説明可能性を確保することが重要です。

インセンティブ制度の賢い活用術~導入手順から企業成功例まで~

インセンティブ制度設計方法・3つのポイント

次に、メリットを最大限に生かしつつ、失敗しないインセンティブ制度設計に大切な3つのポイントをみていきます。

1.制度の対象

優秀な社員を評価したいというのは、もっともなことでしょう。しかし、インセンティブ支給の対象を一部の上位社員のみに絞ってしまうと、その他の社員のモチベーションが低下するリスクがあります。

社員全体を対象に

組織は「2:6:2の法則」であるといわれています。この法則は「働きアリの法則」としても有名ですからご存じの方も多いでしょう。

組織を構成すると、2割のハイパフォーマー、6割のミドルパフォーマー、2割のローパフォーマーに自然と落ち着く、という法則です。

上位2割はインセンティブがなくてもよく働くことから、残りの8割のやる気を引き出すことで組織全体のパフォーマンスがアップすると考えられます。

達成できる目標を

社員全体を対象にしたインセンティブ制度設計では、一般の社員が到達できそうにない高い目標を設定してはいけません。目標達成時のインセンティブがどれほど高額であったとしても、達成する見込みがないのであればやる気は起こらないのです。

社員それぞれが努力することで達成可能な目標を設定することが重要です。

事業内容によっては、個人ではなくチームを対象としたインセンティブも有効でしょう。

2.評価方法

社員ひとりひとりが成果をだせば、企業の業績アップにつながります。しかし成果だけを評価することには、社員間で不公平感を生んでしまうリスクもあります。

最終的な個人成績だけが評価される場合、社内の人間同士がライバル関係となってしまい、必要な情報の共有がなされない可能性もあります。後輩への指導を行わない社員や、チームで動いた結果である成果を独り占めしてしまう社員がでてくるリスクもあるでしょう。

成果達成までのプロセスやチーム・育成への貢献度も評価する

インセンティブ制度を成功させるためには、最終的な成果だけでなく、成果に至ったプロセスやチームへの貢献、指導・育成などの課題への取り組みについても評価することが求められます。

3.持続性を重視:金銭的インセンティブ以外の選択

金銭的インセンティブには、収入格差や収入が不安定になるなどのデメリットが目立ちます。目の前に報酬をちらつかせることで、短期間で成果を上げられる可能性は高まりますが、持続して成果を上げ続けられるとは限りません。

また、今の時代、個人の働き方はさまざまですから、金銭的報酬がモチベーションアップにつながるとも限らないのです。

インセンティブ制度設計では、金銭的報酬以外の方法でも、社員のモチベーションを上げる工夫が必要です。

承認欲求を満たすインセンティブ

「人に認められた時」にやる気がでる、という人は多いでしょう。

アメリカの心理学者アブラハム・マズローによると、人間は他人から認められたいという欲求を本質的に持っているそうです。つまり承認欲求は誰にでもあるのです。

そして、承認欲求が満たされないと劣等感や無力感を感じてしまいます。

企業に合ったインセンティブを

個々の承認欲求を満たす仕組みとして、表彰制度などがあります。個々のがんばりを認め合えるように社員同士のコミュニケーションを促進する仕組みを整えるのもよいでしょう。

企業の抱える課題に合ったインセンティブ制度設計を行うことがポイントです。

インセンティブ制度の好事例

インセンティブ制度導入の5つの好事例をご紹介します。

オリジナル社内ポイント制度で承認を仕組み化

※参考:株式会社ベネフィット・ワン

独自の社内ポイント制度で業績アップ

株式会社ベネフィット・ワンは、インセンティブ制度として社内ポイント制度「Benefit-one Incentive Point(通称:BIPo)」を実施し、プロセス評価や社員同士の360°評価を仕組み化することで、持続的に成長できる組織をつくっています。

プロセス評価の積み重ねにより営業のモチベーションが向上し、前年比360%の業績アップという効果がでました。

少額でも貯められるポイント

ベネフィット・ワンの社内ポイントは少額でも貯められるので、細かな評価にも使える特徴があります。日々の小さな評価が形になることで、社員の承認欲求が満たされます。

貯めたポイントは40,000以上のアイテムやサービスと交換できます。

プロセス評価

個人のレベルに合ったプロセス評価により、若手でも小さな成功を積み重ねることができ、自信やモチベーション向上につながります。

コミュニケーションの仕組み化

社員同士でポイントを贈りあうことができるため、コミュニケーションが仕組み化されています。「ありがとう」という感謝の気持ちに少額のポイントを添えられます。

名誉×報酬でモチベーションアップ!

※参考:プルデンシャル生命保険

名誉と報酬で一体感と組織力を強化

プルデンシャル生命保険では、貢献に応じた「報酬」があることを前提に、より持続的なモチベーションを高めるために「名誉」という精神的充足感を満たすことに重きを置いています。

結果として、中途採用が多い組織でも一体感を醸成、組織力の強化につながりました。また、プロセスの追及の先に結果がついてくることに気づくきっかけとなったそうです。

「名誉」をインセンティブに

社員同士360°評価を行い「承認される」機会を増やすことで、社員のモチベーションアップにつながっています。

成果に至るまでのプロセス、努力をインセンティブに紐付け

重要な営業プロセスを達成した社員に対してインセンティブを設定していることで、小さな成功体験を促すことが可能となっています。

太田肇「表彰制度: 会社を変える最強のモチベーション戦略」東洋経済新聞社2013

「ありがとう」の見える化で企業理念を体現

※参考:株式会社ベアーズ

「ありがとう」の見える化で小さなことでも感動・感謝する心を大切に

家事代行サービス業の株式会社ベアーズでは、顧客に満足以上の感動を届けることを企業理念としており、社員同士でも感謝と思いやりを持ってそれを伝え合うことを大切にしています。

結果として、4,500人ものスタッフに対して「小さなことでも感動・感謝する心」を大切にする企業理念が現場レベルで体現されているそうです。

リボン賞で数値化できない貢献を見える化

社員同士で感謝する気持ちを伝えあう制度としてリボン賞を設定しています。リボンの数は感謝の数の証となり、数値化できない貢献を表しています。

社員同士で成果給を贈りあう

 ※参考:株式会社メルカリ

メルチップ導入で社員満足度約87%

メルカリは社員同士で成果給を贈りあえる独自のピアボーナス制度「mertip(メルチップ)」を導入することで、賞賛・承認し合う企業文化をつくっています。

結果として、社内満足度約87%、「仕事をみてくれている」という感覚が醸成されたそうです。

インセンティブ制度おすすめサービス

インセンティブ・ポイント:ベネフィット・ワン

株式会社ベネフィット・ワンが、自社の人材育成のために開発した社内ポイントBIPoから生まれたサービスです。

特徴
  • 手間なく簡単に社内ポイントプログラムを実現
  • 多様なニーズに合わせて、約20,000点から好きなアイテムと交換可能
  • コミュニケーション活性、社内環境の改善につながるサンクスポイント機能搭載
  • 導入により150%の売り上げUPに成功した例など、確実な導入効果を実感

関連記事

インセンティブ・ポイントによって社員のモチベーションを向上させている事例は、「現金報酬だけじゃない!企業のインセンティブ制度事例10選」でも紹介しています。

主な導入企業
  • 損保ジャパン日本興亜保険サービス株式会社
  • 大塚製薬株式会社
  • ボッシュ株式会社
  • 株式会社アルビオン

インセンティブ・プラス:イーウェル

東急不動産を親会社に持つイーウェル株式会社が提供するサービスです。

特徴
  • ポイントはコンビニエンスストアで利用可能
  • ポイント交換商品は6万点以上
主な導入企業
  • 株式会社東急ハンズ

インセンティブ・プラス公式サイトはこちらから

Unipos:Unipos株式会社

Unipos(ユニポス)は、社員同士で成果給を贈り合えるピアボーナスの仕組みです。

特徴
  • SlackやChatWorkなどのチャットツールから気軽に投稿
  • タイムラインで全社共有可能
  • 貯まったポイントは給与にプラスして支給可能
主な導入企業
  • フュージョン株式会社
  • 株式会社TABI LABO
  • クラウドエース株式会社

Unipos公式サイトはこちらから

【注目】低コストで導入できるインセンティブ制度とは?

インセンティブ制度の自社構築にはシステム開発・商品調達・在庫管理・発送業務・問い合わせ対応など多くの準備が必要で、数百万円のコストと半年以上の時間が必要になるケースが一般的でしたが、昨今では既存サービスを活用して低コストで導入することもできるようになってきました。

既存サービスを利用する主なメリットは以下の3点です。

  • システム開発費の削減:完成済みプラットフォームを利用
  • 運用業務の簡素化:CSV管理や自動通知により、付与・管理の手間を大幅に軽減
  • 交換できるサービスや商品が多様:利用者の幅広いニーズに対応

売上150%UPを叶えた「インセンティブ・ポイント」

約18,100団体(2025年4月現在)が導入する総合福利厚生サービスで豊富な実績を持つベネフィット・ワンが提供する「インセンティブ・ポイント」なら、ポイント付与からアイテム交換、カスタマーサポートまでワンストップで解決できます。

従来の課題を解決する循環システム

インセンティブ・ポイントを導入すれば、「頑張る→褒められる→ポイントを獲得→アイテムと交換→また頑張るモチベーションにつながる」という好循環の仕組み化が可能。従来の成果主義では「努力がなかなか評価されない社員」が生まれがちでしたが、結果だけでなく努力のプロセスも評価できる点が最大の特徴といえるでしょう。

驚異的な成果を生む3つの仕組み

インセンティブ・ポイントの導入企業からは、売上150%UPの事例が複数報告されています。

愛知県でアミューズメント施設を運営する株式会社遊都では、理念浸透とインセンティブ制度を連動させることで売上高152.7%アップを実現しました。また、ベネフィット・ワン自身の活用においても前年比360%の業績アップという驚異的な成果を達成しています。

成果を達成できる主な要因は以下の3点です。

1. きめ細かなプロセス評価

月間MVPには30,000ポイント、業務改善提案には5,000ポイント、誕生日には3,000ポイントなど、インセンティブ・ポイントはさまざまな場面で社員の頑張りを認める機会を設けることができます。この細やかな評価により若手社員も日々の努力が認められることで自信がつき、より積極的に業務に取り組むようになります。

加えて、サンクスポイント制度を使って社員同士がメッセージを添えてポイントを贈り合うことが可能。職場に「褒め合う」文化が根付くことが期待できます。

心理的な安全性が高まればノウハウを共有する機会が増え、チーム全体のレベルアップや売上アップにつながるのです。

2. 企業独自のカスタマイズ性

インセンティブ・ポイントはポイントの名称から付与基準、ロゴや色味まで企業に合わせたカスタマイズをすることができ、他社にはないオリジナルのサイトを構築することができます。企業文化やメッセージを込めた制度設計により、社員のロイヤリティ向上効果も期待できるでしょう。

ポイントを交換できるサービス・商品は約40,000点。社員のライフスタイルやライフステージによって必要とするサービスが違っていても、幅広いニーズに応えることができます。

3.代理店への独自ポイント付与システム

社員に対してだけでなく、販売代理店へもポイントを付与することができます。キャンペーンやコンテスト、成約数や売上アップなど複数の評価ポイントを設けることで、売上の大きい代理店だけでなく、小規模でも尽力している代理店との関係も強化することができるでしょう。

インセンティブ・ポイント導入企業の成功事例

損保ジャパンパートナーズ

全国91の営業部支店(2025年4月1日現在)を持つ同社では、既存の制度では約10人に1人の営業成績者のみを表彰の対象としており、組織全体の士気向上に限界がありました。

営業組織強化のため、2016年度から「SHSポイント交換プログラム」を導入し、評価対象をトップセールス以外の営業職、エリア職、アソシエイト職まで幅広く拡大。年間目標達成が困難な状況の中、下期3カ月間の社内キャンペーンとして「インセンティブ・ポイント」を活用し、全員が目標達成を意識できる仕組みを構築したところ、営業の稼働率は前年対比約2倍にアップし、年間目標を達成することができました。

成功要因は、日々の努力を評価することで営業社員のモチベーション維持・向上ができた点。社員からは「自分の成果を息子に還元できて嬉しい」「家族みんなで楽しみながらプレゼントを選んだ」といった満足の声も寄せられ、家族を巻き込んだエンゲージメント効果も確認されています。

損保ジャパンパートナーズの事例を詳しく見る>>

ソラスト

医療事務・介護・保育の3分野でサービスを展開する同社(従業員33,616人、2025年3月末現在)は、人手不足により現場が疲弊し、離職率が40%近くに達する事態に。特に保育事業では保育士確保が困難な状況が続いていました。

転機となったのは、現場の園長先生からの「スタッフにポイントを付与してモチベーションにつなげたい」というアイデアです。「ソラストポイント」制度を構築し、本部から各園にポイントを付与。園長先生が活躍したスタッフにメッセージ付きでサンクスポイントを分配する仕組みを整備しました。ポイント付与時には「ありがとう」というメッセージを添え、表彰式でみんなの前で褒めることで承認欲求を満たしています。

導入後は、2年連続で離職率が10%以下まで低下。保護者からの満足度も上がり、スタッフのやりがいがサービス向上につながった事例となりました。

ソラストの事例を詳しく見る>>

コナカ

全国416店舗を運営する(2025年3月31日現在)紳士服チェーンである同社では、立地によりさまざまな属性のスタッフが働く中で心の健康を保つためのコミュニケーション向上が重要な経営課題となっていました。

同社が採用したのは、コミュニケーションアプリRECOGとインセンティブ・ポイントを組み合わせた「RECOGインセンティブ」。社員同士で称賛を伝えるレターを贈り合い、社員の”称賛レベル”を数値化し、社内への貢献を「見える化」しました。コミュニケーションに応じて貯まったポイントはインセンティブ・ポイントに移行。ポイントは豊富な商品やサービスと交換できるため、コミュニケーションにも自主性が生まれてきたようです。

重要なのは称賛文化を根付かせること。褒めるためにはまわりの人たちに気を配り、よい行動に気づく必要があります。インセンティブ・ポイントがお互いに関心を持つきっかけとなり、売上アップにつながった事例です。

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まとめ

インセンティブ制度は、運用方法次第では結果が出ないばかりか、逆に社員のモチベーションを下げてしまうこともあります。

持続的なモチベーション向上を可能にし、企業の業績アップにつなげるインセンティブ制度設計のポイントは、次の3つです。

  • 社員全体を対象に、達成できる目標を設定
  • 成果達成までのプロセスや、チーム・育成等への貢献も評価
  • 承認欲求を満たすインセンティブ

まずは気軽に導入できるインセンティブサービスを検討してみてはいかがでしょうか。

150%以上の売り上げUPに成功
社員のやる気を引き出すインセンティブ・ポイント

労働力人口が減少している今、一部の調査では日本で働く人の70%は“やる気がない”とも言われています。

優秀な人材が辞めてしまう…
営業のモチベーションが上がらない…
職場に活気がなく生産性が上がらない…

上記のような問題は、社員のモチベーションを向上させることで解決ができます。
モチベーションの向上は社員のエンゲージメントを高め、労働生産性の向上にもつながります。

社員のやる気を引き出すオリジナルのポイント制度”インセンティブ・ポイント”は、
・多様なニーズに合わせて、約40,000点から好きなアイテムと交換できる
・コミュニケーションが活性化され、社内環境の改善につながる
・導入により150%の売り上げUPに成功した例も。確実な導入効果を実感できる

ぜひこの機会に、社員のやる気を引き出すオリジナルのポイント制度を検討してみましょう。


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