働き方改革

第9回:福利厚生制度の費用対効果について

 これまで非正規従業員の待遇改善に関する判断基準を列挙してきた。まず、「同一労働同一賃金」の法理がある。それに関連して厚生労働省「同一労働同一賃金」のガイドラインも参考にしなければならない。前回は「対象となる従業員の範囲のバランス・整合性」も非正規従業員の納得性を高めるうえで重要であるとした。

さらに、「福利厚生制度の周知のしやすさ」も実務上重要な判断基準である。給与や手当、退職金は、従業員にとっては受動的に支給される。それに対して福利厚生制度の多く(慶弔給付、福利厚生的手当などは除く)は、従業員が能動的に利用しなければならない。スポーツ施設、リラクゼーション施設、人間ドック、育児・介護の費用支援、自己啓発、財産形成の自助努力支援、カフェテリアプラン、法人契約での各種割引サービスなどがこれに当たる。

 しかも、福利厚生は従業員が利用して初めて、その経営的効果が発揮される。たとえば、会社が自己啓発講座の割引利用制度を導入するだけではなく、従業員が受講して初めて従業員本人の能力向上につながる。

利用を促進するには制度の導入・設置だけではなく、制度の周知をしなければならない。周知方法には、社内イントラへの掲示、社内誌への掲載、朝礼での告知、休憩室や食堂でのポスター掲示などがある。

 福利厚生の利用対象者が正規従業員だけに限られている制度は、非正規従業員がいる場では告知しづらい。告知することで、非正規従業員の不満が高まる恐れすらある。つまり同じ職場にいる従業員であれば、正規・非正規問わず、福利厚生の利用対象とすることで福利厚生の利用が進む。

よって福利厚生制度の費用対効果を高める観点からは、できるだけ非正規従業員も対象とすることが望ましい。

  なお、非正規従業員を福利厚生の対象とすることで、実務上の運用課題が発生する。

 とくに、共済会や福利厚生パッケージ(福利厚生アウトソーシングサービスともいう)といった会員型の福利厚生については注意が必要である。

 福利厚生パッケージとは、従業員1人当たり月額300円前後の会費を事業主が負担して、従業員が利用できる低価格の福利厚生サービスである。こうした外部サービスを利用する際、アウトソーサーに対して対象者の入社による入会、退社による退会といった異動報告が必要となる。入退社が激しいと人事の事務の負担となったり、急な退社で異動報告が後付けになるという煩雑さを伴う。そこで、パートタイマーやアルバイトといった短期間で退職する可能性が高い雇用区分は、入社後一定期間経過後(6カ月、1年など)に加入対象とする工夫がなされている。

 

図表 待遇改善の判断基準

1 「同一労働同一賃金」の法理

2 「同一労働同一賃金」のガイドライン

3 対象となる従業員の範囲のバランス・整合性

4 福利厚生制度の制度周知のしやすさ

5 判決・判例

 

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