福利厚生
働き方改革

【こんなに充実!?】企業が育児と介護の両立支援を行う目的とは

この動画でわかること

  • 女性の社会進出により子供の面倒を見る人が必要になった
  • 企業は育児・介護など女性が離職する機会を減らそうと考えた
  • サポートするために企業内託児所や託児所の利用料の補助、ベビーシッターの補助をおこなった

時代が生んだ「新しい福利厚生」~仕事と子育て・介護の両立支援が当たり前に

かつての日本企業の福利厚生といえば、社宅や社員食堂、慶弔給付といったサポートが主流でした。しかし、時代の流れに伴い、さまざまな社会的変化と家族の変容、働き方の多様化から新たな福利厚生が求められるようになっています。その代表が「仕事と育児や介護の両立」を支援する制度。では、なぜ今「両立支援」が福利厚生の定番として重要視されているのでしょうか。本記事では、その背景や具体的な内容、今注目の制度について解説します。

なぜ「両立支援型福利厚生」が必要になったのか?

時代の変化と家族構成の多様化

戦前の日本は家族の人数が多く(大家族)、自宅と職場が近く、みんなで家業や農作業を分担していました。そのため、子どもや高齢者の面倒を見る人が常に身近にいました。しかし戦後、産業構造が「農業中心社会」から「工業中心社会」「都市型社会」へと大きく転換。サラリーマン家庭や核家族が主流となり、次のような新しい状況が生まれました。

  • 共働き家庭が増え、子育て中の両親が外で働くのが一般的に
  • 高齢親と同居しない世帯、ひとり親世帯、ワンオペ育児世帯の増加
  • 親の介護が必要になっても、近くに頼れる親族がいないケースが増加

こうした社会の変化が、「育児」「介護」という家庭事情と「仕事」を両立させるための制度を企業に求める流れにつながっています。

変わりゆく働き方と企業の責任

昭和の中ごろまでの日本の「標準世帯」は、夫が外で働き、妻が専業主婦として家庭を守るというものでした。しかし現代では女性の社会進出が当たり前になり、結婚・出産しても仕事を続けることを選ぶ人が増えています。

  • 育休や時短勤務が出産後もキャリアを諦めず働く選択肢となる
  • 企業側が子育てや介護を理由とする離職を防ぐ必要に迫られる
  • 多様な人生観・ライフイベントに寄り添うことが組織の競争力に直結

注目の最新福利厚生~両立支援型制度の具体的な例

育児を支援する福利厚生の充実

企業が用意する育児支援型福利厚生は、単なる「子育て手当」にとどまりません。

  • 企業内保育所・提携保育施設の利用サポート
  • ベビーシッター利用の補助制度や在宅勤務の推進
  • 育児休業、時短勤務、子の看護休暇などの多様な休暇・勤務形態

近年では、男性の育児休業取得や突発的な家庭事情に対応した「フレックス勤務」制度も評価されています。

介護に寄り添う福利厚生の拡大

平均寿命が延び、認知症など介護が必要な高齢者も増加。しかも“核家族”が標準となった今、自分一人や夫婦だけで親の介護を担うケースが一般的です。そこで企業も介護と仕事の両立をサポートする体制づくりに力を入れています。

  • 介護休業・介護休暇、時短勤務などの両立サポート制度
  • 介護サービスの費用補助や情報提供
  • オンラインによるケアマネジメントや社員向けセミナーの実施

国の介護保険制度だけではカバーしきれない部分を、企業が福利厚生として積極的に後押ししていることが特徴です。

企業も個人もメリット大!両立支援福利厚生が持つ効果

離職防止・人材確保と企業ブランド向上

「育児や介護を理由に会社を辞めるしかない」という状況が減るほど、企業にとっても貴重な人材の流出を防ぐことができます。実際、充実した両立支援制度は次のようなメリットをもたらします。

  • 従業員のモチベーションとワークエンゲージメントが向上
  • 組織への定着率・満足度が高まり、企業ブランドアップにつながる
  • 新規採用時のアピールポイントとなり競争力強化

ダイバーシティ推進・働く全世代のキャリア支援

男女問わず育児や介護にかかわる社員が共存しやすい職場づくりは、ダイバーシティ&インクルージョンの推進にも直結します。また年代・性別を問わないキャリア継続や再就職支援にも貢献しています。

まとめ~これからの企業が選ばれるための「新しい福利厚生」とは

仕事と家庭(育児・介護)の両立支援は、現代日本企業の福利厚生の新しい“常識”です。

  • 社会や家族構成・働き方の変化が「両立支援」を必要とした
  • 企業独自の育児・介護サポートは人材流出・人手不足対策にも直結
  • 社員の安心・満足度UP、企業競争力UPにもつながる重要施策

これからの人材獲得競争を勝ち抜くカギは、「従業員がどんなライフステージでも安心して働ける会社」であること。福利厚生のトレンドを把握し、自社独自の支援制度を進化させることが、高い生産性と組織力を生み出します。

可児さんサムネイル
【スピーカー】
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻:社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信

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<著書>
・「福利厚生アウトソーシングの理論と実務」(労務研究所)
・「共済会の実践的グランドデザイン」(労務研究所)
・「新しい!日本の福利厚生」(労務研究所)
・「実践!福利厚生改革」(日本法令) 他