株式会社物語コーポレーション
飲食 1001名以上- 目指す姿
- ・すべての従業員が経営理念「Smile & Sexy」を体現し、一人ひとりの明言が飛び交い、リーダーの育つ文化・風土
・「個の尊厳を組織の尊厳より上位に置く」企業文化の浸透
・ダイバーシティ&インクルージョンの推進により新たな価値を創造する
- 取り組みと施策
- ・イントラネット「物語Web」の活用による個対個のコミュニケーション
・インターナショナル人財採用、LGBT人財採用をはじめとしたダイバーシティ推進を体現
・マニュアルを踏まえながらそれぞれの「おせっかい」なホスピタリティの提供
- 企業文化を浸透させるために
- ・経営陣が企業文化を本気で体現しようとする姿勢や信念
・技術や経歴だけでなく理念・人柄を重視した採用戦略
「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」をはじめとした飲食店を、日本全国に展開する株式会社物語コーポレーション。
株式会社ベネフィット・ワンの提供するインセンティブ・ポイントと連携する「焼肉きんぐ」の公式アプリから、ポイントシステムを利用して募金ができるサービス「新型コロナウイルス感染症危機対応募金」が話題となっています。
世界中がコロナ禍にあえぐ中で、力の限りを尽くしている医療従事者支援への取り組みは、ある一人の社員が発信した一通のメールからはじまりました。
一人の社員の声をかたちにし、一か月で全社プロジェクトとして実行できる体制は、物語コーポレーションの根底に流れる「『個』の尊厳を『組織』の尊厳より上位に置く」企業としての在り方を体現した象徴的な出来事といえます。
今回の募金プロジェクトが発案されてから実行されるまでの経緯と、社員一人ひとりの声によって作り上げられる物語コーポレーションの企業文化について、同社上級執行役員の新田 崇博氏、経営理念推進・キャリアデザイン本部 人財応援部 統括マネジャーの田村 公一氏、経営理念推進本部人財応援部 シニアマネジャーの蓼沼 広実氏、ならびに今回の企画発案者である「焼肉きんぐ」諫早店 副店長の吉田 きらら氏にお話を伺いました。
メールの全社発信から始まった支援募金プロジェクト
――会員ポイントを利用した新型コロナウイルス感染症危機対応募金は、吉田様のご発案と伺いました。何かきっかけはあったのですか。
吉田:今年4月の大規模な店舗休業期間がきっかけです。店舗が閉まり仕事が制限された中、今私たちが持っているもので、何か新しい価値を提供できないかと考えました。
「焼肉きんぐ」の公式アプリは、ベネフィット・ワンのポイントシステムと連携しています。交換できる商品リストの中に募金や社会貢献の項目があることを知り、このシステムを利用して医療従事者の方への支援ができないか、と思いついたのが発端です。
――思いついたアイデアをどのように発信されたのですか。
吉田:メールで全社発信をしました。弊社では、「物語Web」と呼ばれるメールシステムの利用がさかんで、社員個人から役員を含めた全社員宛に自分の意見や考えなどをメール発信することができます。
アイデアを発信後、すぐに様々な部署や他店舗の方から反応をもらいました。「企画立案の話なら、本社の新田さんにお願いするといい」というアドバイスをもらったため、改めて企画の趣旨を新田さん個人宛にメールしました。
その後は新田さんをはじめとした本社の方にお手伝いいただきながら、Zoom
を介してのミーティングを何度か行い、企画を具体化していったかたちです。
最終的には経営会議で企画についてのプレゼンを行いました。資料の作成は手伝っていただいたのですが、プレゼン自体は自分でやることになって。普段接する機会のない経営陣へ向けての発表は、本当に緊張しましたね。
その後企画が承認され、全社員向けのオンライン朝礼でもう一度プレゼン資料を
使って発表しました。発案から企画の開始まで、およそ1か月くらいだったと思います。皆さんに段取りのサポートやアドバイスをいただけたため、スピード感を持って実現できたと思います。
――企画開始後、社内や同僚などからの反応はありましたか。
吉田:他店舗の店長やエリアマネジャーから「今月は何ポイントだったよ」「募金協力しています」など連絡をいただきます。元々社員同士の繋がりが強い会社なので、こちらからお願いを
しなくても、積極的に協力してもらえる関係性がありがたいですね。
――支援募金の企画後何かご自身で変わりましたか。
吉田:店舗にいながら本社に提案できたこと、企画のプロジェクトに参加できたことは貴重な経験だったと思います。他部署との連携や企画の進め方など、普段の業務では見えない部分に携われた点が大
変勉強になりました。
全社発信は、発信側、受信側の双方がメリットを得られる仕組みです。各店舗での施策や取り組みなどがすぐに共有されるため、他店舗のアイデアを取り入れるなど以前から役立てていました。
今回自ら企画を立案したことで、直接お会いしたことのない本社の方から協力を得たり、自分のアイデアに対してポジティブな反応をもらえたりと、学びの幅が広がる価値に気づくいい機会になったと考えています。
全社員のコミュニケーションが集約する「物語Web」
――今回吉田さんが提案に利用された「物語Web」について教えてください。
新田:社内のイントラネットに紐づいているメーラー機能です。直営社員1,000人以上、社長や役員も含めて全員分の連絡先が入っていて、そこに様々な社員の提案が送られてきます。そのメールに対して意見や賛同、アドバイスなどの反応があって、今回のコロナ支援募金のように企画につながることもあります。発信する内容は、誹謗中傷以外何でもありですね。
――全社発信のメールは、一日に何通ほど来るのでしょうか。
田村:提案や意見は十数件です。メーラーの中で様々なやり取りがあるため、全体としては100~200件くらいでしょうか。入社した人の自己紹介や、お客様からいただいたお褒めの言葉、誕生日メールなど内容は様々です。
新田:弊社の誕生日メールは、誕生日を迎えた側から発信します。自分の年齢だけではなく、決意表明や一年間のパラダイムシフト、気づきや想いなどを本人から発信する。その発信に対して、全国からお祝いメッセージなどの反応が届きます。
田村:弊社では全国各地に店舗が広まっているため、物語Webによるコミュニケーションを介して、社員同士の繋がりや理解を深めるきっかけになればと。SNSのようなツールとして機能しています。
――新入社員の方やキャリア(中途)入社の方は驚くのではないですか。
田村:驚きますね。例えば入社したての方が発信した「配属先の店舗で気になったこと」に対して、社長から直接「その案、いいね」と返信が来たりします。
自分の発言に対してポジティブな反応が得られると「次もまた発言しよう」と考える社員が増えます。意見交換がしやすい企業文化は体現できているのではないでしょうか。
経営理念「Smile & Sexy」に込められた想い
——御社の経営理念「Smile & Sexy」について教えてください。
田村:社員一人ひとりが自分らしく生きる、という想いが込められています。「Sexy」は、自分がやりたいと思う意志、自分らしく人生を作ることを表します。一方で、自分らしい人生を実現するために、時には周囲の協力や信頼が必要で、そのための人間性を高めることが「Smile」です。
個の尊厳を限りなく尊重し、自分らしい生き方を体現できる個の集まりにしたい。会社に染まるのではなく、個の集合体が会社を形成する、という考え方です。弊社が掲げる「『個』の尊厳を『組織』の尊厳より上位に置く」の企業文化に繋がっています。
——「個の尊厳」の尊重を体現するために、どのような取り組みをされていますか。
新田:入社式で渡す入社激励書などがそうですね。新入社員はもちろん、毎月10名ほど入社するキャリア社員(中途採用)一人ひとりに対して、社長自らが激励書を読み上げます。内容はすべて異なり、「以下同文」はありません。「入社の段階でそれぞれの個を主張してほしい」というメッセージが込められています。
弊社ではインターナショナル社員と呼びますが、外国籍社員の採用も個を尊重する取り組みの一環ですね。新聞社から取材を受けた際「労働生産人口が減って、特定技能外国人としての雇用でしょうか」と聞かれたことがありますが、弊社では十年以上前からインターナショナル社員の採用を導入しています。人数の確保が目的ではありません。
インターナショナル社員の方が持つ日本人には無い個性、多様性を取り入れることを目的としています。
——インターナショナル社員の方を採用することで、社内の雰囲気は変わりましたか。
田村:大きく変わりましたね。当初は戸惑いが多かったです。
例えば「10時に出勤してください」と伝えた場合、日本人社員は言われなくても5分前にはユニフォームに着替え準備万端で待機しています。一方、インターナショナル社員には「10時前には着替えを済ませて、働ける状態で待機していてください」と明確に説明しなければ指示は伝わりません。
日本人特有のあうんの呼吸に甘えない、説明する側の努力や工夫が重要となります。インターナショナル社員の採用を取り入れてから、上司の表現力と説明責任能力が向上しました。
インターナショナル社員の方は物怖じせず、お店の改善点などを積極的に提案してくれる点もありがたいですね。日本人だと遠慮や躊躇がありますが、彼らは本当に自由に意見を言ってくれます。日本人社員の弱い部分を補強する形で貢献してくれています。
——インターナショナル社員の採用以外に、LGBT採用へも取り組まれていると伺いました。
田村:LGBTの方の採用も、弊社の理念「Smile & Sexy」に繋がります。LGBTの方は、若い頃からたった一人で自分自身と向き合い、自分らしい生き方を目指す人が多いのではないでしょうか。その生き方が弊社の理念と近いものだと考え、自立度の高い考え方を持つ方を積極的に採用することで、社内への理念浸透度を高める目的があります。
「様々な個性を受け入れてくれる会社」というメッセージが伝わり、LGBT当事者の方に関わらず、幅広い層からのエントリーも増えました。
「おせっかい」にマニュアルは無い
——一般的にフランチャイズ展開される飲食店では、マニュアルによる均一化を重視する傾向にあると思います。個を尊重される御社において、マニュアルはどのような位置づけなのでしょうか。
田村:チェーン理論としては、マニュアルに沿った姿が一番あるべき姿で、そこへ向けてどれだけ近づけるかが基本的な考え方です。ただし、弊社で採用するマニュアルはあくまで土台です。絶対にやらなければいけないことですが、マニュアルの達成がゴールではありません。そこから先、自分でどう考え行動するかが教育方針です。
蓼沼:弊社では「清正会」というフランチャイズオーナー会議を設けています。会議の場では、オーナーさん一人ひとりが主張・発言を求められます。社内間、他社間による違いも無く、遠慮もありません。弊社の発表に対してオーナーさん側からの意見や質問が得られないと、主催側から一人ひとりに対して発言を求めることもあります。
田村:飲食店のお客様は、基本的に30分~1時間程度は店内に滞在します。その時間のすべてをマニュアルで対応することはできません。チェーン店としてのマニュアル対応はすべてクリアしつつ、個人経営の飲食店が持つ臨機応変さを持ち合わせていなければならない。自ら考えて動くオーナーや社員が必要です。
チェーン店、個人店それぞれが持つ強みが融合した、「飲食大生業」を目指しています。
新田:ホスピタリティの基本的な考え方として、「おせっかい」は重要です。おせっかいにマニュアルは無い。「何をすればいいですか」ではなく、お客様がして欲しいことを提供するのがサービスです。
例えば、弊社では3、4年前から「ココロのバリアフリー計画」に参加しています。店内が完全バリアフリーでなくても、段差があれば車いすを持ち上げたり、狭い廊下での移動を手伝ったりと、店側の協力姿勢があれば障がいのある方でもサービスをご利用いただけますよね。
お客様がして欲しいことは、場面、人、状況によって異なります。障がいのある方も同じで、何をしてほしいか、こちらから積極的に伺う姿勢が重要です。
企業理念や文化の浸透に必要なこと
——御社で提言する企業理念や文化が定着している理由は何だと思われますか。
田村:企業理念や文化に対して、経営陣が本気で体現しようとする姿勢や信念だと考えます。弊社では採用の段階から徹底しています。経歴や技術に優れていても、弊社の理念や文化に合わなければ断る決断が必要です。
社員が積極的に意見を発信する文化も、継続は簡単ではありません。社員からの意見を集める仕組みは誰もが考え付きますが、会社側は集まった意見に対して、必ず何かしらの反応を見せる姿勢が重要です。反応がなければ、次回から意見を得ることは難しくなるでしょう。
会社側が社員の意見・提案に反応しないのは「できないことを説明するのが怖いから」ではないでしょうか。提案に対して賛同しない、やらない理由を理解してもらうには、意見を受け取る側の説明責任能力が求められます。一度掲げた理念に対し、会社側がそれに反しない行動を続けられるかどうかが重要です。
新田:弊社には「明言のすすめ」という考え方があります。会議の前に全員で唱和するもので、「間違っていれば『ごめん、すまん』と素直に詫びればいいだけです」の文言で締めくくられています。
つまり、考えたら迷わず発言する姿勢の尊重です。「やらない後悔よりやった後悔」の考え方ですね。吉田さんが今回の提案を発信してくれたのも、弊社が提言する企業文化を背景に、全社員が気兼ねなく意見交換ができる土壌が育っていたからだと思います。
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