福利厚生

【持ち家支援vs老後支援】時代のトレンドにあった福利厚生は〇〇〇〇

この動画でわかること

  • 持ち家支援は時代に合わなくなっている
  • 平均余命が延びている現代では老後資金支援の重要性が高まる
  • 老後資金を自分で準備するよう会社から社員に意識づける支援が必要

持ち家支援から老後資金支援へ――福利厚生のパラダイムシフトとは?今企業が考える新・生活保障の目的

歴史的な持ち家支援の役割と現代の“曲がり角”

「持ち家支援」とは、企業が社員の住宅取得を福利厚生でサポートする仕組みです。戦後の住宅難を背景に大手企業が続けてきましたが、時代の変化とともにその意味合いが変化しつつあります。

  • 企業による住宅ローン金利の優遇・利子補助で社員の負担を軽減
  • 財形住宅制度や社宅制度も持ち家支援の一環として展開
  • 戦後の住宅不足対策として定着したが、現代では過剰住宅や空き家問題に直面

社宅で安い家賃を提供し、住居費負担を抑えつつ住宅取得資金を貯められる環境も「持ち家支援」の一部とされています。

なぜいま持ち家支援が見直しの時代なのか?企業と社員の“新しい選択”

少子化・空き家・自然災害…住宅取得のリスクが高まる背景

以前は「家を持つことが人生設計の正解」とされていましたが、
少子化・空き家増加・地震・水害などのリスクで、「持ち家が常に幸福とは限らない」時代となっています。

  • 社員のライフスタイル多様化――世帯主以外の社員が増加
  • 空き家問題や住宅資産価値低下への懸念
  • 災害リスク(地震・水害)による住宅取得のコスト増加や不安

こうした背景から、全社員を対象にした持ち家支援策の必要性そのものが見直されてきています。

企業の福利厚生も「持ち家支援だけでは十分でない」という現実

持ち家支援は曲がり角を迎え、企業も「制度の見直しや廃止」を検討するようになりました。
しかし、人事制度の変更は慎重な説明や“社員との信頼関係”が前提となります。

  • 福利厚生の先細り(持ち家支援縮小傾向)
  • 社員のライフステージに合った支援が必要
  • 持ち家取得より“長寿化・老後資金対応”にシフトが進行中

人事部門も、急に「持ち家支援やめます」とは言えず、「新しい生活保障」を考える必要があります。

老後資金支援を柱に――企業が目指す新しい生活設計サポート

人生100年時代の到来、老後資金準備が不可欠になる理由

平均余命は毎年伸びており、定年後も30年以上生活する時代です。
年金制度は大きく変わる見込みがなく、今後は自分で老後資金を準備する必要が高まっています。

  • 定年後30年以上の生活――長寿社会では老後資金が不可欠
  • 国の厚生年金は保険料上昇が望めず、支給額の増加は期待できない
  • 今の社会環境では「自助努力+退職金+企業年金」で安定老後が現実路線

企業側も社員の“老後不安”に直面し、持ち家支援から老後資金支援に軸を移す動きが進んでいます。

国の新しい方針と自助努力支援策――iDeCo・NISAを活用せよ!

国は「老後資金問題」を意識し、個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAなどの税制優遇で自分自身の資産準備を促しています。

  • iDeCo・NISA:税制優遇を活用し自分の力で老後資金を準備できる制度
  • 退職金や企業年金も自助努力の“柱”になる
  • 国だけでなく会社も社員の教育やセミナーで“気づきを後押し”

金融リテラシー推進や社内教育のニーズも拡大。早期準備が将来の生活安心につながります。

“老後2,000万円問題”はなぜ炎上?企業と社員が向き合うべき現実

「老後資金2,000万問題」とは?サラリーマン世帯のリアルな資金計画

2019年に金融庁が発表した「老後資金2,000万円問題」。退職までに自分で2,000万円準備しなければ老後資金が不足する、という指摘が世間で話題になりました。

  • 年金だけでは生活不安が残る→自助努力の必要性が明確化
  • サラリーマン世帯の場合、年金(約7,000万円)+自分で貯めた資産・退職金が平均ケース
  • 合計9,000万~10,000万円規模の“老後設計”が現実的な目標に

この発表は「国が年金で十分な支援をしていないのでは」とマスコミや世論で炎上しましたが、実は「持ち家支援」以上に、社員一人ひとりが“自助努力”を求められる時代なのです。

会社のサポートの未来―老後資金支援×金融リテラシー向上が重要

会社も単純に賃金・退職金を増やすだけでは対応しきれず、
老後資金支援や投資教育、セミナー開催など「社員が自分事として気づく仕組み」を用意することが重要になっています。

  • 社内セミナー・Web講座で老後資金備えの自覚を高める
  • 福利厚生で企業年金・退職金制度を見直し、“老後の安心”を後押し
  • 信頼関係を土台に、社員に「気づき」を促すコミュニケーション施策

これからは「持ち家支援」から「老後資金支援」へのシフトが福利厚生のテーマとなります。

まとめ~持ち家支援から老後資金支援へ、今企業に求められる福利厚生のあり方とは

持ち家支援は住宅難という時代的背景から始まりましたが、現代では老後の長寿化・生活設計が福利厚生の新たな課題となっています。

  • 住宅取得支援から、老後資金支援+金融リテラシー教育への転換を
  • iDeCo・NISA・退職金・企業年金の活用で自身の資産形成力アップが重要
  • 会社は“教える・気づかせる”サポートやセミナーも継続し、信頼基盤を強化しよう

これからの福利厚生は、社員のライフステージと社会環境の変化を敏感にとらえ、“長く安心して働ける職場”として進化していくことが求められます。

可児さんサムネイル
【スピーカー】
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻:社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信


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<著書>
・「福利厚生アウトソーシングの理論と実務」(労務研究所)
・「共済会の実践的グランドデザイン」(労務研究所)
・「新しい!日本の福利厚生」(労務研究所)
・「実践!福利厚生改革」(日本法令) 他