福利厚生
従業員エンゲージメント

【福利厚生と賃上げ】社員の心を掴むのは福利厚生??

この動画でわかること

  • 給与はもらって当たり前だが福利厚生だとどう思うか
  • 福利厚生は労働の対価ではなく役職や勤続年数かかわらず平等の制度
  • 現金支給の最大のデメリットは法定福利費分の人件費が余分に増加すること

現金給与と福利厚生、どちらを重視すれば社員満足度と企業価値が上がる?

現金給与の増額と福利厚生の充実は、社員や企業が抱える“働き方改革”の大きなテーマです。一見「給与アップの方がうれしい」と思われがちですが、最近では福利厚生のメリットが再評価され、社員の定着とエンゲージメント(愛着・やる気)の向上に直結する重要な投資とされています。本記事では、両者の違い、メリット・デメリット、合理的な制度設計のポイントをわかりやすく解説します。

給与と福利厚生の“本質的な違い”~公平性・恩恵・受益意識とは?

福利厚生は“公平性”と会社からの恩恵を生む

給与は働いた成果や役割によって差が生まれるのが当然。しかし、福利厚生は役職や年齢、勤続年数に関係なく、みな平等に受けられる制度であり、社員に「会社に見てもらえている」という実感と、“会社へのロイヤルティ”を高める効果があります。

  • 福利厚生は新入社員からベテランまで平等に受益できる
  • 会社の気配りが伝わるため、従業員のエンゲージメント向上に直結
  • 働き続ける上での障がいや課題を制度でサポート。不安や不満の解消につながる

社員がライフステージや健康・家族に抱える課題を会社が支えてくれる「恩恵」は、現金給与にはない満足度アップのポイントです。

スケールメリットで実現する「お得な福利厚生」

会社が全社員一括で制度契約やサービス購入することで、個人契約より大幅に安く・充実した福利厚生を受けることができます。

  • 団体保険や法人契約施設(リゾート・スポーツクラブ)は割安料金
  • 生命保険や団体扱い商品の購入で銀行引き落としよりもコストダウン
  • 全員で利用するため会社負担のお得度が高い。社員一人ひとりの受益額が増大

会社がまとめて契約することで、保険料や施設利用料が個人負担より大幅に割り引かれるのがスケールメリットです。

現金支給のデメリット~税金・社会保険料の“壁”を知る

現金給与は“純粋な報酬”だけど会社・社員双方コスト増

現金給与は生活費に回しやすく、流動性が高いというメリットも。しかし一方で、会社にとっても社員にとっても「多く支給しても手元に残りにくい」という構造的なデメリットがあります。

  • 会社は給与だけでなく社会保険料(16%程度)も負担。人件費全体が増加
  • 給与アップは残業代・退職金・企業年金の計算基礎額も上昇し、さらなるコスト増要因に
  • 社員の受け取る現金は税金・社会保険料控除後は大幅に目減りする場合が多い

企業年金や退職一時金の算定にも影響しやすいので、経営者・人事担当はしっかり仕組みを理解したうえで制度設計を行う必要があります。

福利厚生の掛金や受益は“非課税・非保険料”でお得

福利厚生は原則、税金や社会保険料の対象とならず、会社が支給した金額が“そのまま社員に恩恵”として届きます。

  • 企業年金や退職金の掛金も非課税・非保険料扱いで優遇される
  • 現金よりも“将来受取り”がお得な制度設計も可能
  • 福利厚生なら会社の想いが100%社員に届き、投資対効果が抜群

現金支給の制度と、福利厚生による“非課税・非保険料”の恩恵を上手く使い分けるのが賢い人事制度設計です。

まとめ~お得な人事戦略、福利厚生と現金給与は両輪で考える

現金給与は確かに自由度が高く、即時性も魅力ですが、福利厚生は手取り・満足度・定着率まで複数のメリットを持った“投資対効果の高い人材戦略”です。

  • 福利厚生は社員の公平感・ロイヤルティ・食生活や余暇の満足度向上まで貢献
  • スケールメリットを活かせば受益額が大きくなり、制度全体がお得になる
  • 現金給与のメリット(流動性・自由な使途)と、福利厚生のメリットをバランス良く活用するのが最適解

これからの人事・人材戦略では、福利厚生と現金給与を両立させた「社員が長く安心して働ける」制度設計こそが、企業の成長力と魅力を高めます。

可児さんサムネイル
【スピーカー】
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻:社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信

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<著書>
・「福利厚生アウトソーシングの理論と実務」(労務研究所)
・「共済会の実践的グランドデザイン」(労務研究所)
・「新しい!日本の福利厚生」(労務研究所)
・「実践!福利厚生改革」(日本法令) 他