【デジタル給与の落とし穴】労働基準法 「賃金5原則」を絶対に見落とすな
この動画でわかること
- 給与天引きや銀行払いは賃金5原則の例外である
- 厚生労働省に登録されるとデジタル支払いが可能になる
- デジタル支払いサービスで外国人人材の確保に
注目の「給与デジタル払い」とは?その目的と時代背景をわかりやすく解説
近年、給与の受け取り方法として「デジタル払い」が注目を集めています。従来の銀行口座への振込に加え、スマホアプリやデジタルウォレットなど、デジタルマネーで給与を受け取る仕組みが拡大しています。
本記事では、給与デジタル払いの概要や福利厚生面での影響、導入時の注意点を、最新の法改正・労働基準法のポイントも交えて解説します。
- 給与デジタル払いは労働者の利便性と多様性を重視した制度
- 銀行口座を持たない外国人労働者や副業ワーカーにも有効
- 企業の人事・給与担当部門は、法令遵守と業務効率の両面で準備が必要
労働基準法が求める「賃金支払いの5原則」とデジタル払い解禁の流れ
給与支払いの原則と例外―なぜデジタル払いが実現できるのか

労働基準法は、社員の権利保護のため「賃金支払いの5原則(通貨払い・全額払い・直接払い・毎月1回以上・一定期日)」を定めています。
銀行振込も本来は「通貨払い」の例外で、労使協定により可能となってきました。
デジタル払いは、こうした原則と法改正の積み重ねの上で、最近ようやく導入が認められるようになった新しい給与受取手段です。
- 銀行振込、天引きなども労使合意に基づく「例外」規定で運用
- デジタル払い導入には、法的整備と登録業者制度が導入された
- 導入には必ず社員の同意と、労使協定が必要(強制不可)
給与デジタル払い導入の実務~社員と企業それぞれの流れと注意点
導入ステップと安全対策のポイント
給与デジタル払いの導入は、会社が一方的に決定できず、希望者のみ選択できます。
給与の一部、または全額をデジタル口座で受け取ることも可能ですが、法律やシステム上の制約もしっかりあります。
- 導入時は労使協定締結・社員の任意同意が必須
- 支払事業者は厚生労働省の登録業者のみ利用可能(2024年6月時点で数社)
- デジタル給与の残高は最大上限あり・安全対策として金融機関保証や10年の残高保護も規定
不測の破綻リスクや詐欺被害への全額補償など、安心して利用できる仕組みも用意されています。
給与デジタル払いのメリット~社員・企業双方に広がる利便性と新しい使い方
デジタル払いの従業員視点のメリット
デジタルマネーを日常的に活用している社員にとっては、チャージの手間が大幅に軽減され、管理もシンプルです。
また、外国人労働者や副業ワーカーなど銀行口座を持たない層にとっても便利な仕組みです。
- 給与の一部または全部をデジタル口座で受け取れる(残りは銀行振込も可)
- チャージ不要でそのままスマホ決済やオンライン利用が可能
- 本業・副業で受取口座を使い分けるなど柔軟な給与管理が可能
社員は「デジタル給与」か「銀行振込」か、選択自由が担保されています。
企業側のメリットと期待される効果
給与デジタル払いは、週払いや日払いにも柔軟に対応でき、急ぎの支払いが必要な人材確保にも効果的です。また、外国人雇用や多様な働き方の推進にも寄与します。
- 銀行口座の有無に関わらず給与支給が可能(雇用機会の拡大)
- システム次第で給与業務の自動化・効率化にもつながる
- 外国人労働者への対応・副業解禁時代のインフラ整備に有利
給与デジタル払いのデメリットと注意点~企業導入の現場で発生しやすい課題

社員視点:サービス選択や利用範囲への制約
デジタル給与払いには「サービス業者が会社指定」「普段使いの電子マネーと異なる場合あり」「交通系電子マネー・流通系は現時点で非対応」など利用面での制限がまだ残っています。
- 普段よく使うサービス事業者が自社取扱いでないケースがある
- 交通系・一部電子マネーは(2024年6月時点で)対象外
- 給与口座ごとに残高上限が設定されている
企業視点:システム対応と事務増加リスク
企業側は従来の銀行振込業務に加え、デジタル払いも希望者のみの対応が必要となり、システムの追加開発や業務負担が発生します。
- 希望社員には個別対応が求められ、給与振込業務が複雑化
- 一部のみデジタル払いの場合、1人あたり2回振込手続きも発生
- システム改修コストや外部ベンダー連携が必要な場合あり
導入には社内体制とIT投資が不可欠で、事前のコスト試算と運用設計が重要です。
まとめ~給与デジタル払いの導入は選択肢拡大と人事DXの第一歩

給与デジタル払いの導入は、多様化する雇用ニーズやデジタルインフラ活用の面で大きな意義があります。
一方で、労使協定・社員同意・IT基盤整備・万全なセキュリティなど課題も多いため、「導入前の十分な制度設計」「社員への情報提供・意見聴取」「システム連携強化」を徹底してください。
- 法制度や登録業者の確認、社員の選択自由の担保が必須
- システム連携・業務フロー見直しなど社内インフラ整備を進める
- 福利厚生や採用ブランディングにも活用できる新たな手段として活用を検討
今後の普及拡大を見据え、各社・現場に最適な導入設計で、社員にも企業にもメリットある制度運用を目指しましょう。
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻:社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信
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