【そうだったのか!】知らないともったいない慶弔給付制度の役割とは
この動画でわかること
- 社会保険・労働保険がなかったため慶弔給付はセーフティネットの役割を果たしていた
- セーフティーネットは社会保険の普及により取って変わった
- 会社から社員への喜びや悲しみの気持ちを表す手段として使われている
慶弔給付とは?福利厚生の中の“見えにくい”重要制度
日本の多くの企業が取り入れている「慶弔給付」。結婚祝金や出産祝金、入院お見舞金や弔慰金などに代表される制度ですが、その目的や歴史について正しく理解している人は多くありません。
本記事では、「そもそも慶弔給付って何?」「なぜ企業が用意するの?」「今と昔で役割がどう変わったの?」といったポイントを分かりやすく解説します。
企業の福利厚生制度を見直したい管理者の方も、今から社会人を目指す学生の方も、知っておきたい『慶弔給付の意義と今後』がまるわかりです。

あなたの職場は大丈夫?そもそも慶弔給付とは何か
本来の慶弔給付の意味と役割
慶弔給付とは、会社が社員やその家族の結婚・出産・入院・不幸(弔事)など、人生の節目や万が一の際に支給する金銭的なサポートです。
「福利厚生の一環」「会社からの“お祝い”や“お見舞い”の気持ち」と捉えることもできますが、始まりはより切実でした。
- 結婚や出産を祝う祝金の支給
- 入院や病気、ケガの際のお見舞い金
- 家族の不幸などの際の弔慰金
日本での慶弔給付の歴史と社会的背景
慶弔給付が一般的に広まったのは、戦前・戦後の社会保険制度が充実していなかった時代です。
その頃は病気で働けなくなれば「収入ゼロ、医療費も全額自己負担」というケースも多く、社員やその家族をお金や生活面で守る『職場のセーフティネット』として慶弔給付が始まりました。
戦後の社会保険の発達と慶弔給付の「役割シフト」
社会保険制度の整備による変化
戦後、日本の社会保障制度は急速に発展し、次のような保険が登場しました。
- 健康保険(医療費や傷病手当金をカバー)
- 雇用保険や労災保険(失業・仕事中のケガをカバー)
- 厚生年金・国民年金・介護保険(老後や介護の支援)
これらの制度が揃い、会社員の生活リスクへの“国のセーフティネット”が充実していきました。
慶弔給付の新たな2つの役割
現代の慶弔給付は、次の2つの目的で運用されています。
- 1. 社会保険給付の“上乗せ”-公的補償にもう一歩踏み込む支援
- 2. コミュニケーションツール-会社と社員をつなぐ「想い」の可視化
1. 社会保険給付の“上乗せ”
たとえば、健康保険では医療費の3割負担が必要です。その自己負担部分や、傷病手当金では補えない給与減への援助として、慶弔給付の医療給付や休業補償が「上乗せ」として支給されるケースが多いです。
2. コミュニケーションツールとしての意義
さらに近年では、「会社が社員の人生の節目や困難にちゃんと寄り添っている」という“想い”を見えるかたちで伝える制度として活用されています。
お金の多寡以上に、福利厚生のひとつとして「安心して働ける」「社内コミュニケーションの活性化」「会社への愛着心・エンゲージメントの向上」に結びついています。
進化する慶弔給付のカタチ~現代的な活用事例~
会社独自の「喜び」と「悲しみ」への寄り添い方

現代の慶弔給付は金銭給付だけにとどまらず、バリエーションが広がってきています。
- 結婚・出産のお祝い+お花やギフトカードの贈呈
- 病気療養中の社員への食事宅配や見舞いサポート
- 親族の不幸時には有給慶弔休暇+心のケア相談窓口の設定
また、組合や共済会などが主体となって制度を運営している企業も増えており、職場の風土や社員の要望に応じて「会社と社員、互いを思いやる文化」づくりに役立てているケースが目立ちます。
まとめ~慶弔給付は組織で働く“心のセーフティネット”

慶弔給付は、時代とともにその役割を少しずつ変えてきました。
社会保険・労働保険が「基本のセーフティネット」となった今、慶弔給付は「思いやり・つながり・信頼」の証として企業文化のなかで大切にされています。
- “安心して長く働ける環境”の基盤になる
- 会社と社員・家族をつなぐコミュニケーションのきっかけになる
- 福利厚生の満足度やエンゲージメントを高める効果がある
多様な価値観・生き方が尊重される現代だからこそ、相手を思いやる“慶弔給付”のパワーを、今改めて見直してみてはいかがでしょうか。
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻:社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信
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