福利厚生

【脱・採用競争】今、福利厚生として注目を集める社宅制度の基本の「き」

この動画でわかること

  • 社有社宅と借上社宅の違いとは
  • 近年では社有社宅の割合が減少している
  • 借上社宅は倒壊や資産価値の減少のリスクなく、社宅を提供できる

福利厚生の最前線!変わり続ける社宅制度と「借上社宅」最新事情

今さら聞けない社宅制度とは?戦後日本から現代までの流れを復習

「社宅」は、長年にわたり日本企業の福利厚生の柱として活用されてきました。戦後の住宅不足、人手不足の時代から、都市部への人口集中、経済成長に伴うニーズの変化、そして現在の若手社員のライフスタイルまで、社宅の役割は大きく様変わりしています。近年は借上社宅という新しいスタイルも注目されています。本記事では、社宅の変化と「借上社宅」制度のポイントを最新事例を交えて解説します。

従来型社宅の歴史とその消費化背景

かつて日本の高度成長期、都市部では住宅が圧倒的に不足していました。企業が自前で土地を取得して社宅を建設する「社有社宅」は、社員とその家族の住まいを保証し、安心して長く働ける環境を実現してきました。

  • 会社所有の社有社宅:企業が直接建物を所有・管理する形態
  • 若手社員支援型の厚生社宅:給与水準が低い新卒や転職組向けの住居支援
  • 転勤者専用の転勤社宅:転勤に対応した柔軟な住居提供

しかし近年は住宅そのものの供給が充実し、若い世代の価値観も多様化。「会社の人付き合いが煩わしい」「場所のリスクを避けたい」などの理由から社有社宅は減少傾向にあります。

転勤無しでも入居できる厚生社宅の目的とメリット

社宅=転勤者用というイメージがありますが、実際には「転勤がなくても入居できる厚生社宅」も存在します。これは空室を減らし、若手社員や新卒など給与水準がまだ高くない層を支援するために設計されるものです。

  • 入社間もない社員の家計負担軽減
  • 住宅手当や家賃補助による採用力強化
  • 入居ルールや期間設定で柔軟運用が可能

最近では入社から数年のみ社宅家賃負担を大幅軽減したり、住宅手当を厚く設定したりする企業も増えており、「福利厚生制度=採用力」という発想が広がっています。

なぜ社有社宅は減る?リスクとコストから読み解く時代の変化

社有社宅が減少している最大の理由は、企業として「所有リスク」が大きくなったことです。地震や河川氾濫など予測不能の災害リスク、不動産管理のコスト増、さらには都市部の土地の価値変動など、資産を抱えるデメリットも顕在化しています。

  • 住宅供給過剰で作る必要性が減少
  • 社員のプライバシーや自立志向の高まり
  • 資産リスク回避の経営判断

この結果、「必要な場所だけ社宅を残す」流れと、「必要な時だけ住まいを提供する」発想にシフトしています。

今注目の借上社宅とは?企業・社員双方のメリット

借上社宅は、企業がアパートやマンションを賃貸契約し、社員に住まわせる新しい形の社宅サービスです。自社所有の家屋ではなく、既存の物件を活用することでコスト削減とリスクヘッジを両立します。

  • 転勤・異動に柔軟に対応できる(好きな場所で住まいを確保)
  • 不動産資産のリスク回避/管理負担軽減
  • 需要変動に応じて素早く社宅ニーズに応えられる

社有社宅では対応できない地方拠点や新規プロジェクトにも、借上社宅なら即座に住居手当・住居提供が可能です。これにより、企業は福利厚生を効率的かつ柔軟に運用でき、社員もライフスタイルに合った住まいを選びやすくなります。

社宅制度のこれから…柔軟な福利厚生で“選ばれる企業”へ

人口動態や住宅事情、働き方の多様化を背景に、今後期待される社宅・住宅制度は「社員の選択肢拡大」「転勤やキャリアチェンジを前提とした柔軟設計」「一人ひとりに最適な福利厚生」の提供です。

  • 住宅制度で採用力・定着力をアップ
  • 社員の多様なライフスタイル・成長段階に寄り添う
  • 企業が資産リスクを抑え、財務健全性も維持

福利厚生のあり方が変わることで、社員のモチベーション・エンゲージメント向上にも直結。企業は「働きやすい環境」「安心して暮らせる生活設計」を求められる時代となっています。

まとめ:社宅制度は時代に合わせて進化中!借上社宅など新制度が企業競争力を左右する

社宅は、社員のための住居支援だけでなく、時代や市場変化に即した「人材マネジメントの重要な仕掛け」として再注目されています。特に借上社宅の普及は、企業が柔軟かつ効率的に福利厚生を実現するための有力な選択肢です。住宅制度の拡充は、採用力の強化・社員の満足度向上・企業のリスクヘッジに直結します。皆さんも、自社の社宅・住宅制度がどのような目的・運用形態なのか、ぜひ再確認してみてください。

可児さんサムネイル
【スピーカー】
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻;社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信

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<著書>
・「福利厚生アウトソーシングの理論と実務」(労務研究所)
・「共済会の実践的グランドデザイン」(労務研究所)
・「新しい!日本の福利厚生」(労務研究所)
・「実践!福利厚生改革」(日本法令) 他