福利厚生
従業員エンゲージメント

【どっちがお得か比べてみた】10,000円分の現金 or 福利厚生

この動画でわかること

  • 実は人件費の6割にしかならない給与の手取り
  • 1万円昇給すると会社の負担増はいくら?現金給与と手取りの関係と内訳
  • どっちが得?1万円分の現金vs1万円分の福利厚生

給与アップと福利厚生、どちらがお得?~手取り・税・社会保険料の仕組みから徹底解説

昇給や賞与のアップ、さらなる待遇向上が注目される一方、「本当に社員の“手取り”が増えているのか?」という素朴な疑問を持ったことはありませんか?実は日本の税金と社会保険料の仕組みでは、額面給与がそのまま“受取額”=手取りになるわけではないのです。今回は手取りの仕組みと、会社が同じコストをかけるなら福利厚生の方が投資対効果が圧倒的に高い理由を数字・実例で分かりやすく解説します。

年収と手取りの真実~「人件費の6割しか手取りにならない」って本当?

年収が高い人ほど“天引き”が増える仕組み

給与明細や源泉徴収票を見ながら「思ったより手取りが少ない…」と感じたことはありませんか?その理由は税金と社会保険料にあります。

  • 所得税は年収が多いほど税率が上がる(給与1000万円で20%、2000万円で33%など)
  • 住民税は年収に関わらず一律10%が課される
  • 厚生年金、健康保険、介護保険など社会保険料も年収比例で会社と社員が折半

例えば年収1000万円なら所得税・住民税で約134万円、社会保険料で約156万円が天引きされ、手取りは約720万円前後。年収500万円の場合も、税金・保険料で23%が引かれ、手取りはおよそ385万円です。

 

給与を上げても、思った以上に手取りは増えない

ここで知っておきたいのは、会社があなたに支払う「人件費総額」と、実際に受け取る「手取り」には大きなギャップがあることです。

  • 年収500万円の場合、会社が負担する社会保険料を含めた総人件費は約642万円
  • 社員は税金や保険料が引かれた後、385万円しか手取りとして受け取れない
  • 会社が給与を月1万円上げても、手取りの増加は約6,400円程度(55%しか反映されない)

1万円の現金と1万円の福利厚生、“受け取り額”の決定的な違い

福利厚生は“満額”が社員に届く投資対効果の高さが魅力

福利厚生費は原則として税金・社会保険料の対象外。つまり、会社が福利厚生として1万円分のサービスや補助を支給した場合、そのまま1万円が社員の“手取り”として受け取れます。

  • 会社が1万円の現金給与を増額する場合、会社負担は11,667円にもなり、社員の手取り増は約6,400円止まり
  • 福利厚生で1万円を追加すれば、そのまま1万円分の価値が社員に届く(社会保険料・税金が引かれない)
  • 会社コストの100%が社員の手取り増加につながる、極めてコスパの良い人材投資

これは「福利厚生費は投資対効果が最も高い人件費」と言われる大きな理由です。

福利厚生が“現金”よりも支持される理由

会社としても社員としても、“同じコスト”をかけるなら投資効果の高い方法を選びたいものです。福利厚生を充実させることが働きやすさやモチベーション向上、生活満足度アップなどに直結しやすいのも納得です。

  • 健康診断補助、予防接種、住宅手当、食事補助、託児補助など生活に直結する福利厚生が高支持率
  • 税・社会保険料がかからないから“満額受益”できる
  • 「会社が社員を思いやっている」と感じられるからエンゲージメント・定着率も大幅アップ

会社と社員の両方にメリットあり!福利厚生充実は“賢い”経営手段

・給与を上げても手取りが大きく増えない仕組みを理解すると、福利厚生の見直し・強化の重要性が鮮明になります。
・インフレや生活コスト上昇が続く中、福利厚生は社員の「実質受益」「生活の安定」を直接支援できます。
・会社は「競争力のある報酬体系」と「社員を大切にする姿勢」をアピールでき、定着率・採用力の強化に直結します。

  • コストパフォーマンスの高い人材投資を行いたい経営判断に有利
  • 従業員の満足度・モチベーション維持に最適
  • 時代に合った福利厚生制度は採用・ブランディングにも直結

まとめ〜“手取り最大化”には福利厚生も戦略的に活用しよう

給与アップ施策は確かに分かりやすい一方、社員の手元に残る「手取り」を最大化するには税・社会保険料の仕組みを踏まえ、福利厚生の拡充・見直しを戦略的に活用することが効果的です。

  • 額面給与の20~30%は税金・社会保険料で天引き、実際の手取りは意外に少ない
  • 会社がかけたコストがそのまま“受益”になる福利厚生こそ、投資対効果抜群の人材施策
  • 福利厚生=「手取り最大化」「生活サポート」「企業の魅力向上」を同時に実現する最適解

給与だけでなく福利厚生のバランスを見直し、“これから選ばれる企業”は手取りの最大化を意識した制度設計を進めましょう!

可児さんサムネイル
【スピーカー】
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授(専攻:社会保険、企業年金、企業福祉) 可児俊信

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<著書>
・「福利厚生アウトソーシングの理論と実務」(労務研究所)
・「共済会の実践的グランドデザイン」(労務研究所)
・「新しい!日本の福利厚生」(労務研究所)
・「実践!福利厚生改革」(日本法令) 他