社員の健康管理と働き方改革が企業を成長させる
データベースマーケティング企業ランドスケイプの取組みとは

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近年、少子高齢化や有効求人倍率の上昇により、日本の各企業は優秀な人材を確保・定着させるため、様々な対策や取り組みを進めています。

そのような社会状況の中で、ユニークな福利厚生制度を充実させてきたのが、データベースマーケティング事業を行う株式会社ランドスケイプ。

同社は自社にマッチした福利厚生を活用することにより、社員のモチベーション向上や離職防止に役立ててきました。今回はそれらの取り組みについて、管理本部採用担当執行役員の長澤紀子氏と、管理本部採用担当チーフの梅木彩氏にお話をお伺いしました。

自社の採用や働き方改革について課題をお持ちの方は、ぜひ本記事をご参考にしていただければ幸いです。

※本取材内容及び職名等は取材当時の情報となります。

コマーシャルを打つより、オフィス改革に乗り出した理由

―会社受付に大きなウミガメのオブジェ、壁一面に砂浜が描かれ、まるでリゾートに来たようです。御社の大きな特徴だと思いますが、どのような背景があるのでしょうか。

 ランドスケイプ 管理本部採用担当執行役員 長澤紀子氏

長澤紀子氏(以下、長澤):みなさん驚いてくださいます。他にもラスベガスや古代ローマをテーマにしたエリア、中には、壁に恐竜を描き、ゴジラの“原寸大の手”が置いてあるジャングルのエリアもあります。

※ラスベガスをイメージしたオフィスルーム

※ジャングルをイメージしたオフィスルーム

 弊社の顧客データ統合ツール『uSonar』のデモンストレーションにも使用されるソナールームは、潜水艦の管制室をイメージした部屋になっています。

 これは、社名の「ランドスケイプ(眺望)」にちなんでのことですが、競争の激しいレッドオーシャンでも未開のブルーオーシャンで競争するのでもなく、“海の底”に潜って眺望し、これまでにない価値を見出したいという思いからなんです。

梅木彩氏(以下、梅木):私は2015年入社ですが、初めて会社訪問したときは衝撃的でしたね。天井を見上げるとミラーボールが飾られているし、入り口はジャングルのようですし……びっくりしたことを覚えています(笑)

長澤:オフィスのレイアウトにこだわったのは、大きな人事課題を抱えていたからです。

弊社は、1990年に創業した、820万件という日本最大の企業データベースをもつデータベースマーケティング会社です。顧客データ統合ツール『uSonar』を利用すれば、企業が既に利用しているSFACRM、マーケティングオートメーションなどのシステムと連携できるのが特長です。

とはいえ、B to Bの企業で、商材としても理解されにくく、新卒採用に苦慮していた時代がありました。

多くの人に「面白い会社なんだ」ということを理解していただくために、“1回来てもらえば、忘れないオフィス”にしようと取り組んだ結果が、このようなスタイルになりました。

企業イメージを伝える方法としてTVコマーシャルなどを打つこともできましたが、データベースマーケティングの考え方とは合わないと考えていました。それよりも、見込み客に愛してもらうしかないという思いがありましたし、社員が誇りをもって、「こんなに面白い会社なんだよ、会社に遊びにおいでよ」と言えるような環境づくりに注力しました。

 ― 忘れられない印象的なオフィスです。狙い通り、新卒採用力の強化に動いたわけですね。

 長澤:問い合わせが増えましたね。新卒の方の目にも留まるようになりましたし、覚えていただくという点では苦労しません。

さらに、オフィスにいらしたお客様と一緒にセミナーをする機会がとても増えました。「ステキな会場ですから、ぜひご一緒に」というお話を多くいただけるようになったんです。当時の弊社の規模ではありえない大手企業様にもお声がけいただくこともありました。

 ※顧客データ統合ツール「uSonar」のデモルーム。社名・サービスロゴにちなんで、潜水艦がモチーフ。

名のある企業様とともにお仕事をすることで、会社名を知っていただき、事業内容を理解していただけるようになりました。

もちろん他社とコラボレーションすることでお客様の売り上げも上がります。弊社を通じて知り合った企業同士がコラボするなど、その影響は大きく広がっています。

梅木:今では社内で行うセミナーは月5,6回ほど。これ以外に、100名~300名規模で行うランチョンフェアを主催しており、開催は20回を超え、多くの企業の皆さまに好評をいただいています。

企業の業績を向上させるには、社員の健康管理と働き方改革が欠かせない

―フリーランチ制度をはじめ、さまざまな福利厚生に取り組まれているのも御社の特徴ではないでしょうか?

 長澤:社員の健康サポートはこだわっています。フリーランチ制度は、若手社員が昼食をカップラーメンで済ませたり、食べない人がいるといった状況を危惧したのがきっかけです。

そういう社員に限って、体調を悪くする傾向がありました。最初は、社員の健康のためにサラダバーを用意したことが始まりです。それがどんどん進化して、現在はフリーランチ制度になりました。

梅木:社員にも好評です。ビュッフェ形式やお弁当、カレーなどメニューのバリエーションを増やしたり、フリードリンクやフリーアイスクリーム制度を加えたり、会社に来るのが楽しくなるように工夫しています。

長澤:他にも、インフルエンザ予防接種を会社で社員全員が無料で受診できますし、健康診断や人間ドックなどにかかる費用を負担しています。とくに健康と医療関連の福利厚生には力を入れていますね。ミドルエイジの方には本人はもちろん、配偶者の方の診断費用も負担するなど上手く活用していただき、家族の健康も守ってほしいと思っています。

梅木:加湿器を8台置いているのも社員の健康サポートのためです。加湿器は効果絶大ですね。風邪やインフルエンザが少なくなりましたから。

社内サークル制度も活発ですし、専門性を高めるための書籍代を半額~全額補助、通勤手当や育児・介護支援といった、さまざまな福利厚生の向上を図っています。

―福利厚生を充実させた狙いはどこにあるのでしょうか?

長澤:企業成長のためには、社員の健康管理と働き方改革が欠かせません。

弊社では、年間15人ほど採用しますが、一方で、10人前後の方が転職や退職をされます。退職の原因を深堀りすると、体調不良や家族の問題などを抱えているケースも見えてきました。福利厚生を充実させることで、もっと解決できることはあるのではないかという意図で進めてきました。

梅木:社員の声を広く集めるために、社員アンケートを実施したり、日報や社員の健康状態などを可視化する「モチベーションクラウド」を取り入れたりしています。

日報は毎日で記入し、全社員が観覧できるようにしています。SNSのようにコメントが書き込めたり、「イイネボタン」が押せるのですが、実は1イイネ=30Tポイントになって、月ごとにTポイントが付与されます。

そうすると、月平均2~3千ポイントになります。5000円分近くポイントを集める社員もいますから、効率的な業務報告になるだけでなく、大きなモチベーションになっていると思います。

さらに、日報を書いて保存ボタンを押すのが一番最後の仕事になります。保存ボタンを押した時間までが残業時間として計算されるんです。

それが特許を取得した「レコメンド残業」制度です。労働時間の過少申請を防止するため、ボタンを押したタイミングで、個別の適正な残業代が自動で申請されるように毎日レコメンドする仕組みです。

管理本部採用担当チーフ 梅木彩氏

長澤:日報の上には「コンディションマーク」があります。出退勤時、その日の気分と体調に合ったスコアを押すだけで、日々のコンディションが見える化されています。

ずっと悪いスコアが続いていれば、声掛けをしたり、解決のアプローチを一緒に考えたり。生き生きと仕事をしているかのバロメーターになっていますね。 

―モチベーションの低い社員がいたら、どのようにケアしているのでしょうか。具体的に教えてください。

長澤:メンタル面での問題や、家庭の問題を抱えている社員がいれば、「定期訪問キャリアカウンセリング」を利用してもらっています。定期的にカウンセラーが来社し、会議室で面談をします。キャリアやメンタルヘルスなどさままな悩みを相談できますし、社会福祉士の方もいらっしゃるので、家族の悩みを相談する方もいます。

家族のトラブルなどは、なかなか上司や会社では対応できません。大手企業であれば、保険医の方が常駐するところもあるかもしれませんが、うちのような規模の場合、それだけで煮詰まってしまい、結果、離職してしまうケースにつながってしまいます。

これらの福利厚生を導入していなければ、もっと離職率は高かったかもしれません。

※キャリアカウンセラーとの面談は、誰かに聞かれる心配もない、じっくり話せるお部屋で実施。

他社のサービスを組み合わせて自社にマッチさせる

―反対に、効果の薄かった人事課題対策はありましたか?

長澤:弊社は“トライチャレンジ”の行動指針のある会社でもあるので、人事課題に対してとにかく取り組んでやってみていますが、上手くいかなかったこともたくさんあります。

働き方改革の一環として、社員の交流を図る「月次パーティー」を開催していましたが、あまりうまくいきませんでしたね。

強制参加のようになってしまい、真の目的である部署や上下関係を超えた交流を果たしていない状態になってしまったからです。7回ほど開催して取り止めました。

ただ、他の会社なら上手くいっていたかもしれません。弊社は、飲んで騒ぐようなタイプの社員は少なかったので、盛り下がってしまったんです。

大手のマネをしようとしても、できないことはできませんから、自社らしさを大事にしながらサービスを精査しています。

―福利厚生を手厚くすることで、社員満足度は高まったのではないでしょうか?

長澤:心身の問題により離職をしてしまう社員を減らすための対策は少しずつ対応できるようになったと感じています。ただ、それで全てが解決するわけではありません。ひとつ解決すると、新しいフェーズの問題にぶつかるからです。

社員の業務支援、心理的支援、成長支援(キャリア支援)を掲げて取り組む中で、1年ほど前から「1on1ミーティング」を取り入れました。3ヵ月に1回を最低ラインにして、部下やリーダーの育成、キャリア支援につなげたいと考えています。

もちろん結果も出ていますが、一度、行き詰りもありました。なぜなら1対1の関係性なので、部下の問題に対する答えを上司が持っていなかったり、直属の上司には話しにくいことなどヒアリングできない問題が多発したからです。そこで、外部から人を呼んで相談できる体制を整えました。それが先ほども話した、「定期訪問キャリアカウンセリング」を取り入れたきっかけです。

これは最初、メンタルヘルスへの対応だったのですが、最近ではキャリアアップ転職を見直すきっかけにもなっているようです。どうしても数年働くと、“隣の芝が青く”見えてきます。いくら社員満足度を高めて働きやすく整えても、「働きがい」を外に求めると転職に走りがちです。

あえて外部のキャリアカウンセラーを呼ぶことで、他社との比較が容易になりました。自社でのキャリアアップも視野に入れてもらいながら、社員の定着を図っています。

今後の課題はダイバーシティに向けた取り組み

―キャリア支援については、2017年に行った「人事制度の見直し」が大きな効果を生んだと聞きました。

長澤:実はこれまで肩書がとても少なかったんです。役員、マネージャー、リーダーの3層で、少ないことを自慢にしていました。しかし、それが裏目に出て、キャリア形成が見えずらいという問題の壁にぶつかりました。

そこで、階層を整えて「見える化」する抜本的な人事の見直しを行いました。管理職を目指す「総合職」、技術や専門性を高める「専門職」そして、介護や育児をしながらでも柔軟に働ける「調和職」をキャリアマップに加えました。

基本的には、「総合職」を目指し、チーフからサブマネージャー、マネージャー、役員と階層を増やし、キャリアアップしていきます。「調和職」は、リモートやフレックスで働くスタイルです。週3勤務やパラレルワークなどバラエティのある働き方に対応しています。 

梅木:「調和職」が生まれたことで、出産や親の介護など環境が変わった場合、他の会社を探さなくても、時短などの選択肢を考えることができるようになりました。時短を選んでも、階級はきちんと上がるのも魅力です。子育てしながら働いていても、頑張ればチーフになれます。キャリアデザインを組みやすくなったと好評です。

 ―最後に、今後の展望について教えてください

長澤:社会動向を見ても、企業としていろいろな働き方を模索していかなければ、ますます必要な人材の採用は難しくなっていくでしょう。

弊社には外国人や障碍者の方も働いています。たとえば、天井から部署ごとに目立つ部署名の看板が下がっています。わかりにくさを改善して、いろいろな状況の方に配慮しようと思ったのがきっかけです。 

結果的に、新入社員などにも場所を覚えやすいと喜ばれ、看板にこだわることで旗印のもとに集まるような気分になり、各部署の士気が高まりました。部署名が変わると、「看板を作り直してください」と、現場から声がかかるくらいです。

これからも試行錯誤しながら、誰もが働きやすい社内環境を目指して、トライチャレンジしていくつもりです。

ランドスケイプでは現在も新しい人事制度が試行されているそうです。日々のアップデートが制度維持のコツなのかもしれません―

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