働き方改革

第18回:正規と非正規における待遇差対応の優先度について

正規と非正規のすべての待遇差が見直しの対象となり得るが、見直しに当たっては順位を付けたい。その理由は、同時に行うと作業量やマンパワー面で不足するというだけでなく、待遇改善原資にも限界があるためである。

順位を高くすべきは、厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」に具体的に明記されている待遇である(図表)。明記されていない待遇(退職金など)は、すぐに着手できなければ、他社の見直し事例や判決・判例を踏まえて検討を進める。なお、ガイドラインに明記されている待遇かどうかは名称ではなく、運用や支給の実態によって判断するべきである。

まずは明記されている待遇差のうち、「同一労働」でなくとも均等にすべきとガイドラインに記載されている待遇から着手する。具体的には、福利厚生的な手当や福利厚生の中では、食事手当、通勤手当、福利厚生施設、特別休暇・慶弔休暇、健康診断の勤務免除などである。これらを待遇改善する原資の確保として、前回は配偶者手当と家族手当を見直した事例を紹介した。

次に、ガイドラインに明記され均衡待遇とすべき待遇と、最高裁判例で挙げられた待遇に着手する。

転勤社宅については、非正規従業員は事業所単位で採用され転居を伴わない異動に限られることが多いことから、一般的には問題はない。しかし、自社の運用がそうなっているかは今一度確認したい。なお、正規従業員と同等の仕事をしているが、何らかの理由で有期雇用や短時間勤務となっている非正規従業員の待遇差には注意する必要がある。

住宅手当は最高裁判例で、転勤社宅と同様の理由で、転居を伴う転勤のない非正規従業員に支給しなくとも不合理ではないとされた。これは逆にいえば、転居転勤の有無にかかわらず正規従業員にのみ支給されて、非正規従業員には支給されていない住宅手当は不合理ということになる。

その次はガイドラインに明記されておらず、最高裁判例でも触れられていない待遇である。これはさらに2つに区分される。まず正規従業員のみ支給され、非正規従業員には支給されない待遇(待遇の有り無し)である。福利厚生的な手当や福利厚生は、支給の有無について、その目的や性質上不合理な待遇差とみられやすい。なお、退職金については非正規にも支給すべきとしている高裁判決もある。

最後は正規従業員にも非正規従業員にも支給されているが、支給内容や支給水準に差があるものである。どちらにも支給されていれば、その差には相応の理由があることが多いため、見直しの順位付けとして下がることになる。

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