【事例あり】2025年法改正の育休制度─最新動向を分かりやすく解説
目次
育児休業・育休制度の最新動向と企業の対応──2025年法改正を踏まえて
働き方改革や少子化対策の一環として、育児休業(育休)制度は年々進化しています。特に2025年には育児・介護休業法の改正が施行され、企業に求められる対応も大きく変化しました。本記事では、最新の育休取得率や法改正のポイントを整理し、企業の人事担当者が今後取り組むべき施策について解説します。
育児休業・育児休暇の概要と2025年法改正ポイント

育児休業と育児休暇の違いとは?
- 育児休業:育児・介護休業法に基づく法定制度。雇用保険から育児休業給付金が支給され、原則として子どもが1歳になるまで取得可能(最長2歳まで延長可)。
- 育児休暇:企業が独自に定める休暇制度。子どもの行事参加や看護など、育児休業ではカバーできない場面に対応するために設けられる。
| 項目 | 育児休業 | 育児休暇 |
|---|---|---|
| 制度の性質 | 育児・介護休業法に基づく法定制度 | 企業が独自に定める任意制度 |
| 給付金 | 雇用保険から育児休業給付金が支給 | 企業による有給・無給の設定 |
| 取得可能期間 | 原則1歳まで(最長2歳まで延長可) | 企業の規定による(行事参加・看護など) |
| 目的 | 子育てに専念するための長期休業 | 短期的な育児支援(行事・看護) |
2025年の法改正ポイント
| 改正項目 | 内容 |
|---|---|
| 残業免除の対象拡大 | 3歳未満 → 小学校就学前の子を持つ従業員に拡大 |
| テレワークの努力義務化 | 短時間勤務が困難な場合の代替措置として認められる |
| 選択制措置の義務化 | 始業時刻変更・テレワーク・短時間勤務などから2つ以上整備 |
| 育休取得状況の公表義務 | 対象企業が1,000人超 → 300人超に拡大 |
上記のように、従来よりも育児に対するサポートを手厚く受けられるようになったため、育休はますます取得する意義のあるものとなりました。
育児休業の取得条件と期間
育児休業(育休)は、育児・介護休業法に基づく制度で、一定の条件を満たす従業員が取得できます。以下に、取得条件と期間、延長条件をまとめます。
取得条件
- 対象者:1歳未満の子どもを養育する従業員
- 雇用形態:無期雇用の場合は原則取得可能。有期雇用の場合は「子が1歳になるまで雇用が継続する見込み」が必要。
- 申請:休業開始予定日の1か月前までに申し出ること。
育児休業を取得できる期間と条件
育児休業は、子どもの年齢や家庭の状況に応じて取得できる期間が異なります。以下の表に、期間と条件をまとめました。
| 期間 | 条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 出生~1歳 | 原則期間。1歳未満の子を養育する従業員が対象。 | 雇用保険加入者は育児休業給付金を受給可能。 |
| 1歳~1歳6か月 | 保育所に入所できないなど特別な事情がある場合。 | 延長申請が必要(保育所入所不可証明書添付)。 |
| 1歳6か月~2歳 | 引き続き保育所に入所できないなど特別な事情が継続。 | 再度延長申請が必要。 |
| 産後パパ育休(出生時育児休業) | 子の出生後8週間以内に最長4週間取得可能(分割2回まで)。 | 男性限定制度。通常の育休と併用可能。 |
その他のポイント
- 育休中は雇用保険から育児休業給付金が支給されます。
- 社会保険料(健康保険・厚生年金)は免除されます。
- 男性には「産後パパ育休(出生時育児休業)」があり、子の出生後8週間以内に最長4週間取得可能(分割2回まで)。
育休取得時の手続きと期間ごとの対応
育児休業を取得する際には、期間に応じて必要な手続きがあります。以下に、各期間の手続き内容をまとめます。
育休開始前の手続き
- 申請期限:育休開始予定日の1か月前までに、事業主へ申し出る必要があります。
- 提出書類:育児休業申出書(企業指定様式)、子の出生証明書など。
- 企業側の対応:就業規則や制度内容の説明、育休取得意向確認。
育休中の手続き
- 育児休業給付金の申請:企業がハローワークへ申請(雇用保険被保険者資格を確認)。
- 社会保険料免除:企業が年金事務所・健康保険組合へ申請。
- 延長申請:保育所に入れない場合、1歳到達前に延長申請(1歳6か月まで)。
延長時の手続き
| 延長期間 | 手続き内容 |
|---|---|
| 1歳~1歳6か月 | 保育所入所不可証明書を添付し、企業経由でハローワークへ延長申請。 |
| 1歳6か月~2歳 | 引き続き保育所入所不可証明書を提出し、再度延長申請。 |
復職時の手続き
- 企業側:復職日を確認し、社会保険料の徴収再開、給与計算の再設定。
- 従業員側:必要に応じて時短勤務やテレワークの申請。
最新の育児休業取得率(2025年)
厚生労働省の調査によると、2025年の育児休業取得率は以下の通りです:
-
- 女性:86.6%
- 男性:40.5%(前年より10.4ポイント上昇)
育児休業取得率の推移(2020〜2025年)
| 年度 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 2020年 | 12.65% | 81.6% |
| 2021年 | 13.97% | 85.1% |
| 2022年 | 17.13% | 85.6% |
| 2023年 | 30.1% | 86.3% |
| 2024年 | 40.5% | 86.6% |

※出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」
育児休業取得率の推移(2020〜2025年)のポイント
このグラフは、2020年から2025年までの男女別育児休業取得率の変化を示しています。
- 女性:取得率は80%台後半で安定し、2025年には約87%に達しています。女性の育休取得は制度定着が進んでいることがわかります。
- 男性:2020年の約12%から急速に上昇し、2023年には30%を突破、2025年には政府目標の50%に近づいています。法改正や企業の取り組みが効果を発揮していることが明らかです。
- 全体傾向:男性の取得率の伸びが顕著であり、企業における育休促進施策が成果を上げていることを示しています。
このデータは、企業が育休制度を「整備する」だけでなく「活用を促進する」取り組みを強化する必要性を示唆しています。
育休取得が進まない理由と企業の対応策
育児休業制度は法的に整備され、給付金や延長制度も充実しているにもかかわらず、現場では「取得しづらい」という声が根強く残っています。厚生労働省の調査によると、男性が育休を取得しない主な理由は以下の通りです。
- 業務が繁忙で職場の人手が不足している(38.5%)
- 育休を取得しづらい職場の雰囲気(33.7%)
- 収入が減ることへの不安(16.0%)
- 自分にしかできない仕事がある(22.1%)
これらの課題に対して、企業が取り組むべき施策は以下の通りです。
① 職場環境の改善
業務の属人化を防ぐため、ジョブローテーションや業務マニュアルの整備を進めましょう。ITツールやDXによる業務効率化も有効です。また、繁忙期の人員計画を見直し、派遣や短期雇用を活用することで、休業取得による負担を軽減できます。
② 制度の周知と意識改革
管理職向け研修や社内説明会を通じて、「育休取得はキャリアにマイナスではない」というメッセージを浸透させることが重要です。特に男性育休は、上司の理解が取得率向上の鍵を握ります。出生時両立支援助成金などの活用も、企業の取り組みを後押しします。
③ 制度の充実と柔軟性
法定制度に加え、企業独自の育児休暇制度(例:子どもの行事参加休暇、配偶者出産休暇)を整備することで、従業員のニーズに応えられます。さらに、テレワークや時短勤務など柔軟な働き方を選択できる仕組みを導入することで、育児と仕事の両立を支援できます。
具体的な企業事例(福利厚生・育児支援)
事例1:サントリーホールディングス
男性育休取得率100%を目標に掲げ、管理職による「声かけ運動」を実施。さらに、育休取得者への復職支援プログラムを導入し、キャリア継続をサポート。
2024年末にサントリーホールディングス(株)、サントリー食品インターナショナル(株)は男性社員の育児休職取得率100%を達成しました。
ポイント:管理職の意識改革、復職支援制度
事例2:パナソニック
最長2年間の育児休業制度を導入し、復職後の時短勤務や在宅勤務を柔軟に選択可能に。これにより、育休後の離職率が大幅に減少。
本社全体としては、2030年度までに男性社員の育児目的の休暇・休業取得率を100%にするという数値目標を掲げており、現在はその達成に向けて制度整備や社内啓発を進めている段階です。
ポイント:長期育休制度、柔軟な働き方
https://www.panasonic.com/jp/about/sustainability/dei/onoff.html
引用元:パナソニック(株) 仕事とプライベートとの両立支援に関する取り組み
事例3:LINEヤフー株式会社
育休中の社員にオンライン研修や社内情報共有を提供し、復職準備を支援。育休後のキャリア停滞を防止する仕組みを構築。
LINEヤフーは、社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりを重視し、柔軟な働き方と多様性の尊重を軸に制度を整えています。オフィスとリモートを組み合わせた「LINEヤフー Working Style」や、コアタイムなしのフルフレックス制度を導入。育児・介護支援では、時短勤務や子の看護休暇、育児休業(最長2歳まで)などを整備し、ベビーシッター補助や不妊治療支援も提供。社員の成長支援やAI活用推進にも力を入れ、働きやすさと挑戦の両立を目指しています。
ポイント:子育て支援、多様な働き方へのサポート
https://www.lycorp.co.jp/ja/recruit/workplace/#way_of_working
引用元:LINEヤフー(株) 働く環境
育休の活用促進には人事の支援が不可欠
働き方の多様化にともない男性の育休取得率は今後ますます向上すると予測されます。企業の将来を担う子育て世代が安心して働ける環境づくりは、あらゆる企業にとって向き合わなければならない要件のひとつといえるでしょう。特に、男性の育休に関する従業員の意識改革では、人事の働きかけが大きく左右します。従業員の立場に立って、将来を見据えた環境整備に取り組んでいきましょう。
ベネフィット・ワンの福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」では育児に関するメニューはもちろん、ワークライフバランスの充実、健康経営の推進、教育・研修の支援をトータルでサポートする約140万件のサービスを地域・世代間格差なく平等にご利用いただけます。その中でも「Netflixプラン」は、従業員に利用される福利厚生の導入を目指すにあたって、今人気のプランとなっております。ぜひご検討ください。
まとめ
2025年の育児休業に関する法改正は、企業にとって「育児支援の質」が問われる転換点です。人事担当者の皆様には、制度の整備だけでなく、従業員が安心して利用できる環境づくりが求められます。
ワークライフバランスの充実を支援する
福利厚生サービス ベネフィット・ステーション

待機児童問題/介護離職者の増加など、ワークライフバランスを取り巻く環境には問題が山積しています。
フレキシブルな勤務形態、休業・休暇制度を整えることは大前提として必要ですが、それだけでは育児・介護にかかわる金銭の問題や情報の提供不足といった課題が残ります。
福利厚生サービス ベネフィット・ステーションの導入により上記の課題を解決することができます。
①【育児】保育園探しのお手伝いや認可外保育施設利用時の割引等があり、保育と仕事の両立を支援できる。
②【介護】介護情報の無料提供・無料相談、介護用品購入費用の一部還付を受けられ、介護離職を防止する。
また、従業員が企業担当者を介さずサービスの利用申し込みを行うため、導入後の事務作業はほとんどありません。
ぜひ人事制度の改定と併せて福利厚生制度の拡充を検討していきましょう。

