株式会社CRAZY
冠婚葬祭 51-100名- 課題
- ・結婚、妊娠・育児時における、働き方の選択肢が存在していなかった。
- 行なった施策
- ・「グレートジャーニー制度」。年間の公休数を自由に設定でき、自分に必要な長期休暇も設定可能。長さの規定なし。
・子どもを持った社員のために、柔軟な育児サポート制度を設定。
・社長との相談により、社内に専任のベビーシッター制度の設置。
- 結果
- ・担当女性が、出産半年で職場復帰。
・結婚や出産など、ライフスタイルに合わせた働き方ができるようになった。
- 制度を成功させるためのポイント
- ・愛される福利厚生制度には、社員からの要望が必要不可欠。
・社員からの要望を吸い上げるためには、日頃から密なコミュニケーションを取る。
・福利厚生制度の効果を最大化させるためには、制度を作って終わらせるのではなく、状況や必要性に応じてかたちを変えていく必要がある。
株式会社CRAZY(以下クレイジー)はオーダーメイドウェディングのプロデュース事業をはじめ、オーダーメイドのケータリングや地域のプロモーションなど6つの事業手掛ける企業です。
独自性が高いユニークな事業を展開し、数多くのメディアで話題を集める中、その”クレイジー”な福利厚生制度にも注目が集まっています。
出産後でも女性が一線で活躍できるように整えられた社内託児所制度や、上限のない長期休暇取得を可能とするグレートジャーニー制度、全社員で健康的な昼食をとるランチ制度など、一見すると特異な制度のように感じられます。
しかし取材を経て、それが単に突拍子もない福利厚生ではなく、企業理念である「Style for earth」を突き詰めた結果から生まれたものであることがわかりました。
今回はクレイジーがもっとも重要と考える社員と企業の関係やその働き方、また福利厚生に対してどのような考えを持ち行動に移しているのかについて、CRAZY WEDDINGの最高執行責任者である遠藤様にインタビューしました。
社員に愛される福利厚生制度を作りたい、社員と企業のより良い関係を築いていきたい人事・総務の方には、ぜひご一読いただきたいと思います。
自分らしく働くために必要なものを制度として取り入れてきた
ー現在の福利厚生制度についてお話を聞かせてください。どの制度も個性的な印象を受けましたが、それぞれの制度を作ろうと思ったきっかけ、その制度を導入するまでの取り組みについて教えてください。
これは誰に話しても驚かれることなんですが、どの制度もこの制度を作ろう、と思って特別にできたものではありません。
創業時から大切にしている‟人が人らしく働ける場を作る”という企業理念をもとに、個人が自分らしく働くために必要なものを取り入れてきました。その結果として、気が付いたら制度として形となっていました。
ー気が付いたら制度、なるほど…一般の企業では考えられないような気がします…
なかなか考えにくいですよね(笑) 実は、私が妊娠をしたことがきっかけとなりできた制度もあります!嬉しいことに、それは今でもクレイジーの制度として形として残っています。
どの制度にも必ずその制度ができた何かしらの”きっかけ”があります。私の話を含め、実際の制度をご紹介させていただきます。
大好きな子供といつも一緒にいたいという想いから実現した子連れ出勤制度
私自身、クレイジーで初の育児休暇を取りました。
出産を経て、職場復帰を考えたとき、子供はかけがえのない存在で少しでも長く一緒にいたいという想いがでありつつ、出産前のようにみんなと一緒に一線でバリバリ働き続けたいという気持ちの葛藤から、
・子供を託児所に預けて半年で責任者として仕事に復帰をする
・子供のことを考えると、もう1年は育児休暇をとるべき
2つの選択で揺れる中、社長の森山とこれからの仕事について相談する機会を設けました。私にはどちらかの選択とるしかないと思っていました。しかし、森山から返ってきた答えは意外なものでした。
遠藤さんが「自分らしく働くため」に必要なことであれば、どちらかを無理に諦める必要はないよ。それに他の女性社員もみんな、子供を産むでしょう!この先みんなが遠藤さんと同じような問題で悩むことになるだろうし、これが自分のベストだと思える働き方をしよう。
この話し合いをきっかけに、私はどちらの選択肢もとるという決断をしました。
愛する我が子といつも一緒にいられるよう子連れ出勤をし、社内に専任のベビーシッターを付作り、私が働いている間は子供を預け面倒をみてもらい、また大好きな仕事にも半年で職場復帰する、という良いとこどりの結果となりました。
その時の自分に必要な長期休暇を取得するグレートジャーニー制度
創業当初からクレイジーでは、年間の公休数を自由に設定でき、その時の自分に必要な長期休暇も自分で決めて取得ができます。その休暇の長さには規定がありません。
働くことも、休むことも、自分の意志で決める、というクレイジーの理念をきっかけとして、形になったものがグレートジャーニー制度です。
1ヶ月の旅行と仕事の両立を考えるとなかなか難しい選択のように思われますが、お客様に感動や経験を演出でご提供する職業ですので、その学びの一環だと考えています。
社長の森山が、この制度をもっと積極的に使おう、と推奨しているので(笑)
ーいち社員からすると実際グレートジャーニー制度を利用するハードルが高い気がするのですが、その点はいかがでしょうか?
社内で休暇を取得する社員に対して悲観的な空気は一切ありません。
みんなが働いている手前休暇を申請するのに気が引ける、と使えて当たり前の制度が使いにくい…というのはよく聞く話ですが、私自身も前職で同じような経験をしたことがあり、その風習に違和感を覚えていました。
クレイジーでは、全社員が「いいじゃん、行ってきなよ!」「仕事を忘れて思いっきり楽しんできてね!」とみんなが笑顔で送り出してくれます。
また、ここもすごく素敵だなと思うところなんですが、私自身現在1児の母で、妊娠中のつわりがかなり辛かったんです。
創業メンバーでもある手前、つわりで働けないことに対して「本当にみんなに申し訳ないな」と思っていました。しかし「今は子育てに集中して良いんだよ!」「体調が良くなるまでしっかり休んで!」「それが今のあなたの仕事だよ」と、社員の誰もが私を励まし支えてくれました。
クレイジーでは、地球にとって必要なコト・モノを創造する、という企業文化があります。
そのため、地球を豊かにする”ヒト”を創造する子育ては偉大な仕事である、という認識を社員全員が持っています。産休から復帰してからもクレイジーのそういったカルチャーのおかげで、とても居心地が良いです。
ポイント
- 自分たちが働くために必要なものを形にしたものが制度
- 企業文化から生まれた制度だからこそ、高い利用率
クレイジー流、要望を取り入れる工夫とポイント
ー会社として、社員全員の要望や不満を聞くのは容易ではないと思うのですが、その点について工夫していることはありますか。
1 ) 常に社員と対話を重ねる
共同体験を経て、同じ価値観を持ち続けること、そして常に対話を繰り返すことは働く上でもそうですが、生きていく上でも、とても重要なことだと思っています。
例えばクレイジーの文化であり制度でもありますが、創業の頃からどんなに忙しくても必ず社員全員が揃って昼食をとります。
日々わずかな時間でもお互いにコミュニケーションをとることで、悩んでいたり、体調が優れない等の些細な変化にすぐに気付くことができます。
その社員が何について悩んでいるのかをとことん話し合い、解決に持っていきます。
就労環境に関する悩みであれば、それこそ「自分らしく」働けていない、ということになるので、クレイジーにとっては大きな問題です。必要に応じてすぐに解決策を検討します。
2 ) 取り入れてダメなら即改善
「福利厚生制度」は社員全員の要望から生まれますが、それに対して不満や障害があればすぐに話し合いの場を設け、最適な状況に持っていけるように調整をします。
福利厚生に限った話ではありませんが、通常の企業が企業活動を1年かけて行うことをクレイジーでは3ヶ月を1サイクルとして捉えることで、通常の4倍のスピード感で動いています。また、社員としても自分達自身の意見が尊重されるので、より積極的に意見を発してくれるようになります。
3 ) 全員で決めたことは、必ず結果にコミット
全員に意見を求めた上での”決定”については必ず結果にコミットする、という文化があります。
あとで決定事項に文句を言っても誰も得しませんし、なぜその場で意見を言わなかったのかと口論が始まるだけです。そのため、社員全員、自分自身が納得できるように必ず自分の意見を持って打ち合わせに参加します。
社員全員同じ認識を持っているため、結果として良いものが生まれ続けます。
副次的な効果
結婚や出産などライフスタイルに合わせた働き方ができる
一人一人のライフスタイルに合わせて、柔軟な働き方を提案しています。
生活環境の変化によって働けなくなったり、ベストなパフォーマンスを発揮できなくなるのを防ぐため、リモートワークや在宅勤務、時短勤務など、その人のその時に合わせたベストな体制を整えます。
子供とのコミュニケーションでリフレッシュ
仕事上行き詰まってしまうことも当然ありますが、そんなときは同じオフィスにいる子供とコミュニケーションをとることで癒され、仕事にも励めるという副次的な効果があります。
また、子供を通じた社員同士のコミュニケーションが多くなり、オフィスにはたくさんの笑顔が生まれます。
今後の展望と目標
ー今後の展望等についてお聞かせください。
創業時から2,000社起業、100万人の雇用をすることを目標として掲げています。
順調に社員が増えていく中で、今後どのようにして企業文化を保ちながら事業を拡大していくのか、という大きな課題もあります。
現在の想定では、一事業部を150名以内で構成すれば今の文化を保っていけると考えていますが、現在の人数(72人)でもすでに事業部内でチームを作り分業化するなど、当初想定になかった体制を導入し、それが良くも悪くもどう会社に影響してくるのかを模索しています。
どうすればこのままの企業文化を維持しながら拡大ができるのか、社員としっかり対話しながら検証を行っていきたいと思います。
明日からすぐにできる!クレイジー流、社内のコミュニケーションを活性化させるためのアイディア
ー今までのインタビューを通して、コミュニケーションの重要さを再認識させていただきました。
ただ、はじめてみようと思ったものの、社内環境をどのように改善していけば良いのかが、分からない企業様も多いのではないかと思います。
そこで、どの企業でも実践できるコミュニケーション活性化のためのアイディアを教えていただきました。
ミーティング前にはチェック・イン
ミーティングをはじめる前に、参加者社員全員に今回のミーティングに参加するという意思表明や他に抱えている課題について、各社員が2分程で共有する時間を設けています。
その理由としては、会議に参加しているけれど心ここにあらず、という社員をなくす、また、自分はこの会議に参加しているんだ、という当事者意識を持ってもらうためです。
クレイジーでは、この制度をチェック・インと呼んでいます。
会議を開いてもあまり意見が出ない企業や参加者が多い会議がある企業には、導入をオススメします。
朝礼ではスキンシップを
少しハードルが高いですが(笑)朝礼時全員で握手やハグをしています。
スキンシップをするこどで、悩みを持つ社員や体調が悪そうな社員の些細な変化にもすぐに反応ができます。
若い社員が多い企業であれば比較的ハードルが下がりますので、社員同士でのコミュニケーションを活性化させるにはオススメです。
まとめ|クレイジーに学ぶ福利厚生制度のありかた
クレイジーの福利厚生は一見ユニークな印象を受けますが、実は密なコミュニケーションをとる企業文化・理念の成果であるということがわかりました。
今回のインタビューを経て、重要なポイントは以下の3点です。
1 ) 愛される福利厚生制度には社員からの要望が必要不可欠
2 ) 社員の要望を吸い上げるためには日頃から密なコミュニケーションをとる
3 ) 福利厚生制度が最大限のパフォーマンスを発揮するためには、制度を作って終わりではなく、必要に応じて形を変える必要がある
日頃からのコミュニケーションを心がけ、社員の声にきちんと耳を傾ける。それだけで社内は明るくなり、コミュニケーションが活性化します。まずは今回のインタビュー記事を参考にしていただき、できることから試みてはいかがでしょうか。
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