家族のように従業員を支える。セールスフォースが2019年度「働きがいのある会社ランキング」で1位を獲れた理由

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働きがいのある会社を作るためにはどうしたら良いのか。

近年働き方改革の動きが本格化する中で、多くの企業は従業員満足度を上げるための方法を模索し続けています。

そのような状況が続く中で、2019年度の「働きがいのある会社ランキング」で1位に輝いた株式会社セールスフォース・ドットコム。

同社にはOhana文化と呼ばれる独自の文化を社内で醸成し、4つのコアバリューを組み合わせて従業員に浸透させることにより、高い従業員エンゲージメントを獲得しています。

セールスフォースはなぜ従業員から選ばれる会社となれたのでしょうか。

今回は同社人事本部 人事プログラムシニアマネージャーの酒寄久美子(以下、酒寄)氏、人事本部ディレクターの浅田靖隆(以下、浅田)氏、マーケティング本部PRディレクターの水川治昭(以下、水川)氏にその秘訣についてお話を聞きました。

従業員の成功を支える社内文化と4つの行動指針

ーまずは御社の事業概要について教えてください。

人事本部ディレクターの浅田靖隆氏

浅田:株式会社セールスフォース・ドットコムは、1999年にアメリカのサンフランシスコで創業し、翌2000年に日本法人を設立しました。

事業としては顧客管理システムをクラウドベースで提供している会社でして、事業を開始した当初は、企業のシステムをより便利に利用できるような仕組みを提供していこうと創業者のマーク・ベニオフが考えたのが始まりです。

現在は、単なる営業のサポートツールということではなく、私たちのお客様を取り巻く全てのタッチポイントの中でそれぞれ最高のカスタマーエクスペリエンスを提供するプラットフォームサービスを目指しているという状況です。

ー人事施策を行うにあたって、御社が大切にしていることは何ですか。

マーケティング本部PRディレクターの水川治昭氏

 水川:今年の3月でちょうど20周年を迎えるセールスフォースには、その企業文化を支えるために「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」という4つのコアバリューが存在しています。

その4つの中で特にカスタマーサクセス、つまりお客様の成功は最も大切にしていることです。

社外でのお客様はもちろん、社内でお客様と言えば従業員(エンプロイー)のことであると考えています。

普通の企業であれば人事部(ヒューマンリレーション)だと思いますが、弊社の場合はエンプロイーサクセス(Euccess)と言うんですね。

酒寄:私たちの名刺もHRではなく、部門名が英語ではEmployee Successとなっています。つまり、社員の成功を支えるための部門です。

ーなぜ従業員の成功を大切にするのでしょうか。

人事本部 人事プログラムシニアマネージャーの酒寄久美子氏

酒寄:元々私たちの会社には、Ohanaカルチャーというものがあります。

Ohanaというのはハワイ語で「家族」という意味なのですが、家族とは従業員やお客様、一緒に働いているパートナー様、コミュニティの方々など、私たちに関係する方々すべてがOhanaのメンバーです。

またビジネスは世の中を良くしていくものだとも考えています。

そのビジネスの成功を実現させていくためには、そこで働く1人ひとりの従業員が自分らしく生き生きと働くことが重要と考えているので、エンプロイーサクセスによってそれが実現できるように施策を行なっています。

ーエンプロイーサクセスには、社員の自己実現という意味も含まれているのでしょうか。

酒寄:そうですね。個人での自己実現ももちろんサポートするのですが、私たちはOhanaの一員なので、もし誰かが困っていれば手を差し伸べサポートすることも大切だと考えています。

そのような文化を社内で作っていくと、お互い助け合う繋がりも生まれてきます。

それが社会に浸透し、結果的にお客様に対してもより良いサービスを提供できるような循環していくことを目指しています。

信頼を得るためには「透明性」が大切

ー具体的な人事施策をいくつか教えてください。

酒寄:従業員の健康維持と増進、そしてリフレッシュをサポートするための施策として例えば、「ウェルビーイング補助」という制度があります。

これはスポーツクラブやジム、マッサージ、ダイエットカウンセリングなど健康維持のための個人での取り組みに、会社から月に1万円の補助が出るというものです。

浅田:また従業員に対して〇〇補助といったサービスを提供して、それが実際にどれくらい利用されたのか?どういうトレンドが今あるのか?といったことを、自社のシステムを使ってそれぞれのデータを分析していることも弊社の大きな特徴の1つだと思います。

福利厚生とは少し違った観点ですが、エンプロイーサーベィは部下が5人以上いるマネージャーに関するスコア、評価は全社に公開されます。

評価の透明性を高めることで、従業員のエンゲージメントも高まると考えています。

ー評価の数字などの公表を嫌がるマネージャー層はいませんでしたか。

酒寄:弊社は元々、お客様とだけでなく従業員とも透明性を持った関係性を作ることが私たちのカルチャーなので、入社されたばかりの社員は驚かれることは多いです。

クローズの状態からオープンにしたのではなくて、最初からオープンであるというのも大きな理由の1つだと思います。

4つのコアバリューのうちの1つである「信頼」を高めるためにも、社外・社内のお客様との間で透明性を常に保っておくことは非常に重要なことだと考えています。

はじめから完璧な人事制度はない、改善を繰り返す

ー新しい人事施策を取り入れる際に壁だと感じることはありますか。

酒寄:壁ではありませんが、私たちが従業員の働き方を自由にしたいと考えるとき、常に制度の改善を繰り返しています。

例えば、働き方の制度として「ワークフロムホーム(在宅勤務)」「フレックス制度」があります。

この在宅勤務は、自宅などオフィス以外での就業ができる制度で、フレックスは、働く時間を自由に選択できるというもの制度です。

従業員からは、集中して仕事ができる、自分のライフスタイルで選択でき、柔軟性が高く、従業員の働きやすさの向上につながっています。

とはいえ、部門によっては自宅よりもオフィスでチームと同じ場所で作業をしたほうが、効率がよいというケースもあり制度の活用の仕方は、部門判断にゆだねています。

100人を同じ制度に当てはめるというより、仕事の内容、従業員の状況により、自由に選択でき、それぞれにあった異なったアプローチが必要かと思います。

浅田:ここにも私たちの思想が現れています。先ほどお話した4つのコアバリューのうち、「イノベーション」に関わってくるところですが、製品をバージョンアップする過程において、お客様のフィードバックを受けて絶えずブラッシュアップ、機能改善をしていくといったことを大切にしています。

社内の人事制度においても同様で、初めから完璧に人事制度はありません。

制度をローンチした後も従業員からの声に耳を傾け、絶えずブラッシュアップしていくことが重要だと考えています。

働くことを誇りに思える会社づくり

ー御社は2019年度の「日本における『働きがいのある会社』ランキング」で見事1位を獲得されました。それを実現できた秘訣は何だと思われますか。

酒寄:弊社の4つのコアバリューの浸透と、そのバリューに基づくOhanaの文化、また働く環境が大きく影響しているのではないかと思いますが、

創業以来行っている1-1-1モデルというものがあります。

それは就業時間の1%、会社株式の1%、製品売上の1%をボランティアやNPOや教育機関に無償提供するというプログラムです。

1995年以来、グローバル全体で約350万時間という時間を社会貢献活動に費やしてきました。

社会貢献に協力してくれる人数が多ければ多いほど、提供できるボランティアの時間もプログラムも増加し、そして実際、私たち自身も参加することによって学びやエネルギーなど、多くのものを得ることができます。

ボランティアを推進する部門もありますが、社員は強制されてやるのではないですし、各部門ごとに従業員が自らがボランティア委員として積極的に活動し、定期的なチームビルディングなどを計画してくれます。

普段の生活ではボランティア活動をする機会を探すのもなかなか難しいと思うので、従業員に積極的に推進してくれる会社に属することに誇りを従業員が持っているのかなと。

社内では様々なアンケートを取り、社員の声を聴いていますが、「4つのコアバリューがあるから行動を起こす時でも迷わない」というコメントもありました。

また、失敗を恐れず次の成功に繋げる、チームで勝利をつかもうという社内文化を醸成出来ていれば、その会社でのやり甲斐や働きがいに繋がっていくのかなと思います。

ー従業員満足度を上げるためにはどのようなことが大切だと思いますか。

酒寄:基本的には、Win as a teamという考えも根付いているので、仕事はチームで協力して行い、定期的なマネージャーとの1on1ミーティングで、進捗を共有したりアドバイスやサポートを得ています。

部下が行き詰っていることや困っていることを、チームの力でカバー出来るような仕組みを作っています。

マネージャーとしてだけでなく、家族として助け合うことが意識の根底にあると思います。

水川:社員を家族として捉えることで、社員の本当の家族も含めて会社がサポートするための福利厚生が色々用意されています。

そういった点も従業員の満足度に貢献しているのではないでしょうか。

従業員を1人のお客様として捉え、支えることがカギ

ー企業と従業員が良い関係となるために大切なことは何でしょうか。

酒寄:キーワードとしては「エンゲージメント」と「エンプロイージャーニー」の2つがあると思います。

それぞれが自分のキャリア・人生を生きていく上で、進みたい道を選べる選択肢が社内で多く提供されているということも大切で、弊社にはそのために健康補助だけでなく学習補助なども用意されています。

業務にプラスの影響がある勉強はもちろんOKですし、どんな分野を伸ばしていきたいのか、今後どのようにキャリアを進んでいきたいのか、そういったプランをマネージャー含めて丁寧にミーティングしています。

そうしたキャリアサポートをしつつ、自分の仕事がビジネスや社会に役立っているという気持ちになるようにモチベーションを高め、長く会社に貢献してもらえるような仕組みをソフト・ハードの両面から支えていくことが大切なのかなと思います。

水川:これまでお話してきた4つのコアバリューのうち「平等」という項目がありますが、雇用形態や性別に関わらず同じ仕事をしたら同じ給料を支払う、同一労働同一賃金にも力を入れています。

今日は弊社の福利厚生制度を全てご紹介することは出来ませんでしたが、Ohana精神をもとに不妊治療補助や出張時の緊急対応アシスト提供、オフィス内のメディテーションルームの設置、充実したなカフェテリアなど、従業員の生活を包括的にサポートするような取り組みを行なっています。

酒寄:私たちの部署がHRではなくES(エンプロイーサクセス)と表すように、従業員も1人のお客様と捉え、サービスを絶えず改善していきながら満足度を上げていくことが大切だと思います。

そうしていくことが、働きがいのある会社を作っていくための第1歩になっていくのではないでしょうか。

 

取材・文:花岡 郁

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