働き方改革

第3回:同一労働同一賃金における「不合理ではない待遇差」について

第3回

「不合理ではない待遇差」とは、「不合理な待遇差ではない」ことである。

不合理な待遇差を、「ハマキョウレックス事件」の最高裁判例から抜粋して図表1に掲げる。待遇の一つ一つについて、その目的・性質から見て不合理な待遇差がないかを判断するという手続きである。待遇全体において不合理な差があるかではなく、一つ一つを個別にとらえるもので、経営側にとっては厳しいといえる。

また、一審、二審、最高裁判決と経る過程で、次第に不合理性の判定が厳格になっているようにみられる。同社には待遇差のある手当として、①通勤手当、②無事故手当、③作業手当、④給食手当、⑤皆勤手当、⑥住宅手当があり、裁判で争われてきた。

一審では、①通勤手当の差だけが不合理とされた。非正規従業員にも通勤手当は支給されていたものの、正規従業員とは算定方式が異なっていたためである。それ以外の②から⑥の手当は非正規従業員には支給されていなかったにも拘わらず、不合理な待遇差とはされていなかった。

しかし、二審では、①通勤手当に加えて②無事故手当、③作業手当、④給食手当が非正規従業員には支給されていなかったという待遇差も不合理と判断された。

さらに最高裁では、⑤皆勤手当の不支給も不合理とされており、⑥住宅手当のみが不合理な待遇差ではないとされた。

このように不合理性の判断は時期を追うごとに、一つ一つの手当の目的・性質に照らして不合理性を判断する手続きが明確になっている。改正法でも、その手続きとなっている。

給食手当は、勤務時間内に昼食の時間帯を挟む従業員に対して昼食費用を補助するという目的であるとされている。非正規従業員であっても昼食を挟んで勤務している。よって、非正規従業員にだけ給食手当を支給しないのは不合理であるとされた。

無事故手当は、交通事故を防ぐ意識を高めるインセンティブを目的とする手当である。非正規ドライバーであっても事故を起こしてほしくないから正規従業員のドライバーにだけ無事故手当を支給するのは不合理であるとされた。

これまでは正規・非正規間の待遇差は、「正規従業員には長期勤続を期待しているので待遇が手厚い」という説明が一般には通用していた。しかし、一つ一つの待遇の性質や目的から、待遇差の不合理性を判断するようになると、この説明では不合理な待遇差でないということが難しくなった。人手不足の時代にあっては、「非正規従業員には定着を期待しない」というのは不合理ということである。

非正規従業員が急増した20年前は、その採用・確保が容易であり、その定着に配慮する必要性は薄かった。しかし、雇用需給のひっ迫化によって、正規従業員と待遇差があることが不合理となった。

図表1 不合理な待遇差の例

皆勤手当は正規従業員だけに支給され、非正規従業員には支給されていない。

<皆勤手当の目的・性質>

皆勤手当は、休日以外はできるだけ出勤することを促すインセンティブ性のある手当。これにより毎営業日に必要なドライバーの数を確保することが目的である。

<目的・性質に照らした合理性>

必要なドライバーは正規従業員、非正規従業員いずれでも構わない。

<不合理性の判断>正規従業員にだけ皆勤手当を支給するのは皆勤手当の目的・性質に照らして不合理である。

 

 

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