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第15回:「同一労働同一賃金」へ向けた企業の対応について

 「同一労働同一賃金」に向けた企業の対応が難航している。大企業の社長100人を対象に民間企業が実施したアンケート調査によると、待遇改善によって人件費負担が増えるとの回答は469%で約半数に上る。法改正への対応が完了したとする回答は393%で約4割に止まっている。

 また筆者が9月に開催した「同一労働同一賃金」のセミナー会場で、「同一労働同一賃金への対応における課題」(複数回答)を尋ねたところ、「法令上、どこまで待遇改善すればよいか分からない」(48%)「待遇改善原資の確保が難しい」(25%)「非正規の種類が多様で一律改善が難しい」(20%)「他の人事制度の見直しが優先事項である」(11%)などの回答が寄せられた。人事部門では、対応に難航していることが分かる。

 これらの回答を総合すると、以下のような課題が浮かび上がる。これを再整理し、事例をもとにその具体的な対応手段を探っていきたい。

 1997年の景気悪化を機に急拡大した非正規雇用は、次第に細分化・複雑化・多様化した。契約社員は本来有期雇用契約であったが、無期転換ルールの新設などもあり、無期雇用契約の契約社員も生まれた。また有期の契約社員のなかでも、小売業などにおいては働き方に応じて雇用区分が分かれている。雇用延長により60歳で再雇用された再雇用社員、嘱託社員なども増えた。パートタイマーも勤務日数や勤務時間で分かれ、「フルタイムパート」と呼ばれる区分も生まれた。

 これらの多様な非正規従業員層を、雇用区分間での制度の矛盾や不公平感がなく、当事者の納得を得られるよう待遇改善するのは難しい。

 図表は、厚労省の「同一労働同一賃金」ガイドラインにおける、正規・非正規間の待遇差が、不合理として問題となる例とならない例のイメージ図である。問題となるかならないかが明確でない中間部分が広いことが分かる。均衡待遇においてはこの空白の範囲のいずれかに待遇差の線引きを行うことになるが、幅が広くてどこに基準を置くべきか決めきれない。またいずれの場所に基準を置いても従業員から訴訟を起こされるリスクがある。

 従業員に対する待遇(給与、手当、福利厚生、労働条件)は制度数が多く、改善の優先順位付が難しい。この課題に対しては、現実的には①休暇や固定的な福利厚生施設利用のように追加コストが発生しない待遇、②ガイドラインにおいて「問題になる」と具体的に例示されている食事手当や通勤手当、最高裁で指摘された精勤・皆勤手当、無事故手当等の待遇の均等化が優先される。

 非正規従業員の手当や福利厚生の待遇改善を図ろうにも、原資の確保が難しい。とくに非正規の多い、小売・卸・流通、サービス、飲食、福祉などの業種ではなおさらである。

 

 

 

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