未分類

【保存版】ワークライフバランスをあなたの会社で実現する完全導入5ステップ

【保存版】ワークライフバランスをあなたの会社で実現する完全導入5ステップ

「これからはワークライフバランスだ!」という事をよく聞きますが、実際どういうものなんですか? ワークライフバランス自体は、実は以前からあった言葉です。 政府の「働き方改革」によって、より重要な概念として注目されるようになってきました。 また日本の長時間労働が問題視されてきた背景もあります。 しかし、ワークライフバランスには以下のような誤解が存在します。

  • 仕事とプライベートは50%50%が理想的
  • 長時間労働を削減する・残業をしない/させない
  • 19:00には退社できるようにするべき

そうですね、私もこんなイメージを持っていました。 一つひとつ考え方が間違っているわけではありませんが「ワークライフバランス」は、もっと柔軟性が高いものです。 「このバランスが理想的」というものではないんですね。

しかし、ワークライフバランスは正しいステップを踏めば、決して難しいものではありません。 今回は、ワークライフバランスという言葉を初めて聞いた方から、ワークライフバランス向上に取り組みたい経営者の方まで実践できるように、ワークライフバランス導入の5ステップをまとめました。 ワークライフバランスに関する記事には

がありますが、これを元に更に強化した内容になっています。 ぜひ最後までご覧ください。

【注目】自社にとって本当に必要な福利厚生制度は?

もしもこの記事をご覧いただいている方の中で、自社の福利厚生制度についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずはじめに「企業担当者必見!「福利厚生サービス」のおすすめ5選を解説」の記事をお読みください。

福利厚生のアウトソーシングについて

福利厚生の充実は、従業員満足度を向上させ、採用や離職防止にも役立ちます。

もしこれから福利厚生の導入を検討するのであれば、自社で新たな制度を一から作るよりも、低価格で手間をかけずに簡単に導入ができるアウトソーシングサービスを利用すると良いでしょう。

数あるサービスの中でも、業界でトップシェアを誇る「ベネフィット・ステーション」の導入をおすすめします。

・140万件以上のサービスが利用できるため、年齢や性別関係なく、従業員の多様なニーズに応えることができる
・福利厚生会員数は業界最大の1,548万人(※2022年4月現在)
・「福利厚生」「健康支援」「教育・研修」をサポート

従業員が企業担当者を介さずサービスの利用申し込みを行うため、導入後の事務作業はほとんどありません。

ぜひこの機会にご検討ください。

 

参考文献 ※今回の記事執筆において以下の書籍を参考とさせていただきました。

今回の記事の構成

このページの内容を見ていただくと、あなたの会社でワークライフバランスを正しく導入するための知識が手に入ります。 具体的には、以下の5つのステップに分かれます。

興味があるところから、順次読んでいただいてもかまいません。 しかし最終的にはすべての内容に目を通していただいた方が、効率的にワークライフバランスの導入・実現ができると考えています。 私はまず、ワークライフバランスの正しい定義から見た方がいいんですね。

STEP1.ワークライフバランスの正しい定義を知る

ワークライフバランスとは「生活と仕事の調和」

ワークライフバランスを一言でいうなら「生活と仕事の調和・調整」となりますが、これでは解釈がさまざまです。 生活と仕事は、互いに相反するものではないからです。 より詳しくいうと

  • 生活の充実によって仕事がはかどり、うまく進む
  • 仕事がうまくいけば、私生活も潤う

といった「生活と仕事の相乗効果が生まれるバランスの取れた状態」の事です。

ワークライフバランスとは「生活と仕事が相乗効果をもたらすバランスの取れた状態」

ワークライフバランスとは「生活と仕事が相乗効果をもたらすバランスの取れた状態」 これはほぼ間違いない共通の考え方と言ってよいでしょう。 しかし、それ以外のワークライフバランスの解釈には多くの誤解があります。

誤解されがちな「ワークライフバランス」の考え方

たとえば、ワークライフバランスを以下のようなものだと思っている方はいないでしょうか。

  • 仕事とプライベートの生活はきっちり分ける
  • 育児する女性を主に支援するもの
  • 仕事8時間、プライベート8時間、睡眠8時間がベスト
  • 理想的な仕事と生活のバランスは50%・50%
  • 新入社員の頃は仕事7:生活3にするべきだ

これは、ある種の誤解を含んでいます。 ワークライフバランスとは、厳密には仕事と生活の最適な比率を表すものや、短期的な成果を求めるものではないからです。

この考え方では、上記のとおり、一方を増やせばもう一方が減ってしまったり、偏りが生まれる事になります。 もちろん時間比率や女性支援という考え方はひとつの要素ですが、経営者がこの考え方に偏っていると危険です。

それではワークライフバランスは仕事を犠牲にして従業員の生活を取る、というようなある意味有害なものに見えて、導入にも尻込みしてしまうでしょう。

ワークライフバランスとは、生活と仕事、どちらか一方を犠牲にするものではない

ワークライフバランスとは、生活と仕事、どちらか一方を犠牲にするものではありませんし、決まったバランスではないのです。

ライフステージの中で仕事と生活に求めるバランスは、変わっていくのが自然です。

働き盛りだった40代男性も、年月が経って50代・60代になると、仕事に求めるものは変わっていくでしょう。

男性・女性・高齢者・障碍者といった多様性を取り入れられる柔軟さを企業として持つことが、ワークライフバランスの肝と言っても良いのです。

政府の方針から見る「ワークライフバランス」

実際に政府の報告書を見てみると、国内におけるワークライフバランスの考え方を知ることができます。

内閣府「ワークライフバランス憲章」 国民一人がやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活等においても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて、多様な生き方が選択できる社会

※引用:内閣府「ワークライフバランス憲章」

内閣府・男女共同参画会議「仕事と生活の調和に関する専門調査会」 老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発等、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態」

※引用:内閣府・男女共同参画会議「仕事と生活の調和に関する専門調査会」

ワークライフバランスの意義は「柔軟に選択できること」

ワークライフバランスの意義は「柔軟に選択できること」

上記を見てもらうと、どこにも「これが理想的なバランスだ」という表現がないことに気づくと思います。 ワークライフバランスという言葉から誤解されがちですが、これは「理想的な仕事と生活のバランスを決め、その通りに生活しましょう」ということではありません。

改めてお伝えすると、ワークライフバランスとは、個人が「仕事と生活の最適なバランスを柔軟に選択できる」ことに意味があるのです。

個人が「仕事と生活の最適なバランスを柔軟に選択できる」ことに意味がある

まとめると、ワークライフバランスとは

  • 仕事で成果を挙げるための成長やスキルを生活(仕事以外)で身に着ける
  • それによって仕事がより短時間で成果を挙げられる
  • より、生活が充実したものになり、スキルアップが図れる
  • 男性・女性・高齢者・障碍者といった多様性を受け入れる柔軟な働き方

といった「ライフステージに応じて、生活と仕事を調和させることで得られる相乗効果・好循環」を意味します。

本記事では、ワークライフバランスの導入のステップや考え方もお伝えしますが、この理解を忘れないようにしてください。

確かに、私もワークライフバランスは育児女性を主にサポートするものというイメージがありました。 もちろん、それはワークライフバランスの大きな役割です。 特に日本では、労働力人口の減少が社会的な問題になっています。 勤労意欲のある女性が、育児で仕事を断念することがないようサポートすることは、日本全体の急務と言っても良いです。 ただそれのみではなく、高齢者や職場メンタルヘルス、障碍者といった方々が働き方を自由に選べることがワークライフバランスの理想形です。

なぜ今、ワークライフバランスが大切なのか

ではなぜ今、ワークライフバランスが重視されているのでしょうか。 それは「少子高齢化」がもっとも大きな要因となっています。

出産・育児対策が日本のワークライフバランスの始まり

何度かお話ししている通り、日本では「ワークライフバランス」というと、女性の出産・育児・働き方を支援するものと同義として考えられることもあります。

これは日本国内におけるワークライフバランスの始まりが、女性の出産・育児の支援だったからです。

1990年代から政府による少子化対策として

  • 育児休業制度の整備
  • 保育所の拡充

が進められました。 それでも少子化の流れは止まらず、2003年に

  • 少子化対策基本法
  • 次世代育成支援対策推進法(次世代法)

が成立しました。 上記法律によって、企業に出産・育児/仕事の両立を支援するための行動が義務づけられたことが、ワークライフバランスの視点がクローズアップされるきっかけとなりました。

高齢化=介護時代の訪れ

当然、ワークライフバランスは、女性のためだけのものではありません。 男性にも大きくかかわってきます。

少子化と同様に深刻なのが高齢化問題です。 下記は「国内社会保障・人口問題研究所」による日本の労働者人口と高齢者の割合を示したグラフです。

※引用:国内社会保障・人口問題研究所HP

2017年版として発表された最新のデータです。 あと10数年の後には、団塊世代の介護対策が問題になってくるでしょう。 たとえば、男性社員にとっても

  • 親の介護が必要になった男性社員が安心して休みを取れる企業
  • 休職後、復職しても昇進の機会が与えられる企業

でないと、優秀な社員が定着しない時代になると思われます。 つまり、ワークライフバランスは、

  • 少子化に対する出産・育児支援
  • 高齢化に対する働き方改革

という2つの理由によって、大きく注目を集めているといえます。

ワークライフバランスで期待できる効果

ワークライフバランスで期待できる効果 ワークライフバランスについては、その性質上、短期的な成果を測ることが難しくなっています。 そのため、上記でお話しした通り

  • 子育て中の女性に対する支援
  • 長時間労働の改善

が主な取り組みと考えられがちです。 もちろん上記は重要な取り組みですが、ワークライフバランスの追求は長期的な目線を持つことで企業・組織の競争力を高め、国内の生産性向上につながります。

また、筆者は会社経営者と話す機会がよくあるのですが、実際にワークライフバランスに取り組もうとして失敗した事例として、現場から以下のような声が挙がったという意見がありました。

現場メンバーが懸念するワークライフバランスのデメリット

現場メンバーが懸念するワークライフバランスのデメリット

  • 生産量の担保のためには、より多くの人員が必要になる
  • 自宅などで仕事に追われる時間が増える
  • 時間外労働削減により、仕事の質に支障が出る
  • 従業員のわがままを助長してしまう

確かに、ポイントを間違えたワークライフバランスの導入をしてしまうと、確かに上記のような本末転倒の事態が起こりえます。 しかしこの記事のステップ通りに実践していただければ、そういったミスを冒す可能性をぐっと減らすことができるでしょう。

以下に、ワークライフバランスの追求により期待できる効果をまとめました。

  • 女性社員の定着(離職率の低下)
  • 優秀な人材の獲得・定着
  • 従業員モチベーションの向上
  • 業務改善による生産性のアップ
  • 企業のイメージアップ

ではひとつずつ、説明していきましょう。

STEP2.ワークライフバランスのメリットを理解する

ワークライフバランスのメリット

上記の通り、ワークライフバランスの広がりは社会的な背景が大きく影響しています。 では、企業がワークライフバランスに取り組むメリットにはどのようなものがあるのでしょう。 ワークライフバランスによって企業が得られるメリットを整理しました。

メリット(1)女性社員の定着

女性社員の定着

下記のグラフを見て下さい。 内閣府男女共同参画局が調査した、共働き世帯数の推移です。

共働き世帯の推移 ※引用:男女共同参画白書(概要版) 平成29年版

こう見ると、共働き世帯がそうでない世帯の倍以上まで達しています。 国内労働力に占める女性の働きというのは非常に大きなものになってきました。 しかし、女性の場合、育児や子育て等で仕事を諦めざるをえない現状もあります。

  • 出産、育児について適切な支援
  • 柔軟な働き方の提案

を行うことで、女性社員の定着が期待できるでしょう。 例えば、出産・介護に関する法整備が政府によって手厚く行われているにもかかわらず、第1子誕生前後に退職する女性が6割を占めるという調査結果があります。 自分で子育てしたい、というポジティブな理由は別として

  • 保育園への入園が難しく、今の働き方では復職できない
  • 復職後、育児支援をあてにできない

という理由で仕事を続けられない女性も多いのです。 ワークライフバランスの導入・強化に取り組むことで、女性が長く働けるようになり

  • 女性社員の定着
  • 女性リーダーの育成・成長

が期待できます。

メリット(2)優秀な人材の獲得

優秀な人材の獲得

現代では、終身雇用制度が事実上過去のものとなっています。 また新卒採用・中途採用ともに売り手市場としての傾向が強まっており、求職者・学生に対するアピール競争が激化、優秀な人材を確保することはさらに難しくなっています。

ワークライフバランスを推進することで

  • 社員を大切にする会社
  • 働き方が柔軟な先進企業

というイメージを作ることができ、人材の獲得に大きなプラスとなります。

スキルはあっても働き方が自分には合わない、という優秀な人材が集まってくることも期待できるでしょう。 さらに、ワークライフバランスの実現によって、獲得した優秀な人材が長く活躍できるようになります。 採用・獲得だけでなく、

  • 優秀な人材の定着
  • 人材育成・研修コストの回収

という視点でも魅力的です。

メリット(3)社員のモチベーション向上

社員のモチベーション向上

ワークライフバランスは、社員・職場全体のモチベーションにも好影響をおよぼします。 下記の図を見てください。

ワークライフバランスと労働意欲の関係 ※参照:少子化と男女共同参画に関する専門調査会(内閣府・男女共同参画推進局)

ワークライフバランスがとれていると、仕事への意欲が高いことがわかります。 特に男性は「プライベートが充実している」ことが、仕事のモチベーションにつながる傾向があります。 職場のモチベーションが上がることで、

  • 人材育成の活発化
  • 職場コミュニケーションの向上
  • 労働生産性の向上

が見込めます。 いくつかの企業事例を見ていると、リーダー社員にこそ、ライフワークバランスの活用・理解をしてもらうことが、モチベーションの上がり方を啓蒙してもらう面でも有効と考えています。

仕事も生活も充実し、活き活きと働いているリーダーを見ることで、若手・新入社員ももっと成長したい・活躍したいという意欲を新たにできるでしょう。

メリット(4)労働生産性の改善

労働生産性の改善

政府が「働き方改革」で労働生産性の向上を打ち出しているように、日本は先進国の中では労働生産性が低い部類に入ります。 以下のグラフは公益財団法人・日本生産性本部の調査から「2015年・時間あたりの労働生産性」を表したものですが、日本は18位になっています。

OECD加盟諸国の「2015年の就業者数(または就業者数×労働時間)1人あたりのGDP」(通称:国民経済生産性)2015年の就業者数(または就業者数×労働時間)1人あたりのGDP

※引用:公益財団法人・日本生産性本部HP

これは、長時間労働が常態化する企業風土が定着していることと関係があります。 先ほど挙げたものと同じく、内閣府男女共同参画局が発表した「週間労働60時間以上の雇用者の割合推移」です。

週間労働60時間以上の雇用者の割合推移 性別・年代別の労働人口調査 ※引用:男女共同参画白書(概要版) 平成29年版

全体としては緩やかに減少しているように見えますが、働き盛りにある30代・40代の男性に限ってみると、特に高い水準となっている事が分かります。 これは、男性の子育てへの参画を阻んでいる一要因といっても過言ではありません。

  • 多様な働き方への対応
  • 生活(プライベート)も充実させられる仕組み

によって長時間労働の改善・労働生産性の向上が期待できるでしょう。

メリット(5)優良企業のイメージ醸成

優良企業のイメージ醸成

昨今の企業経営では、自社の成長だけでなく「社会にどう貢献するか」というCSR(企業の社会的責任)が重視されています。 ワークライフバランスを実現することで(2)優秀な人材の獲得と同様に

  • 社員を大切にする企業
  • 社員が自社のサービスの恩恵を受けられている企業
  • 離職率が低く、社員が安心して働ける企業

という優良企業のイメージを育てることができます。 この記事を読んでいただいている企業担当者・経営者の方は「ワークライフバランス」をコストではなく、未来への投資と考えていただければと思います。

STEP3.自社のワークライフバランスの現状を知る

STEP3.自社のワークライフバランスの現状を知る

ここまでのステップで、

  • ワークライフバランスの正しい定義
  • ワークライフバランスの導入メリット

を知っていただけたと思います。 日本企業で長時間労働が常態化することにより、働く人が疲弊していくことはほぼ間違いないでしょう。 そして疲労が溜まると、精神的な負荷も増加します。

職場における心の病が増加している企業は、2006年の61.5%をピークに、依然高い水準にあります。

今、あなたの会社はどの程度、ワークライフバランスを実現できているでしょうか。 この現実を知ることで、自社に合った適切な施策を導入できるでしょう。

ワークライフバランスの現状チェックシート

これは、公共財団法人・日本生産性本部が発行している「ワークライフバランスのセルフチェック」を元に筆者が作成したチェックシートです。 あなたが組織の一員として、下記のどれに当てはまるかにチェックをしてみましょう。

ワークライフバランスの現状チェックシート PDFダウンロードはこちら

職場のメンバーや部下に、同様のチェックシートに回答してもらうことでより正確な現状が分かります。 特に経営層の方は、職場に対してメンバーと抱いている意識が良くも悪くも異なる可能性があります。

Googleアンケート等を利用し、メンバーに問いかけてみるのも有効でしょう。 チェック結果に対する評価は以下の通りです。

チェックが7以上ついた場合

ワークライフバランスが取れているようです。 冒頭でお話しした通り、理想的なワークライフバランスというのはありませんので、状況によって数値は変わることがあります。 定期的に測定してみてください。

チェックが4~6ついた場合

回答した方は、生活と仕事のバランスがうまく取れていないと感じているようです。 今回の記事を参考にしていただき、施策の導入・意識改善を図っていきましょう。

チェックが3以下の場合

回答した方は、かなり余裕がない状態で、自分を含めた職場環境を正確に把握できていない可能性があります。 職場メンタルヘルスが発生する一歩手前かもしれませんので、

  • チーム全体の結果として出た場合は早急に対策が必要
  • あなた個人の結果の場合、自身の生活や働き方を見直す必要

がありそうです。

STEP4.ワークライフバランスで導入すべき取り組みと企業事例を知る

ワークライフバランスで導入すべき取り組みと企業事例を知る

ここまでの内容で、ワークライフバランスとは何か・そのメリットをご理解いただけたと思います。 では、ワークライフバランスの実現には、企業として何をすればいいのでしょうか。 ぜひ実践してもらいたい基本的な取り組みをピックアップしたので、ぜひ参考にしてください。

(1)育児休暇

育児休暇の事例

働き方改革でも取り組まれることが多いのが育児休暇です。 休業・休暇に関するものは、女性を対象とするものが多いのですが、「女性社員のニーズ」だけでなく「男性が育児休暇を活用しやすい状態にする」ことがポイントです。 イクメンという言葉に代表されるように、男性社員の育児休暇促進が、女性の活躍という働き方改革の実現につながります。・ 実際に取り組んでいる3企業の事例をみてみましょう。

育児休暇の好事例企業

トヨタ紡織の取り組み

トヨタ系列企業のトヨタ紡織は、女性の活躍に重点を置いた育児・介護休業制度の充実に力を入れています。

・育児休業は、子どもが3歳になるまで取得可能(2014年度は127名が取得)
・育児短時間勤務制度:事務
・技術部門は子どもが8歳になるまで/技能部門では子どもが3歳になるまで利用可能
・配偶者の転勤などの理由で退職したメンバーを、同一職務に再雇用する制度(登録制)

を設けて、職場復帰を可能に 成果として、

  • 育児休業制度の利用者は73名(2010年度)から127名(2014年度)
  • 育児短時間勤務制度の利用者は39名(2010年度)から72名(2014年度)

に増加しています。

花王の取り組み

花王グループでは、男性社員の育児休業取得促進を行っています。 新たに子どもが生まれた男性社員とその上長に、育児休業取得の啓発リーフレットを配布しています。

結果、2015年の花王グループ内男性の育児休業取得率は

  • 75名(2013年)
  • 127名(2015年)

のように増加し、対象者の約40%が取得しています。

東急百貨店の取り組み

東急百貨店では、育児勤務者(子どもが小学校4年生まで)の情報交換のため、定期的に懇親会を実施するという少し変わった取り組みをしています。

またグループ会社には土・日・祝日専用の保育施設があり、保育施設が稼働しにくい土・日・祝日も勤務する育児中の社員に利用を勧めています。

KIGURUMI.BIZ株式会社の取り組み

KIGURUMI.BIZ株式会社は社員数30名ほどの企業ですが、同規模の企業には参考になる事例です。 この企業は「子連れ出社制度」を設定しています。

保育園が休園した場合や、小学校の夏休み、子どもがケガや病気をしたが病児保育園を利用するまでもない場合、子連れ出社を認めています。 この規模感ならではの育児促進取り組みといえるでしょう。

(2)短時間勤務制度

育児休暇と同様に、働き方改革で多くみられる取り組みが「短時間勤務制度」です。 育児や介護にたずさわる社員を対象に、勤務時間を2〜3時間、または30分単位で短縮する事例が多くあります。

現在の取り組み事例では「育児休暇から復帰した女性社員」が多いのですが、今後は「両親の介護を目的とした男性社員、管理職社員の利用」も視野に入れて取り組むのがおすすめです。 注意点は以下です。

注意点:バリエーションを持たせることが大切

社員の生活・働き方に応じて、いくつかのバリエーションを持たせることが大切です。 固定化した短時間勤務では、充分に活用されず浸透しません。 たとえば、以下のような方法があります。

  • 時間短縮パターンを複数設定
  • 1日あたりの勤務時間を大幅に減らし、勤務日数を増やす(総労働時間は増えないように)
  • 希望する日の勤務時間を短縮する選択ができる
  • 1週間あたりの勤務日数を減らす選択ができる

バリエーションを作ったら、それを「自由意志で選択できる制度」にするのが重要です。

注意点:業務の割り当て方について

短時間勤務を利用する社員への業務割り当ては、ともすれば「切り出し業務=単純な仕事」になってしまうことがあります。 しかし、単純な業務の繰り返しでは社員のモチベーションが低下します。 また、複数の社員が短時間勤務を希望した際に、組織生産性が一気に低下する可能性があります。

短時間勤務でも、コアな業務を担当できるように

  • 1業務を複数担当制にする
  • 1人1つはコア業務を持つ
  • 現場での情報共有

に取り組むことが有効です。 短時間勤務制度の好事例企業

ジェータックスの取り組み

育児・介護により短時間勤務を行う社員は、1日5時間あるいは6時間のコアタイム有りの「育児・介護特別フレックスタイム制(昼休憩の1時間を挟んで前後2時間をコアタイムに設定)」を導入。 通常勤務者が参加するような会議やMTGはこのコアタイム内に設定するなど、社内コミュニケーションの時間を確保しやすくし、キャリア形成を妨げないよう配慮しています。

ブラザー工業の取り組み

ブラザー工業では、選択制による柔軟な短時間勤務を可能にしています。 小学校4年生までの子どもの養育ならびに家族の介護を行う社員を対象に、1日の所定労働時間(通常7時間50分)を

  • 5時間50分
  • 6時間50分

のいずれかに短縮できる制度です。 また、後述するフレックスタイムとの併用も可能にすることで、より柔軟な勤務制度となっています。 ブラザー工業の事例に限らず、短時間勤務はフレックスタイム制と組み合わせることで、選択の幅を広げ、より多様な働き方に対応できるようにしている企業が多くあります。

(3)フレックスタイム制度

フレックスタイム制度は、比較的浸透している時間制度ですが、働き方改革で改めて取り組む企業が多い項目でもあります。 1か月以内の期間で総労働時間を規定し、その枠内で始業・終業時間を自由に決定できる仕組みです。 フレックスタイム制度が優れている点として、総勤務時間が変わらないため、

  • 給与の調整
  • 昇給・昇格にともなう問題

が発生しにくく、取り組みやすいことが挙げられます。 また、組織生産性を損なわないように、企業は「1日のうちで必ず勤務するコアタイム」を指定することもできます。 中には、コアタイムのないフル・フレックスタイム制度やそれに近い拡大制度を導入している企業もあります。 たとえば以下のような企業です。

フレックスタイム制度の好事例企業

大京の取り組み

始業時間を9:30、10:00、11:00、13:00、自由設定の中から選べるようになっています。

WOWWOWの取り組み

コアタイムがなく、1日の最低労働時間は30分。月間所定労働時間は7時間15分×就業日数。 所定労働時間のうち20時間までは翌月に持ち越しが可能です。

日産自動車の取り組み

業務・職種によりますが、コアタイム設定のないフル・フレックスを実施しています。

フル・フレックスの注意点

フル・フレックス制度は、社員が揃う時間が限られるため、業務の設計に工夫が求められます。 社員全員が揃うことを前提とした企業文化では、フル・フレックスの導入は難しいでしょう。 しかし逆に、この仕組みが適合する組織かどうか、実際に試験導入してみると判断がしやすいものです。

(4)テレワーク(在宅勤務)

テレワーク(在宅勤務)の事例

トヨタが働き方改革として率先して導入し話題になったのがテレワーク(在宅勤務)です。 勤務場所を見直す働き方改革の好事例といえます。 日本テレワーク協会によれば「ITを利用した、場所・時間にとらわれない働き方」と定義されています。 企業にとって

  • 通勤、交通費の削減
  • 休業からのスムーズな復帰支援
  • 障がい者雇用

の点でメリットがあります。 テレワーク導入のポイントは「リスク管理」「コミュニケーションの確保」「勤怠管理」です。

在宅という環境下で、情報漏洩リスクの防止、勤怠管理を適切に行える仕組みが求められます。 企業の事例をご紹介しましょう。 テレワークの好事例企業

ブラザー工業の取り組み

ブラザー工業では、2種類のテレワーク制度を導入しています。 ひとつは、育児や介護を行う勤続3年以上の社員を対象に、週2日までの在宅勤務制度を可能とするものです。

  • 育児や介護を行う社員の能力発揮の機会を拡大すること
  • 休職後の早期復活を促すこと
  • 復職後のキャリア停滞を避けること

を目的に掲げています。

もうひとつは、一部在宅制度です。 子どもの急病など、早退しなければならない理由によって所定労働時間勤務できなかった場合、在宅で労働した時間を通算し、会社での勤務時間に転換する制度です。 在宅勤務は社内のうち、現在30名(うち男性3名)が活用しているそうです。

(5)長時間労働の削減

「働き方改革」の柱である長時間労働の削減は、日本企業の多くに課せられたテーマでもあります。 長時間労働を削減するには、まず以下に取り組む企業が多いようです。

  • 定型作業の廃止
  • 残業、休日出勤の禁止
  • 残業の事前申請化
  • 残業恒常化の要因分析と対策
  • 業務フローの見直し

残業の禁止だけでは長時間労働は改善されない

注意すべきなのは、ただ残業を禁止・制限するだけでは長時間労働は改善されないということです。 業務改善を伴わない残業禁止では

  • 社員が自宅に仕事を持って帰る
  • いったん帰ってから、社員が仕事をしに戻ってくる

という本末転倒の事態を招きます。 良くない事例では「ノー残業」を設定したものの、「定時後のオフィス点灯」が新人の仕事として明文化されていた企業もあったそうです。 長時間労働は、この取り組みだけを行えば改善できる、という問題ではありません。 ここまでご紹介したような

  • 短時間勤務制度
  • 休暇の奨励
  • テレワークの導入

などと組み合わせて、社員が柔軟に働ける環境作りが一番の近道です。

(6)福利厚生サービスの充実・導入

福利厚生の充実

ここでの福利厚生サービスは、休暇制度はもちろん、スタッフが以下のようなサービスを利用する場合の補助となるものです。

  • レジャー・宿泊施設の利用
  • フィットネス・ジムの利用
  • 資格取得

冒頭でお話ししたように、ワークライフバランスとは、生活(プライベート)で仕事の成果を挙げるためのきっかけ・スキルを得ることが大切です。 それによって仕事で短時間で成果を挙げられるようになり、生活もさらに充実する、という好循環を生みます。

たとえ、直接的なスキルアップに限らずとも、働く人のパフォーマンスは内包的な気分に大きく影響されることが研究によって証明されています。

  • 社員を大切にする会社
  • 福利厚生サービスが競合よりも優れた会社

というイメージは、優秀な社員が集まる会社となるための必須条件といっても良いでしょう。 もしあなたの会社が、上記のようなサービスはあるが充分に活用されていない、もしくは存在しないという場合、福利厚生サービスの充実・導入に取り組むことをおすすめします。

その際はパッケージサービス・カフェテリアプランを利用することで、導入のコストは低く抑えられることができます。

筆者おすすめの福利厚生サービスについて「企業担当者必見!「福利厚生サービス」のおすすめ5選を解説」の記事で詳しくご紹介しています。

STEP5.自社で実践する場合の注意点を知る

最後に、ワークライフバランスをいよいよ自社で実践する場合の注意点・ポイントを知っておきましょう。

このポイントに関して、公益財団法人・日本生産性本部が提唱している内容を元に、特に重要な項目を紹介します。

  • 経営トップがリーダーシップを発揮する
  • マネージャー層の理解促進
  • 体制の構築の際、現場に任せきりにしない
  • 業務効率化による時間外労働削減・生産性向上
  • 定性アンケートを活用:取り組み進捗の可視化

経営トップがリーダーシップを発揮する

経営トップがリーダーシップを発揮する

ワークライフバランスの取り組みは、一部署の頑張りで成功する事はあり得ません。 働き方の見直し、新しいシステムの導入など、人・モノ・金といった経営に大きく関わるものだからこそ、経営トップのメッセージが必要です。 導入に成功している企業では、誰よりも経営トップがリーダーシップを発揮し、社内に発信しています。

  • 会社はこれから変わらなければならない
  • 戦略の柱としてのワークライフバランスに取り組む
  • どんなチームを構築して、取り組みを行う

といったことを、ダイレクトに発信するように働きかけましょう。

マネージャー層の理解促進

冒頭でお話ししたように、ワークライフバランスの取り組みにおいては、現場のマネージャー層がネガティブなイメージを持つ可能性は否定できません。 働き方の多様性を受け入れることで、マネジメントが複雑になる事があるためです。 そしてワークライフバランスの取り組みが、業績に直結しないという意識も根深いものです。 だからこそ

  • あなたが経営層の場合:ワークライフバランスの浸透に対してマネージャーを評価する
  • あなたがマネージャーの場合:長期的な組織活性化として、未来への投資と考える・周知させる

ことが大切です。

体制構築の際、現場に任せきりにしない

ワークライフバランスの取り組みには、現場で浸透のためのアクションを行う担当者・プロジェクトチームが必須です。 しかし、一チームが社内への影響力を発揮できる場面は限られています。

現場チームに任せきりでは、チームも疲弊してしまい、取り組みが失速してしまいます。 経営層はワークライフバランスの進捗に常に関心を示し、現場をフォローする事が肝心です。 「全社員に関わる取り組みだ」というメッセージを定期的に発信し、現場の後押しを行いましょう。

業務効率化による時間外労働削減・生産性向上

ワークライフバランスの導入において、

  • 長時間勤務の解消
  • 短時間勤務やテレワークなど、柔軟な勤務形態

は無視できません。 生産性を維持・向上させながら柔軟な勤務形態を受け入れていくためには、

  • 今の業務のやり方を見直して、無駄を減らす
  • 外部ツールをはじめ、新しい仕事のやり方を見つけて業務改善する

といった施策が求められます。 どんな仕事でも、ルーティンで行っていく内に作業が形骸化し、無駄を生んでいることがあります。 ちなみにサイバーエージェントでは「棚卸し会議」という名の無駄取り会議を定期的に行っていることが有名です。

「棚卸し会議」という名の無駄取り会議

「時間を削る」と考えるのではなく「最大の成果を挙げるためのやり方を見直す」と考えることが、この会議の成功の秘訣だそうです。

定性アンケートを活用:取り組み進捗の可視化

これは、社内のワークライフバランスプロジェクトメンバーのモチベーション管理上大切な事です。 ワークライフバランスの取り組みは、短期的に見るべきものではありません。 いくつも壁にぶつかり、すぐに結果が出ないのが普通です。 実際、ワークライフバランスに取り組む企業を訪問すると、プロジェクトチームのメンバーが

  • 社内のメンバーが取り組みの意義を理解してくれない
  • そんなことをして何になるの?という反応がある

といって、モチベーションが低下している事例があります。

プロジェクトチームのモチベーションが低下

せっかくワークライフバランスを主導する役割を担ってくれているメンバーのモチベーションが下がってしまっては残念な結果になります。

「定性アンケート」を活用する事で、取り組みの進捗や浸透度合いを可視化し、それを成果・実績として評価していくことが有効です。 傾向として、意識面での変化は1年目でも表れやすいという事があります。

  • ワークライフバランスは大切だと感じている
  • 仕事と生活の良いバランスが取れそうな気がする

という声が挙がれば、それだけで担当者の大きな成果として考えてください。 もしあなたがワークライフバランスを推進する担当者だとしたら

  • ネガティブな反応があるのは仕方ないと考える
  • 長期的にどうなっていくのがベストかを見直す
  • 何のためにワークライフバランスに取り組むのか、意義を振り返る

といった事も、モチベーションを保つためには大切です。

さいごに

今回の記事では、ワークライフバランスの導入に取り組みたい企業担当者・経営者の方に向け「ワークライフバランスの定義と導入するための完全ステップ」をお伝えしました。

改めてお伝えしますが、ワークライフバランスは短期的な成果を追うことは難しいものです。 しかし長期的な視点で言えば、優秀な人材の定着・確保はもちろん、業務生産性も向上していく取り組みだと考えています。 結果的に、企業として業界内での競争力を高めることに繋がるでしょう。 だからこそ「明日から取り組みを検討する」くらいのスピードで取り掛かって頂きたいのですが、決して全てを一度に実践しようとする必要はありません。 どれか一つでも、ミニマムな形から導入することで、その効果や手ごたえが感じられると思います。

  • 一部署でのテスト運用
  • 規定・制度としてではなく、ルールとして導入する

も有効です。

ぜひ検討してみてください。

ワークライフバランスの充実を支援する
福利厚生サービス ベネフィット・ステーション

待機児童問題/介護離職者の増加など、ワークライフバランスを取り巻く環境には問題が山積しています。

フレキシブルな勤務形態、休業・休暇制度を整えることは大前提として必要ですが、それだけでは育児・介護にかかわる金銭の問題や情報の提供不足といった課題が残ります。

福利厚生サービス ベネフィット・ステーションの導入により上記の課題を解決することができます。

①【育児】保育園探しのお手伝いや認可外保育施設利用時の割引等があり、保育と仕事の両立を支援できる。
②【介護】介護情報の無料提供・無料相談、介護用品購入費用の一部還付を受けられ、介護離職を防止する。


また、従業員が企業担当者を介さずサービスの利用申し込みを行うため、導入後の事務作業はほとんどありません。

ぜひ人事制度の改定と併せて福利厚生制度の拡充を検討していきましょう。


まずは具体的な内容を見てみる